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測定事例(隣り合う敷地からの騒音問題)

浦山英樹

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隣地から発生する空調機器関係音の測定事例です。

問題となる音が発生したころに区役所には相談済みで、区役所側から騒音発生者へ改善の指導をがあったそうです。 これを受けて騒音発生者は何かしらの対策を行い、区役所に対し改善した旨を報告を行い、区役所側もそれを受理した事で、区役所側としては今回の騒音問題は解決済みとの判断しているようです。

しかしながら、一向に騒音が改善した感じがしない上に、区役所側ではこれ以上対応できないとの事で、弊社にご相談があった次第です。


私が打ち合わせで伺った時は夕方だったのですが、その時は問題となる音は発生していませんでした。 どちらかというと、周囲の道路騒音の方がうるさいといった感じです。 こういった場合によくあるのは、道路騒音がうるさくて対象音が測定できない事です。 人の聴覚は多くの音が混在している中でも、目的の音を明確に聞き分ける事ができます。 しかし騒音計はそういうわけにはいかず、発生している音の総和としてのレベルを返してきます。 ここで問題となるのは背景騒音(目的の音以外の音で暗騒音ともいう)のレベルで、目的の音よりも背景騒音のレベルが高い場合は、目的の音を測定する事は出来ません。 また、背景騒音の影響を無視できるほどに小さくするには、目的の音と背景騒音とのレベル差が 10dB 以上必要です。

こういった状況を踏まえ、お客様には背景騒音(今回の場合は道路騒音)の影響が小さくなる夜間の測定をご提案しました。

お客様も騒音が最も気になる時間帯は夜間という事だったのですが、朝8時頃にも大きな音がするとの事で、どうせならと24時間の連続測定をしようという運びになりました。

条例を目的に評価を行う場合は、最も気になる時間で測定し、その時の時間区分の基準値と照らし合わせる必要があります。

24時間の連続測定では、全ての時間区分に対し評価を行う事が出来ます。 また、24時間連続測定を行う事で、問題となる音の発生頻度や継続時間を正確に知る事もできます。 実はこれが最も重要な事で、1日数回しか発生しない音なのか、数十回発生する音なのかで、騒音の印象は大きく変わってきます。 また継続時間が長くなれば、それだけ苦痛も長い事が容易に想像できます。 これらは条例には明記されていない事ですが、苦情を申し立てる際に相手に与える印象が大きく異なる要素なので、苦情を申し立てる際や、調停を目的とした測定では必須の調査項目となります。


24時間の測定の場合、騒音計を通した音をデータレコーダに記録し、後日事務所にて専用ソフトウェアで分析を行います。

0.1 秒間隔で記録された 864,000 にも及ぶデータから、1時間毎のレベル波形を作成し、その時の音を実際に聞く事によって、どの音が問題となる音なのか探し出します。 問題となる音のレベルが高いほど発見は簡単なのですが、今回の場合は直ぐに確認する事が出来ました。

問題となる対象音は間欠的に発生しており、24時間中の発生回数は39回もありました。

1回の継続時間は2~3分程度あり、継続時間の合計は90分間にもなります。 そして問題となるレベルなのですが、間欠騒音継続中の LAeq 値で 58dB という結果になりました。

対象地域の騒音条例の基準値は、45 ~ 40dB なので、全ての時間で基準値を大きく上回る結果です。 しかも、発生頻度や継続時間は予想以上で、これにはお客様ご自身も驚かれていた様子です。

それ以外にも分かった事がありました。

24時間の測定値を集計した結果、騒音レベルの最小値(LAF.min)が 47dB だったのです。

騒音レベルの最小値とは、ある時間区分の中で最も低かったレベルの事を言うのですが、24時間の全ての時間で 47dB を上回っており、当然ですが24時間通しての最小値も 47dB となります。 これは対象の音が無く、最もレベルが低い瞬間でさえも条例の基準値を上回っている事を意味しています。

最小値の高さは、残留的に発生している騒音の存在を意味しますが、データの分析や現地調査から、音源の存する同じ敷地内にあるエアコン室外機騒音が原因だという事が分かりました。

音源の存する敷地には、問題となっている音源の他に、業務用と思われる大型のエアコン室外機が設置されているのですが、これが24時間運転していて、この運転音が定常的な残留騒音となっていたのです。 通常であれば直ぐに気づくほどの音なのですが、本来の問題となっている音がうるさ過ぎて、それ以外の音が気にならなかったのかもしれません。

苦情対象音以外の気にならない音については、騒音問題として取り上げるべきでは無いと思いますが、音の発生源が問題となっている騒音源と同じ管理者からである場合は、これらの音の総和としての報告を行わせていただきました。

あとがき

今回の測定結果をお客様にご報告したところ、予想以上の騒音レベルであったと大変驚かれていました。調停を進める上で、この結果がどのように活かされるのか、今後の動向が注目されます。一日も早く、お客様が静かな生活を取り戻せるよう願っております。

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