騒音計の指示値と測定値は違う
今回は、ガラスの遮音性能についてご紹介いたします。
グラフで遮音性能の比較を行ったり、温度差による遮音性能の比較を行っています。 また、実際の外部騒音を用いた遮音性能の検証は、より現実的な遮音対策のお役に立てるのではないかと思います。 ぜひ最後までご覧ください。
単板ガラス
単板ガラスは、特定の周波数帯域で遮音性能が低下する現象(コインシデンス効果)が発生します。 このコインシデンス効果が発生する周波数は、ガラス厚が増すほど低くなります。 そのため、ガラス厚を増やすと遮音性能は高まりますが、騒音の周波数が、コインシデンス効果が発生する周波数と一致すると、期待通りの遮音性能が得られなくなる可能性があります。
複層ガラス
複層ガラスは、2枚のガラスの間に空気層を挟むことで、断熱性や結露防止能力を高めたガラスです。 しかし、空気層がバネのように働き、2枚のガラスが共振することで、主に低い周波数帯域で遮音性能が低下する現象(低音域共鳴透過現象)が発生します。 そのため、同じ厚さの単板ガラスや合わせガラスに比べると、遮音性能は低くなってしまいます。
合わせガラス
合わせガラスとは、2枚以上のガラスの間に樹脂などの中間膜を挟み、接着したガラスです。 高い遮音性能や防犯性能、紫外線カット性能を備えています。
同じ厚さ(12mm)で、タイプの異なる3種類のガラスの遮音性能を比較しました。 単板ガラス(FL12)、複層ガラス(FL3+A6+FL3)、合わせガラス(L12PVB)です。 複層ガラスの低音域共鳴透過現象による遮音性能の低下が、特に分かりやすい比較になりました。
合わせガラスは、中間層の樹脂の特性により、低温度では遮音性能が低下する特徴があります。 同じ厚さの単板ガラスと比較すると、高温度ではコインシデンス効果の影響が軽減されていますが、低温度では同じ厚さの単板ガラスと同程度の遮音特性となります。
二重窓タイプ
二重窓の遮音性能は、中間の空気層の厚さによって大きく向上します。 下のグラフは、2枚のガラスの厚さが同じで、空気層のみ異なる組み合わせの遮音性能を比較したものです。 空気層 200mm(FL5+A200+FL8)は、遮音等級上はT-4ですが、T-5相当の遮音性能があるようです。 空気層 6mm(FL5+A6+FL8)は複層ガラスですが、同じガラス厚の組み合わせなので、比較として載せてみました。
実際の環境騒音に対する遮音能力
実際の外部騒音に対しては、どの程度の遮音能力があるのでしょうか。
下の表は、種類の異なる外部騒音に対するガラス毎の遮音能力です。 室条件は洋室で、ガラスの面積は 1.8㎡ を想定しています。 給気口からの透過音の影響はガラス面と同等と考え、外壁からの透過音は無視できるとします。
同じガラスでも、騒音の種類によって遮音性能が異なることがわかります。 これは、コインシデンス効果や複層ガラスの共振現象による影響と考えられます。
空気層 200mm の二重窓の遮音性能は、実際の騒音に対しても等級以上の遮音性能を発揮しています。 特に、鉄道騒音に対しては、その遮音性能の高さが際立っています。 合わせガラスは、温度差による遮音性能の違いがはっきりと確認できます。
いかがでしたでしょうか。
静かな環境であれば、遮音性能以外の性能を重視して選んでいただくことで問題ありません。 しかし、騒々しい環境で遮音性能も重視したい場合には、今回のお話が参考になるのではないかと思います。 ガラスの特徴を理解していただくことで、より効果的な遮音対策に役立てていただければ幸いです。