騒音計の指示値と測定値は違う
外部騒音の遮音を考えるとき、サッシの遮音性能は最も重要な要素です。 サッシの遮音性能は JIS A 4706 によって、T-1 から T-4 までの 4 段階の等級で表され、T-4 が最も高い遮音性能を有します。
時々、『T-1 等級は -25dB 以上の遮音性能がある』といった記述を見かけますが、これは以前の遮音等級の表記方法が Ts-25(現在の T-1)であったため、遮音能力が -25dB あると勘違いされた可能性があります。 JIS A 4706 には、遮音能力を保証するような記述はありません。
では、等級毎の遮音性能はどの程度なのでしょうか。 実際の騒音を使って調べてみました。
計算方法は、外部騒音のオクターブバンド音圧レベルからJIS等級線を引いた値を、A特性による補正を行って騒音レベルとして算出しました。 実騒音は周波数特性の異なる5種類を用意しました。 すべて弊社で実際に測定したものです。
実騒音の種類別遮音能力(JIS A 4706 等級線)
道路騒音や鉄道騒音に対しては、比較的高い遮音性能が得られることが確認できました。 一方、航空機騒音やダクトの排気音については、十分な遮音性能が得られませんでした。 この結果を見ても、サッシの遮音等級だけをみて、○○dB以上の遮音性能があるとは限らないことがお分かりいただけるのではないでしょうか。
「サッシの音響透過損失値が等級線を上回わるのだから、実際のサッシの遮音性能は更に高くなるのではないか」という意見があります。
確かに、等級線を余裕をもって上回っている場合は、遮音性能が向上すると考えられます。 しかし、実際には等級をギリギリで満たしている場合も多く、中には厳しいものもあるのが実情です。
また、JIS A 4706 の等級試験では、等級線を 3dB まで下回ることが許容されています。そのため、等級を満たしているからといって、必ずしも等級線よりも高い遮音性能を持っているとは限りません。
逆に言えば、T-2 等級線を 4dB 以上下回ると T-1 と評価されます。 つまり、T-1 であっても T-2 とほぼ変わらない遮音性能のサッシも存在するのです。 このように、サッシの遮音等級は、遮音性を表す段階であって、サッシそのものの遮音性能を表すものではないのです。