騒音計の指示値と測定値は違う
騒音レベルとは、音圧レベルに A特性の重み付けを行ったレベルをいいます。
低周波音とは、音圧レベルのうち、100Hz 以下のレベルをいいます。
このように騒音レベルと低周波音は評価方法が異なります。
騒音レベルと低周波音には、どの程度の差があるのでしょうか。
実際の環境騒音を測定し、その差を比較してみました。
道路騒音における低周波音
環境騒音の代表として、道路騒音(環七通り)を測定してみました。
周波数特性は Z特性で、1/3オクターブバンド分析を行っています。
青線は Z特性による分析結果です。
Z特性は音圧レベルに補正を行っていないFLATな特性であり、音の物理量を表します。
赤線は Z特性の音圧レベルに A特性の補正を行ったレベルです。
A特性は人間の聴覚特性を考慮した補正特性であり、実際の音の聞こえ方を反映しています。
(A特性の補正値は JIS C 1509-1 を参照しています)
2つのグラフから、実際の物理量としての音圧レベルを、人の聴覚では赤線のように聞こえている、と見ることができます。
1000Hz では A特性と Z特性が同じレベルになりますが、これは A特性が 1000Hz を基準としているためです。 しかし、1000Hz より低い周波数では、周波数が低くなるほどレベル差が大きくなり、250Hz 以下では急激な差が見られます。
この差を見ると、低周波音に対して、人の聴覚がいかに鈍感かが分かります。
これは、人間の耳の構造上、低周波音を効率的に捉えることができないためです。
A特性はあくまで人の聴覚を近似した特性なので、必ずしも全ての人が同じように感じるとは限らない事に注意が必要です。
ちなみに、このグラフにおいてPOA とは、表示されているレベルの総和になります。
A特性の POA は騒音レベルを表し、今回の場合は 71.6dBA となります。
今回の測定で低周波音の最大値は 40Hz で 74dB ありました。
つまり、騒音レベルが 71.6dBA であっても、低周波音はこれを上回っていたという事です。
このような事実は、一般的な騒音計の指示値からは読み取ることができません。
まとめ
低周波音は人にとって聞き取りにくい音ですが、私たちの身近に存在し、聞こえている音よりも高いレベルであることが普通です。
気にならなければ無視して問題ありませんが、聞こえにくいという特性ゆえに、気づかないうちに健康被害を引き起こしている可能性がありますので、一定の条件により健康被害を感じるのであれば、低周波音の影響を疑ってみるのもよいかもしれません。
また、低周波音には、透過力が高いといった特徴があります。
次回は、低周波音対策の難しさについてお話したいと思います。
(※1)このグラフにおける POA は 20Hz ~ 20000Hz までの音圧レベル(dB)の総和です。
Z 特性の POA は音圧レベル(dB)、A 特性の POA は騒音レベル(dBA)を表します。
デシベルの和は算術ではなくエネルギー和(パワー和)で求めます。
POA=10×Log10(10^(L.20Hz/10)+10^(L.25Hz/10)+10^(L.31.5Hz/10)+・・・+10^(L.20000Hz/10))
騒音計で表示されるレベルは、周波数分析前の全ての周波数を含んだ値で AP (オールパス)といいます。 これに対し POA は周波数分析後の特定データの総和になります。 周波数分析や演算の過程で微小な誤差が生まれるため、APとPOA には僅かな誤差があります。