騒音計の指示値と測定値は違う
今回は衝撃騒音のレベルを比較します。
衝撃騒音とは、継続時間が極めて短い騒音の事をいいますが、騒音問題として考えると、床をどんどん踏み鳴らす音が思い浮かびます。
そのような音をどうやったら再現できるか色々と試してみたのですが、水の詰まったペットボトルを倒した時の音がいい感じです。
今回の実験は精密騒音計を加えて 3台体制で行っています。
これには理由があって、今回のような安定しない条件で実験を行うと、データのばらつきが大きくなってしまいます。 このような条件で 2台のレベル差を見ても、それが騒音計の精度の違いなのか、実験の条件によるものなのか分かりません。 そこで 3台体制で実験を行い、2台の測定値が同じになるような条件を探します。 この時、残り 1台とのレベル差は、騒音計の誤差である可能性が高いと考えられます。
では、3台体制で行った衝撃音の実験結果をご覧ください。
平均値の誤差 -0.6dB は、かなり優秀なのではないでしょうか。
しかし、やはり個々のレベル差のばらつきが気になります。
レベル差がマイナス傾向にある理由は推測できます。
衝撃騒音のように最大値の継続時間が極めて短い音の場合、演算周期(サンプリング周期)の速い騒音計の方が、レベル変動への追従性が高く、必然的に瞬間的なピークにも追従しやすいからです。 因みに普通騒音計の演算周期(サンプリング周期)は 20μs(0.00002秒)なので、レベル変動に対する追従性は非常に高く、正確に最大値を観測する事が出来ます。 簡易騒音計についてはサンプリング周期は不明なのですが、仕様書にあるデータ更新(0.3秒)をサンプリング周期と考えるならば、瞬間的なレベル変動への対応は難しくなってしまいます。
しかし、今回の実験ではプラス傾向の誤差もあり、ばらつきの範囲は 7dB 程度にもなるのです。
実は、このばらつきが安定しない理由が非常に気になって、何度も何度も繰り返し実験を行いました。 ですが、どいう訳か必ずばらつきの範囲は 7dB 前後になり、そして不思議な事に、何度やっても平均値での誤差は ±1dB 以内に収束するのです。 ここまで同じ結果ばかりだと、それはもう、こういうもの、と考えても良いのではと思うようになってしまいました。
今回の実験から、この騒音計を使って衝撃音を測定する場合は、複数回の測定を行い平均値で評価することで、比較的精度の高い結果を得られることが分かりました。 個々のデータは信頼性が低い場合もありますが、どのような測定でも同じ事が言えると思うので、そう考えると、衝撃騒音の測定においては、この簡易騒音計の精度は優秀だと言えるのではないでしょうか。
次回は定常騒音のレベルを比較してみたいと思います。