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遮音設計の考え方

浦山英樹

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2重窓にしたけれど、期待通りの遮音性能を得られていない。
そんな時は、他の部位からの透過音が原因かもしれません。

今回は遮音設計の考え方についてお話したいと思います。

室内騒音の予測計算方法は日本建築学会に準拠しています。
詳しくは【実務的騒音対策指針 応用編】をご覧ください。


外部騒音が室内に透過する経路は窓だけではありません。
遮音計算では主に、外壁・窓・給気口の3つの経路を考えます。

各経路からの透過音は以下の式により求めます。

Li=Lo+⊿Lo-TLi+10*log(Si/A)


Li:各部位からの透過音(周波数毎に計算)
Lo:外部騒音実測値(オクターブバンド音圧レベル)
⊿Lo:反射音の補正(+3dB)
TLi:各部位の音響透過損失値
Si:各部位の面積
A:室内総吸音力

各部材の音響透過損失は、オクターブバンド毎となるため、計算もオクターブバンド毎に行います。 周波数範囲は 125Hz ~ 4kHz までの 6バンドです。

各部位からの透過音は、周波数毎に次の計算式で合成します。

Lin=10*LOG(10^(L1/10)+10^(L2/10)+10^(L3/10))


最後にA特性補正を行って室内騒音レベルを求めます。

LA=10*LOG((10^((L.125Hz-16.1)/10))+(10^((L.250Hz-8.6)/10))+(10^((L.500Hz-3.2)/10))+(10^(L.1kHz/10))+(10^((L.2kHz+1.2)/10))+(10^((L.4kHz+1)/10)))

( JIS Z 8731【環境騒音の表示・測定方法】より)

上記の方法で 70dB の外部騒音(補正後)に対する、サッシ等級毎の室内騒音を求めてみました。 サッシ以外の計算条件は、日本建築学会【実務的騒音対策指針応用編】を参考にしています。



T-1 の場合、窓からの透過音は 42dB 、外壁・窓・給気口からの透過音を合成した室内騒音は 43dB でした。 T-2 の場合は、窓からの透過音が 37dB なのに対し、室内騒音は 40dB になりました。 T-2 等級からは遮音性能を上げても、遮音性能相当のレベル差が得られなくなっていきます。 原因は、一つの部位からの透過音が下がる事で、他の部位からの透過音の影響が大きくなるためです。 したがって、T-2 適用時以上に室内騒音を下げるのであれば、 窓以外の部位も遮音性能も上げなければなりません。

遮音設計を行う場合は、まず初めに室内騒音の目標値の設定します。 その上で実際の外部騒音調査を行い、室内騒音目標値との差から仮設定対策量を設定し、これを満たす事を目標に遮音設計を行っていきます。 今回の場合は、環境基準における室内騒音指針値(40dBA以下)を満たすのであれば、 T-2 等級が適当であると考える事が出来ます。 その上で、更に静けさを求めるのであれば、サッシ以外の部位の遮音性能について考えていく事になります。 このように、遮音対策を行う時は、様々な条件を考慮して、遮音設計を進めていく事が重要です。

いかがでしたでしょうか。
今回は遮音設計の考え方についてご紹介しました。
遮音設計を行う時は、様々な条件を考慮しなければなりませんが、最適解を見つけられた時は、とても気分の良いものです。

追記
実践的な計算方法を弊所のホームページで公開しています。 実際の計算資料も見れますので、ご興味のある方はご確認いただければと思います。
https://www.sokutei.biz/1572/

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