騒音計の指示値と測定値は違う
弊社で使用している全天候型防風スクリーンは騒音計のオプションアイテムで、計量証明用の防風スクリーンとしての必要性を満たしています。
その上で高い防風性能と、PIX3相当の防水性能を満たしています。
いったいどのようにして、音響レスポンスに影響することなく、防風性や防水性を持たせているのでしょうか。 今回は全天候型防風スクリーンの構造を見ていきたいと思います。
画像の一番右が全天候型防風スクリーンで、中央が騒音計に付属する防風スクリーンです。 全天候型防風スクリーンの直径は20cmもあります。 騒音計に付属する防風スクリーン(直径7cm)と比べると、その大きさが際立ちます。
素材も違うようです。
比較するとこんな感じで、目視でも素材感の違いが分かります。
騒音計付属のスクリーンは、私たちがよく知っているウレタンスポンジそのものです。 柔らかくて弾力性があり、気泡がとても細かいという特徴があります。 これに対し、全天候型防風スクリーンは、かなり荒い目をしています。素材感も硬めで、触った感じはゴムのような、少々ねっとりした感じがします。
騒音計付属の防風スクリーンにはマイクロホンを差し込む穴が開いており、直接マイクロホンを差し込んで使用します。
これに対し、全天候型防風スクリーンには金属製のアダプターが付いており、アダプターを介してマイクロホンを取り付けます。
このような構造から、全天候型防風スクリーンは騒音計に直接取り付けることはできません。
測定業者が使用する騒音計はマイクロホンが脱着式になっているため、延長コードを介して全天候型防風スクリーンのアダプターに取り付けます。 マイクロホンを取り付けたアダプターと、全天候型防風スクリーンのアダプターにねじ込み固定します。 組み立てた後の重量は500g程もあります。
全天候型防風スクリーンの3本のスプリングを外すと、アダプターからスポンジ部分のみを取り外す事が出来ます。
中心部のアダプターは茶色い袋状の繊維で覆われていて、マイクロホンはこの袋状の繊維で覆われた形で収まっています。
茶色い袋状の繊維をよく見ると、ナイロン素材が荒く織り込まれているようです。見た目や触った感じから、スポンジたわしのような、ちょっとゴワゴワした印象です。外側のスポンジ部分には、これといった特別な構造はありません。
雨はいったんスポンジ部分に当たり、内部に浸透した水分が中心部分の繊維にしみ込み、毛細管現象により水が下部に導かれて流れ落ちる仕組みのようです。
試しに弱い水道水をかけてみたところ、見事に茶色い素材を伝って流れ落ちていきました。しかし、水の勢いを強くすると、内部にも滴り落ちてしまいます。繊維の吸水力を上回ってしまうと、水があふれて内部に滴ってしまうようです。
この構造により防水性能を持たせた上で、高い音響レスポンスを維持しているのですから、良くできているなと感心してしまいます。
まとめ
今回は、弊社の所有する全天候型防風スクリーンの構造についてお話しました。 高い音響レスポンスを維持しながら、高い防風性に加え、PIX3相当の防水性能を持つ全天候型防風スクリーンですが、だからと言って、悪天候でも測定を行えるわけではありません。
マイクロホンに当たる風雑音を軽減できても、風が原因で発生するバタつき音やざわめき音などは軽減することができません。 また、雨の日に測定できたとしても、雨音や水しぶき音が発生してしまいます。
あくまで突然の降雨からマイクロホンを守り、安定して継続した測定を行うことが目的であることを留意しなければなりません。