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遮音計画における反射音と安全率の考え方

浦山英樹

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前回の記事では、環境基準などの評価を目的とした反射音の補正について解説しました。
今回は、遮音計算を行う上での反射音補正について説明します。

日本建築学会が定める【各部位からのデシベル合成による方法】の計算式は以下の通りです。

Li=Lo+⊿Lo-TLi+10*log(Si/A)
Lin=10*LOG(10^(L1/10)+10^(L2/10)+10^(L3/10))

Lo:外部騒音の実測値
⊿Lo:反射音の補正値
TLi:各部位の音響透過損失
Si:各部位の面積
A:室内吸音力
Li:各部位からの室内騒音予測値
Lin:室内騒音予測値

⊿Lo が反射音の補正となるのですが、補正量の設定は以下の通り決です。

⊿Lo は Lo に計算値あるいは外周壁の無い状態での実測値を用いるときは +3dB 、反射性の外周壁の前での実測値を用いるときは 0dB とする。

出典:日本建築学会編【実務的騒音対策指針 応用編】

日本建築学会の補正条件は、外周壁の有無に基づいています。 しかし、特定の音源からの音が支配的ではない場合や、外壁面のなす角度が大きくなる場合の音の反射条件は、環境基準と変わらないと考えられます。 したがって、補正を加えるかどうかの判断は、環境基準を参考にするのが妥当です。


安全率の考え方


反射音の補正を加えずに計算を行った場合、室内騒音は実際よりも低く算出されるため、目標値を満たすために必要な遮音性能も実際よりも低く算出されます。 この結果、竣工後の検査で目標値を満たさないなど、問題が発生する可能性があります。

この様な事態を防ぐため、大手建築会社などでは、反射音の補正を適切に行った上で、実績に基づいた安全率を採用し、より正確で安全性の高い対策を行っています。

安全率とは、実験室で得られる音響透過損失値に対し、実際の現場における誤差やバラツキを考慮して、より厳しい条件を与えて計算するための補正値です。

たとえば、各部位の音響透過損失実験値に 10% の低下を見込んで 0.9 を掛けたり、一律 4dB の低下を考慮したりするなど、より現実的な遮音性能を反映した値を用います。 これらの値は、実績と様々なデータに基づいて導き出されたものです。

このような厳しい条件で遮音検討を行うことで、より現実的な室内騒音値を予測できるほか、今後の騒音環境の変化にも対応できる、安全性の高い遮音対策を講じることができます。

遮音計画は、建物完成後の騒音環境を予測する上で、重要な役割を果たします。 そのためには、現地調査で得られる実測値を基礎データとして、適正な補正と十分な安全率を考慮する必要があります。

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