騒音計の指示値と測定値は違う
低周波音は比較的古くから知られていましたが、近年では風力発電やエコキュート等の普及に伴って、度々話題に上るようになりました。
これら以外にも、空調室外機や変電設備、工場・事業場の機械、道路橋、地下鉄換気設備、水処理施設に係る音など、私たちの周りには低周波音の原因が多く存在します。
低周波音は自然界にも当たり前に存在ており、通常は全く問題になる事はありません。
問題となるのは、ある一定のレベルを超えた場合です。
環境省では低周波音問題対応の為の「評価指針」として以下の参照値を目安として示しています。
低周波音による苦情の可能性の評価指針は以下のとおりです。
1.低周波音による物的苦情に関する参照値以上(一部またはすべて)
2.低周波音による心身に係る苦情に関する参照値以上(一部またはすべて)
3.G特性音圧レベルが 92dB 以上
物的苦情・心身に係る苦情に関しては、1/3oct音圧レベルの値の一部またはすべてが参照値以上であれば、低周波音による苦情の可能性が考えられるとしています。
また、G特性音圧レベルが 92dB 以上であった場合、 20Hz 以下の超低周波音による苦情の可能性が考えられるとしています。
92dB と言うと非常にうるさい音のように感じますが、実際には人の耳には殆ど聞こえていません。
このように人の耳に聞こえない(聞こえにくい)周波数帯域の音圧が、ある一定のレベルを超えた時に、低周波音による苦情(被害)が発生します。
低周波音による症状
低周波音による心身に係る影響には、以下のような症状があります。
心理的影響:不眠・気分がいらいらするなど
生理的影響:頭痛・耳なり・吐き気・圧迫感など
低周波騒音の感じ方は個人差が大きいため、ご本人が気にならないようであれば、あえて気にする必要ありません。 しかし、ご家族や周りの人で、低周波音による症状が表れている、または訴えているのであれば、低周波音の影響を疑ってみた方がよいかもしれません。 低周波音は人の耳には聞こえにくい音なので、自分の感覚だけで他の人も大丈夫と決めつけるのは危険です。
低周波音を判断する方法
一つの例ではありますが、低周波音の有無を判断する方法をご紹介します。
1.物的影響
音や振動を感じないのに、戸や窓、置物がガタガタするといった状況は、低周波音の可能性が高いと思われます。
2.心理的影響
通常の騒音は窓を閉める事で軽減されますが、低周波音の場合は、窓を開けて外部騒音を取り込むことで、低周波音を感じにくくなるといった特徴があります。 これは低周波音が、外部騒音によるマスキングで緩和されるためだと思われます。 窓を閉めた静かな状態ほど息苦しい、イライラする、圧迫感がある等の症状を感じるようであれば、低周波音の影響が考えられます。
低周波音の対策
低周波音は通常の騒音計では測定する事が出来ません。
低周波騒音計や分析設備を有した測定業者に依頼する事で測定は可能ですが、低周波音の原因を調べるには大掛かりな測定が必要なので、先ずは市区町村の相談窓口にご相談いただいた方が良いと思います。
低周波音は防音工事などで防ぐことが難しいとされています。
低い周波数の音ほど透過力が高いので、隔離による防音対策は、可聴音によるマスキング効果の低下を招き、逆効果となる恐れがあるためです。
発生源で対策を行うのが最も効果的ですが、規制基準が無い上に、対策が大掛かりなものになるので、対応には難航が予想されます。
以上の事から公害苦情相談窓口に相談する事が、最も適切な対策だと思われます。
多くの場合、低周波音の影響を感じ始めた時期と、原因となる施設(設備)が運転を始めた時期は一致するはずです。 低周波音の影響を感じる時間帯や状況、感じ方の大小などを記録しておくことで、速い対応を期待できるかもしれません。
下記リンクのパンフレット(14ページ)が記録用紙になっています。
判定のポイントなども詳しく記載されているので、参考にしてみてください。
環境省ウェブサイト「よくわかる低周波音」PDF資料
今回の記事は下記の資料を参考に作成しました。
総務省ウェブサイト「騒音や悪臭などでとてもお困りの方へ」
総務省ウェブサイト「低周波音に係る苦情への対応」
総務省ウェブサイト「低周波音苦情の対応のための参照値等」
環境省ウェブサイト「低周波音防止対策事例集」PDF資料
環境省ウェブサイト「低周波音問題対応の手引書」PDF資料
環境省ウェブサイト「低周波音対応事例集」PDF資料