騒音計の指示値と測定値は違う
今回は反射音の補正についてご紹介させていただきます。
騒音測定を業務としている人にとっては当たり前のことですが、そうでない人は「反射音の補正」と言われても、興味が湧かないかもしれません。 しかし、騒音を評価する上ではとても重要な事なので、もし騒音について興味がある方や、騒音に対し何らかの対策を考えている方には、ぜひ知っていただきたいと思います。 なぜなら、反射音の補正を怠ると、測定結果が正確でなくなり、トラブルの原因になりかねないからです。
反射音の補正量
測定点に近接した位置に建物や塀などの反射物がある場合、実測値は反射音の影響を受け、実際の騒音レベルよりも高くなります。 そのため、反射音の補正を行うことで、実際の騒音レベルを正確に把握する必要があります。
反射音がある場合の補正量は以下の通りです。
反射音の補正値 -2dB (環境基準)
例えば、実測値が 70dB の場合、反射音の補正を行うことで、評価値は 68dB となります
これは、騒音を評価する上で、非常に重要な要素です。 例えば、環境基準や騒音規制法、あるいは騒音に係る条例等の基準値を超過するかどうかの判断に影響するため、補正を怠った場合は、基準値を超過していると判断され、罰則の対象となる可能性があります。
反射音の補正が必要な条件
騒音に係る環境基準の評価マニュアルでは、建物による反射音の影響を受ける測定点について説明しています。
出典:環境省ウエブサイト【騒音に係る環境基準の評価マニュアル】より一部転載
https://www.env.go.jp/air/noise/manual/index.html
反射音が有ると判断する条件
・建物の外壁面から音源側 2m 以下の位置
・線音源と壁面とのなす角度が 20° 程度以下
反射音が無いと判断する条件
・線音源と壁面とのなす角度が 20° 程度以上かつ 2m 以上離れている
・特定の音源からの騒音が支配的ではない
実際には、建物の形が複雑であったり、塀などの遮蔽物があったりすると、このように簡単に判断できない場合もあります。 そのような場合は、いろいろな位置で測るなどして、反射音の有無を調べ、適切な測定点を選ぶ必要があります。
日本産業規格の【環境騒音の表示・測定方法 JIS Z 8731】では、反射の影響を無視できる程度に抑えるためには、地面以外の反射物から 3.5m 以上離れた位置で測定を行うとされています。 環境基準の評価マニュアルにも同様の記述があることから、可能であれば、周囲の反射物から 3.5m 以上離れた位置を測定点に設定することが望ましいと考えられます。
反射音の補正の大切さ
環境基準や騒音規制法では、音源からの音圧レベルを基準値として定めています。 この基準値を遵守している場合、敷地外からの反射音で上昇したレベルを評価することは適切ではありません。 これは、環境基準の基本的な考え方です。
騒音被害者の立場では、環境基準を上回るレベルを観測したのに、そこから反射音を除いて評価しなければならないのは納得できないかもしれません。 しかし、環境基準を遵守しない方法では、環境基準として評価することもできません。
いかがでしたでしょうか。
反射音の補正の大切さについて、ご理解いただけたでしょうか。
補正が必要かどうかの判断は、測定者の責任です。 測定者は、常に公平な立場で、適切な測定を心がけています。 目に見えない「音」を評価する立場として、明確で安心できる評価を行えるよう、励んでいきたいと思います。