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住む人自身を主役に、内と外のつながりを意識したシンプルで心地よい家づくりを提案

シンプルで心地良い住まいと環境づくりの専門家

黒木実

正面
デスク前

#chapter1

40年以上にわたりデザイン住宅を手掛け、リフォームやリノベーションにも対応

 東京都世田谷区に事務所を置く「黒木実建築研究室」。一級建築士の黒木実さんは、40年以上にわたり、日本の伝統的な風情と現代的な機能性を兼ね備えたデザイン住宅に取り組んできました。

 一戸建てをメインに、集合住宅や店舗、宿泊施設の新築は450棟以上。副代表の一級建築士・白柳晴康さんとともに、リノベーションやリフォームの相談、街づくりの提案まで人々が思い描く暮らしを形にしてきました。

 一方で、「注文住宅は自由度が高いけれど、居住性より作家性を優先されるのではないか」との声も聞こえてきます。黒木さんは、「家づくりの主役はあくまでも住む人自身」とメッセージを送ります。

 「ほとんどの人にとって、家を建てるというのは人生最大級のライフイベントでしょう。夢や理想にどれだけ近づけ再現できるかは、建築家の力量より、いかに思いを共有できるかに掛かっています。当方では、お客さまと同じ目線で共同して作り上げていく工程を最も大切にしています」

 宅地の狭小化や密集化が進むにつれ、個室志向から一体感のある間取りや中庭で開放感を求めるなどニーズも変化。黒木さんが唱えるのは、建物の内と外がなめらかにつながる「中間領域」の概念です。

 「コンパクトな住まいを快適にするには、動線を回廊式にする、収納を増やす、窓や吹き抜けを大きく取るといった方法が基本です。さらに当方では、用いる素材を統一したり、規格にとらわれないサイズ感で造作物をあしらったり、風や光の通り道も工夫。どこかに楽し気な“遊びゴコロ”を忍ばせています」

#chapter2

パワフルで独創性にあふれたカルチャーに刺激を受けつつ、一貫して機能性と住み心地を追求

 1960年代後半、黒木さんが学生だった頃の日本は、高度経済成長の波が押し寄せ始めていた時期。好景気に沸く中、芸術性の高い建築物や建築家がメディアに取り上げられ、話題を集めていました。

 「高校ではバスケットボールに没頭。大学からスポーツ推薦のオファーもありました。それでも現職を目指すことに決めたのは、デザイン住宅の作り手の、一歩先を行くようなパワーに高揚感を覚えたからかもしれません」

 大学は学生運動で大荒れの時代。早く社会に出ようと、一時は自治体の建築課に勤めたものの、夢をあきらめきれずにいた黒木さん。役所勤めの経験も強みの一つに、狭小住宅の先駆け「塔の家」で注目を浴びていた建築家、東孝光さんの事務所に入所を果たします。
 「日本を代表する建築家の仕事を目の当たりにして、心の底から『本物の建築家になりたい』と熱いものがこみ上げましたね」と振り返ります。

 当時、近未来を舞台にした映画や小説で描かれた作中の建造物も斬新で独創性にあふれ、若き黒木さんの創作意欲に火をつけました。

 手掛ける案件に共通するのは、シンプルモダン。設計者の個性を主張するのではなく、使い勝手の良さを重視する住まいは、コンクールでもしばしば高評価を受けました。

 「子ども世代へ引き継ぐ際にリノベーションのオファーを受けたり、住み心地の良さを知るお施主さんのご友人から問い合わせを受けたり、ということもあります。長く住み続けたうえで満足いただけたことはうれしいですね」

2人

#chapter3

光や風が家と街全体をよどみなく巡る、調和のとれた街づくりの構想がスタート

 豊かな自然を、設計のテーマとして掲げている黒木さん。建物だけでなく、エクステリアなど敷地すべてが生活空間となり、周辺環境になじむプランニングを心掛けています。住民の一人として地域再生の意見交換や勉強会、街歩きイベントを企画して啓発を促し、行政とも連携した街づくりに参加しています。

 「敷地内の空間は、そこに住む一人一人の個性を表現するものではありますが、扉の外に広がる世界を形成する、要素の一つであることも忘れてはいけません。切り取られた個別の住宅の集まりではなく、それぞれが街のランドスケープとして存在感を放ちながら、全体をつなげていくというイメージを大事にしています」

 黒木さんの言葉を現実のものにする大きな構想が、既に動き始めているようです。
 「これまでの集大成ともいえるプロジェクトには、培ってきた家づくり、街づくりのノウハウを余さず注ぎ込むつもりです。独自性を保ちながらも、光や風が街全体をよどみなく巡り、美しく調和のとれた街並みをかなえるために、準備を進めているところです」

 首都圏近郊の高台にある土地を宅地化して、黒木さんをはじめとする複数の建築家によって、夢をかなえるべく実現に活動しています。
 
 「この先何十年と過ごす間に、家族の生活スタイルも変化するでしょう。住まいとは、街や社会の移り変わりにもしなやかに順応し、住む人が愛着を持って歴史を紡ぎ、育てていくものではないでしょうか」

(取材年月:2022年12月)

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専門家プロフィール

黒木実

シンプルで心地良い住まいと環境づくりの専門家

黒木実プロ

一級建築士

有限会社黒木実建築研究室

住む人の理想のイメージを引き出し、機能性と心地良さを備えた家づくりに自信あり。こだわりの室内空間と、周辺の環境にも目を向けた街づくりの概念を大切に、家族が長く愛着を持って暮らせる住まいを考えます。

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