Mybestpro Members

浦山英樹プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

7.室内騒音の基準について

浦山英樹

浦山英樹

今回は室内騒音の基準について解説したいと思います。

前回のコラムでは、同一建物内部における各住戸間の騒音に関する明確な規定が存在しないことを説明しました。 環境基準や騒音規制法・条例は、あくまでも外部騒音に対する規制・基準であり、室内騒音は対象外となっています。

しかし、室内騒音は、睡眠妨害やストレスなど、健康被害を引き起こす可能性があり、住環境の質を大きく低下させます。

環境基準では、「屋内へ透過する騒音に係る基準」が定められています。 これは、外部から屋内へ透過する騒音に対する基準ですが、同一建物内部における各住戸間の騒音を考える際の、一つの指標として活用できます。

屋内へ透過する騒音に係る基準

環境省の「騒音の評価手法の在り方について」では、室内騒音について以下のようにまとめられています。

指針値とは、騒音の許容レベルを示す指標です。
法的な規制ではありませんが、目標値として位置づけられています。

また、この指針値の設定理由として、以下のように記述されています。

睡眠影響
[囲み装飾]不規則・不安定な騒音による睡眠影響を生じさせないためには、屋内で35dB以下であることが望ましいとされている。しかし、高密度道路交通騒音のように騒音レベルがほぼ連続的・安定的である場合には、40dBが睡眠影響を防止するための上限であるとの知見があることや連続的な騒音の睡眠影響に関するその他の科学的知見を総合すると、道路に面する地域については、40dB以下であれば、ほぼ睡眠影響をまぬがれることができ、睡眠影響を適切に防止できるものと考えられる。

会話影響
1mの距離でくつろいだ状態で話して100%明瞭な会話了解度を確保するためには、通常の場
合、屋内で45dB以下であることが望ましい。これは一般地域か道路に面する地域かを問わない知見と考えられる。

「騒音の評価手法等の在り方について」の中央環境審議会答申について

室内騒音指針値は等価騒音レベル(LAeq)を評価量としています。 LAeq は、一定時間内の騒音エネルギーを平均化した値であり、時間経過による騒音レベルの変化を考慮した指標です。

一方、個々の騒音最大値(LAmax)は瞬間的に発生する最大音圧レベルです。 突発的な大きな音は LAeq では評価されにくいため、LAmax も合わせて考慮することが重要です。

睡眠中に発生する LAmax については、世界保健機関(WHO)のガイドラインが参考になります。

WHOによる環境騒音のガイドライン

世界保健機関(WHO)の「環境騒音ガイドライン」では、室内騒音について以下のように記述されています。

睡眠妨害
睡眠妨害を防ぐためには、騒音が定常的な音ならば、室内の LAeq は 30dBA いかにとどめるべきである。 暗騒音のレベルが低い場合、可能な限り LAmax が 45dBA を超える騒音は制限すべきである。 また、高感受性の人の為には更に低い値が望ましい。

会話聴取妨害
正常な聴力を有するひとが文章を正確に理解するためには、会話音と妨害音のレベル差が少なくとも 15dB は必要である。 通常の会話は 50dBA 程度なので、 35dBA 以上の騒音は小さな部屋では会話を妨害する事になる。

これを受けて WHO では以下の様にガイドラインが設定されています。

住居内のガイドライン(指針値)
寝室におkる室内のガイドライン値は、連続音に対して LAeq が 30dBA 以下、単発の騒音に対して最大値が 45dBA 以下である。
昼間に通常の会話を可能にするためには、妨害音の騒音レベルは LAeq で 35dBA 以下にとどめるべきである。

また、睡眠妨害による健康への影響については、次のようにまとめられています。

睡眠妨害による健康影響
騒音によって睡眠中に一次影響が生じ、二次影響として騒音暴露をうけた次の日にも影響が生じる。

睡眠妨害の一次影響
入眠困難、覚醒や睡眠深度の変化、血圧・心拍数・指先脈波振幅の上昇、血管収縮、呼吸の変化、不整脈、体動の増加など。

睡眠妨害の二次影響
不眠感、疲労感、憂うつ、作業能率の低下など。

睡眠妨害は、睡眠中の騒音によって引き起こされる健康被害です。 一見静かな環境であっても、単発的に発生する音によって覚醒している可能性がありますので、上記のような症状に悩まされている場合は、騒音影響を疑ってみた方がよいかもしれません。

室内騒音を測定する場合の注意点

これまでの一連のコラムでは、簡易騒音計による測定についてご説明してきましたが、就寝時間帯の騒音レベルについては、演算機能やデータ保存に対応した騒音計(計量法第71条)での測定が望ましいと思います。 理由としては、LAeq の測定は演算機能がないと難しい事や、長時間にわたる測定にはデータ保存機能が有効な事が挙げられます。

しかし最大の理由は、簡易騒音計の低レベル帯での精度が致命的に不安定な事です。 今回のコラム内の実験では、簡易騒音計でも 60dB 以上のレベルは比較的高い精度で測定を行う事が出来たのですが、50dB 以下では誤差が大きくなり、 40dB 以下では 7dB 近い誤差となってしまいました。

睡眠妨害の測定は 40dB 前後がメインのレベル帯になると思いますので、誤差が大きい簡易騒音計での測定値は参考になりません。(今回の一連のコラムで紹介した簡易騒音計の場合)

以上の理由から、就寝時間帯の睡眠障害を対象とした測定については、弊社のような騒音騒音の専門業者に依頼する事を推奨します。

対策について

室内騒音の影響が外部からの透過音である場合は、敷地境界線上での外部騒音を測定する事で、環境基準や条例の基準値が適用されます。
東京都の場合は下記の公害苦情相談窓口で相談を受けつけています。
総務省ウェブサイト 公害苦情相談窓口(東京都)

集合住宅などで同一建物内部で発生する騒音については、前回のコラムを参考にしてください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

浦山英樹
専門家

浦山英樹(環境計量士)

浦山環境計量士事務所

環境計量士(騒音・振動関係)が直接対応いたします。

浦山英樹プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

プロのおすすめするコラム

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

住まいの騒音問題に寄り添う環境計量士

浦山英樹プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼