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全天候型防風スクリーン

浦山英樹

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前回のコラムで、雨の日は騒音測定が出来ない事をお話しました。
しかしながら、屋外の測定では突然の雨や風は避けられません。
そこで屋外の測定で用いるのが、全天候型防風スクリーンです。

風雑音の軽減

全天候型防風スクリーンの目的は風雑音の低減にあります。
A特性で測定した場合の風雑音の影響は概ね以下のとおりです。

風速5m/s10m/s
防風スクリーンなし70dB90dB
騒音計付属(7cm)45dB65dB
全天候型防風スクリーン(20cm)33dB53dB

風雑音の影響は、防風スクリーンがない場合は風速 5m/s 程度でも 70dB(A特性)程にもなります。 これに対し直径 7cm の防風スクリーンを取り付けた場合は -25dB 程度、直径 20cm の全天候型防風スクリーンを取り付けた場合は -37dB 程度の軽減を期待できます。

しかしながら、全天候型防風スクリーンを取り付けたとしても、風速 10m/s で 53dB 程度にもなる事に注意しなければなりません。

暗騒音の影響を無視できるほどの小さくするためには、対象音と暗騒音の差は最低でも 10dB 、可能であれば 15dB 以上が望ましいとされてます。 これを考えると、全天候型防風スクリーンを取り付けた場合であっても、風速 10m/s の環境で測定できるのは、対象音のレベルが 63dB 以上である場合に限られます。

一般的に天気予報で予想している風速は平均風速を指しています。 風は一様の強さで吹いているのではなく、平均風速の 1.5~2.0倍程度の強さの最大瞬間風速が発生します。

平均風速が 5m/s であった場合の最大瞬間風速は、 10m/s 程になる事になるという事です。

環境省のマニュアルでは、風速 5m/s 以上の場合は測定を中止するとしていますが、理由は上記のとおりであると思われます。

降雨に対する効果

全天候型防風スクリーンは突然の降雨からマイクロホンを守る事が出来ます。 弊社で使用している全天候型防風スクリーン(WS-03)は、防水性PIX3相当の防水効果があるそうです。

IPX3は垂直より60度以内からの雨でも影響を受けないレベルの防水性能

単純な相対速度で考えると、垂直に落下する雨が 60度の角度となる場合の風速は 12m/s になります。 最大瞬間風速で考えると、平均風速は 6m/s までという事でしょうか。 これを超えるとマイクロホンが破損する可能性が高くなるという事です。

恥ずかしい話ですが、私はこれまで何度かマイクロホンを水没させてしまいました。
修理の際にメーカーの担当者に言われたことは、全天候型防風スクリーンの防水性能は絶対ではないという事でした。 つまり、全天候型防風スクリーンを使用していても、雨に対する対策は安全とは言えず、十分に注意して運用しなければならないという事です。

ちなみに、マイクロホンの膜面が少しでも濡れると、騒音計は点検・修理が必要になります。 計量法第71条の条件により、修理した騒音計は再検定が必要となります。 費用はもちろんですが、修理と検定を受けている間、他の測定にも影響が出る可能性があります。

計量証明事業者は正しい測定を行う事はもちろんですが、測定管理も重要な仕事なので、必然的に天候にはとても過敏になってしまいます。

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浦山環境計量士事務所

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