騒音計の指示値と測定値は違う
騒音調査というと騒々しい環境を連想してしまいますが、実は、弊所で行っている半数以上は静かな環境での騒音調査です。
騒々しい環境では、騒音対策を前提とした測定が求められますが、静かな環境では、問題となるような騒音が発生しないかの確認が主な目的となります。 必要とされるのは、住宅街など一見すると静かな環境と思われてる地域で、新たに住宅の建築が計画されている場合です。
マンションや住宅を購入・建築する際、多くの方が周辺地域の環境について調査すると思います。 現地に何度も足を運び、立地条件や周辺道路の交通量、騒音環境などを確認するのではないでしょうか。 平日だけでなく、土日など、曜日や時間帯を変えて入念に調査する方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、深夜の騒音環境は、実際に住んでみないとわからないのではないでしょうか。 24時間の騒音調査を行うことで、日中だけでなく、深夜の騒音状況も正確に把握することができます。
下図はとある地域の騒音レベルの時間変動図です。 都心の静な住宅街で、日中に現地の下見を行った際には、何も問題のない静かな環境だと思っていました。
日中では13時台に一時的にレベルが上昇していますが、これはヘリコプターが上空を通過した為です。 ヘリコプター等の航空機騒音は騒音に係る環境基準では評価しない(別に環境基準が定められている)ので、今回の騒音の評価から除外します。
気になるのは夜間の騒音レベルで、21時台からレベルが上昇し、そのレベルが朝6時まで定常的に続いている事象です。 内容を確かめるために、騒音レベルが高い22時台の騒音レベル波形を確認してみました。
一定のレベルが1分程度の間隔を空けながら断続的に続いています。 この様に定常的な音が一定時間続き一時的な停止を繰り返す音は、エアコン室外機による音が予想されますが、発生音からもエアコン室外機騒音である事を確認する事が出来ます。
音の発生源は裏手に面したアパートでした。 バルコニーがこちらに面していたので、生活音の発生を懸念していたのですが、実際にはエアコン室外機音が支配的な騒音となってしまいました。 音の発生状況は入居者の生活にもよると思いますが、21時から6時まで連続して発生していた事も想定外でした。 測定時期は10月の後半だったので、暖房として利用しているのであれば、これが翌年の春まで続くと予想されます。 また夏季のエアコンを考えれば、1年の殆どがこの状況だと予想されます。
騒々しい環境では気にならない音でも、静かな環境では気になってしまう事があります。 それが就寝時間帯となれば尚更です。 対策としては、騒音に係る環境基準を上回っている可能性がある為、アパート管理者との話し合いが望ましいと思われます。 また、自らの予防策として、窓の向きなどを検討する事で、今後の不安を払拭する事も考えられます。
今回の事例は、特別なことではなく、一般的にどこにでもある状況だと思います。 入居後に知ると、かなりショックな出来事ですが、事前に知っておくことで、いろいろな対策を講じることができます。 また、隣地とのトラブルを予防することにもつながります。
生活環境が変わる時は、いろいろな不安もあると思います。少しでも不安をなくすお手伝いをすることで、希望に満ちた新生活のスタートを切ることに役立ててもらえれば幸いです。