国保滞納、悩める自治体

萩台紘史

萩台紘史

テーマ:ニュース

今、国⺠健康保険の未納対策に⾃治体が追われています。

未納額は年間1,400億円

納められていない保険料は全国で年間約1400億円に上り、未納率が3割近い東京都新宿区は「滞納対策課」を発⾜させました。苦悩がみられるのが、制度への理解が⼗分でない外国⼈への対応です。課が発⾜した背景には区全体で73.1%(2024年度・過去の滞納分を含む)という国保納付率の低さがあり、その要因の⼀つが外国⼈による未納です。
区内に住む外国⼈は留学⽣を中⼼に増えており、⼈⼝に占める⽐率は13.5%(25年4⽉時点)と東京23区で最も⾼く、国保加⼊世帯のうち外国⼈は3割を占めますが、納付率は52.7%と半分程度にとどまっています。

悪質ではなく本当に知らないケースも

外国⼈政策に詳しい専門家は「⽇本の『国⺠皆保険』は世界でも珍しい。理解が⾜りず未納に⾄るケースが⼤半」とみています。
そうなんです。在留外国人による国保未納は度々問題となり、SNSでは外国⼈が社会保障に「タダ乗りしている」という⾔説が⽬⽴ちますが、私も日々実務をおこなう上で本当に国保を知らない外国人の方に出会います。企業に勤めている外国人の方は、自覚がなくても社会保険料を納付していますが、自営業の方などからのご依頼で「国民健康保険」という制度自体を知らずに過去の未納分を急いで納付していただくこともありました。とはいえ日本に在留する以上、国保滞納は許されませんので事前にご自身で調べていただきたいです。

国保赤字は税金で穴埋め

国保に加⼊する外国⼈は診療を受ける機会が⽐較的少ない若年層が多く、厚労省によると外国⼈への医療費⽀出は全体の1.39%とされ、専門家の方も「外国⼈の未納が国保財政に与える影響は⼤きくはない」と話されています。
その一方で「対策をとらず未納を放置した場合、国⺠全体に反発や不安感が広がり、制度の信頼や持続性を揺るがす懸念がある」とみています。余波が広く及ぶのは、未納分を含めた国保の⾚字を税⾦で⽳埋めする仕組みがあるためです。
国保の⾚字を補填するために市区町村が⼀般会計から繰り⼊れた税⾦は23年度に1,220億円に上り、税⾦は国保以外の保険加⼊者も納めます。税⾦の投⼊が拡⼤すれば、負担と給付の関係が不明瞭になってしまいます。

在留資格審査に国保滞納情報を活用

政府は早ければ27年度から、国保の滞納情報を在留資格の審査に活⽤します。未納状態が1年6カ⽉続くと医療費は全額⾃⼰負担となり、在留資格も失いかねなくなります。外国人の方には適切な徴収は保険財政だけでなく本⼈にもメリットがあるということを知っていただきたいです。

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萩台紘史(行政書士)

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