騒音計の指示値と測定値は違う
騒音は、会話や睡眠などの日常生活に大きな影響を与えます。 今回は、環境騒音による会話障害と睡眠障害について、そのメカニズムと影響について解説します。
会話障害
騒音による会話障害とは、環境音によって会話の理解が困難になる現象です。 会話の理解に最も重要な周波数帯域は 300Hz~3kHz ですが、この帯域の環境音が重なると、会話音と環境音の音圧レベルの差(SN比)が小さくなり、会話が理解しにくくなります。 正常な聴力を有する人が、会話音を正確に理解するためには、SN比が少なくとも 15dB 必要です。 通常の会話の音圧レベルは約 50dB です。 そのため、小さな部屋で 35dB 以上の騒音が発生すると、会話が妨害される可能性があります。
睡眠障害
環境騒音によって引き起こされる睡眠障害は、睡眠の質を低下させる主要な影響の一つです。 睡眠中の覚醒確率は、騒音レベルよりも、暗騒音とのレベル差が大きく影響します。 また、一晩あたりの騒音発生回数が多いほど、覚醒確率が高くなります。 睡眠妨害による一次的な影響には、入眠困難、覚醒や睡眠深度の変化、血圧や心拍数の上昇、呼吸の変化や体動の増加などがあります。 二次的な影響には、不眠感、疲労感、憂うつ、作業能率の低下などがあります。 快適な睡眠のためには、夜間の連続的な暗騒音の LAeq 値は 30dB 以下にとどめ、個々の発生音についても 45dB を超えるような騒音を避ける必要があります。
環境基準との比較
日本の環境基準における一般地域の室内騒音指針値は、昼間 45dB 以下、夜間 35dB 以下とされています。 一方、外部騒音の基準値は、一般地域の B 地域であっても昼間 60dB 以下、夜間 40dB 以下とされています。 これは、窓を開けた条件の建物による遮音効果を10dB、窓を閉めた条件では 25dB 程度の遮音効果が期待できるためです。 したがって、窓を閉めた条件であれば、室内騒音のレベルは昼間 35dB 以下、夜間 15dB 以下(騒音計の測定範囲を考えると現実的には 28dB 程度)と考えられます。
まとめ
一般地域においては、外部騒音が環境基準の基準値以下であれば、室内騒音の WHO のガイドラインを満たすことができます。 ただし、窓を開けた状態では、会話障害や睡眠障害のリスクが高まるため、注意が必要です。
参考資料
環境省 騒音に係る環境基準の評価マニュアル(道路に面する地域)
WHO世界保健機構 環境騒音のガイドライン(実務的抄録)