騒音計の指示値と測定値は違う
今回は、dB と dBA の違いについてお話したいと思います。
dB と dBA は、どちらも音の大きさを表す単位です。 しかし、dB は人間の可聴域における音の聞こえ方を考慮した補正がされていないのに対し、dBA は人間の可聴域における音の聞こえ方を考慮した補正がされています。 そのため、同じ騒音を測定した場合でも、dB と dBA の数値は異なる場合があります。
それぞれの単位の意味を理解し、適切に使い分けることが大切です。
計量法における dB
計量法では dB を音圧レベルの法定計量単位として定めています。
(SI単位の無い量の非SI法定計量単位)
音圧レベルとは、音の大きさを表す物理量であり、音圧の2乗と基準音圧の2乗の比の常用対数の10倍で表されます。単位はデシベル(dB)を使用します。
音圧レベルには、人の聞き取りにくい周波数も含まれるため、人の聴覚特性を考慮して、A特性の重み付けを行った音圧レベルを、A特性音圧レベルまたは騒音レベルといいます。これが一般的に言われる騒音レベルになります。
また、A特性の重み付けを行った音圧レベルなので、単位は dBA を使用します。
A特性補正値は周波数毎に与えられ、その値は JIS で定められています。
A特性補正値(JIS Z 8731)から一部抜粋
125Hz | 250Hz | 500Hz | 1KHz | 2kHz | 4kHz | |
---|---|---|---|---|---|---|
A特性補正値 | -16.1 | -8.6 | -3.2 | 0.0 | 1.2 | 1.0 |
実際の騒音レベルを測定した際の、dB と dBA の違いは下表の通りです。
対象 | 音圧レベル(dB) | 騒音レベル(dBA) |
---|---|---|
道路騒音 | 76 | 72 |
鉄道騒音 | 83 | 81 |
航空機騒音 | 93 | 82 |
ダクトの排気音 | 74 | 66 |
このように、周波数によってはかなり大きな補正を行うため、同じ騒音を測定したとしても、dB と dBA の数値は大きく異なる場合があります。
環境基準における dB
環境基準における騒音レベルの単位は、デシベル(dB)です。 これは、環境基準では音圧レベルではなく、A特性音圧レベルを取り扱うため、dB と dBA を混同する恐れがないためです。 口頭での協議においても、デシベル(dB)の方が使い勝手が良い場合もあるようです。 しかし、音圧レベルと騒音レベルは物理量としては全く異なるため、表記の際は、LAeq 72dB のように、A特性であることを示す A を用いて、騒音レベルであることを明確に示す必要があります。
音圧レベルでの測定・表示が求められるのは、音圧レベルをデータとして利用する場合です。 例えば、測定したデータを用いて、室内騒音を予測する場合などに用いられます。 A特性などの補正を行っていない音圧レベルを使用する事で、計算誤差を小さくすることが出来るためです。 この場合は dB と dBA を区別することで混同を避けなければなりません。
また、騒音計を使用する際にも、A特性の設定に注意が必要です。 騒音計の設定には、A特性、FLAT特性(Z特性)、C特性などがあります。 A特性以外の設定で測定すると、正しい騒音レベルが測定できません。 そのため、騒音計を使用する際は、A特性が設定されていることを確認しましょう。 騒音計の指示値は dB で表示される場合が多いですが、LA や LAeq のように A が付記されていれば、A特性音圧レベル、すなわち騒音レベルであることを確認できます。