法務大臣勉強会の中間報告書について

萩台紘史

萩台紘史

テーマ:ニュース

先日鈴木法務大臣が、外国人の受入れに関する論点を整理した私的勉強会の中間報告書を公表しました。
この法務大臣勉強会は2025年2月に発足され、外国人の出入国在留管理行政を所管する法務大臣(※)の私的勉強会として各分野の有識者の意見を聞きつつ検討をおこなっているものです。
※出入国在留管理庁は法務省の外局です。
外国人の受入れの基本的な在り方の検討のための論点整理(令和7年8月法務大臣勉強会)

勉強会発足の背景

こちらの勉強会発足の背景としては
予想を上回るスピードで進む日本の少子化の一方で、在留外国人数の増加が加速していることとあります。
2010年代前半は毎年数万人程度だった増加ペースが、コロナ禍以降は毎年30万人を超え、2024年はついに35万人を超えるに至りました。現在でも多くの産業で外国人労働者が従事し、日本社会は外国人労働者抜きでは考えられない状況にありますが、それでも日本の総人口における外国人比率は2.82%と、OECD(※)加盟国の平均10%台と比較すると低いことがわかります。
※OECD(経済協力開発機構)経済成長、開発援助、自由貿易の拡大を目的。欧米を中心に日本を含む38カ国が加盟しています。
では、日本も外国人比率が10%台になったときに何が起きるのか?
外国人との共生を実現しながら活力のある日本社会を実現するために、今後の外国人政策の基本的な在り方につき必要な検討を政府として今こそ行うべきであるとあります。

現行の外国人の受入れ制度

現行の外国人の受入れ制度については次のように記されています。

日本の経済社会の活性化や一層の国際化を図る観点

専門的・技術的分野の外国人労働者の受入れを積極的に推進

人手不足への対応

2018年に「特定技能制度」を創設(2019年施行)
2024年に技能実習制度」を発展的に解消して、人材育成だけではなく人材確保を目的とした「育成就労制度」を創設(2027年施行予定)

「技能実習制度」は人手不足解消のためではなかった

「技能実習制度」も「特定技能制度」と同じく人手不足の分野において外国人を受入れる制度だと思っている方も多い現状ですが、本来は日本がアジアの先進国として途上国への技能、技術などの移転を図る、人材育成を目的とした制度でした。

現状に対する課題等

これまでは、一貫した方針ではなくその時々の課題などに対する対処療法的な受入れを行い、外国人の在留状況を管理しつつ、外国人との共生を図るという政策を基本としてきた。すなわち、外国人の受入れに関する基本的な在り方を定めた統一的な方針が存在しないため、中長期的に外国人が社会に与える影響や外国人に係る課題とどう向き合うかの精緻な議論を開始し、出入国及び在留管理の観点を前提としつつ、経済成長、産業政策、労働政策などの観点から中長期的かつ多角的な検討を行うことが有用と考えられるとあります。

今後の外国人受入れに当たって考えられる視点

こちらの項目では7つの観点・視点について書かれています。

・経済成長の観点
・産業政策の観点
・労働政策の観点
・税・社会保障等の観点
・地域生活者としての観点
・治安の観点
・主入国及び在留管理の観点

経済成長の観点

外国人の受入れは、労働力の確保の視点に加え、米国の大企業の約40%が外国生まれの人やその子供により創設されていることなどの指摘から、外国人の受入れがもたらす日本経済へのメリットは更に大きくなると想定し、将来的にどの程度の外国人を受入れることが適切か、継続的な経済成長シナリオの策定をすることが考えられるとあります。

産業政策の観点

産業ごとに、目指すべき経済成長や構造改革の在り方などは異なり得るところ、求める人材像や日本の経済・社会基盤の持続可能性に与える影響も一律ではないと考えられる。高度人材(※)を必要とする産業、一定の専門的技術的能力を有する人材(※)を必要とする産業など、産業ごとに検討することが有用と考えられるとあります。
※高度人材「高度専門職」「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格をもって活動する者を想定
※一定の専門的技術的能力を有する人材「特定技能1号」の資格をもって活動する者を想定

労働政策の観点

どのような外国人をどのように受入れることにより、国内労働市場にどのような影響があるか調査・検討をおこなうことが考えられるとあります。

現業作業が可能な「特定技能」の分野ごとの受入れ人数に上限があるのも、このような視点からですね。

税・社会保障等の観点

外国人であっても日本人と同等額以上の給与をもらって、日本人と同じように税金や年金などを納めなければなりません。現役世代の外国人労働者が増えることにより税収や保険料収入の増加が見込めますが、一方で高齢化によって就労困難となることによる社会的負担の増加や、社会保険料の未払い問題もあります。

「家族滞在」の問題

配偶者や子供は日本語が全く話せない状態で日本に来ることが多く、特に子供を受入れる教育機関はサポートスタッフを雇用するなど教育費の増加も問題となっていますので、地方自治体の財政に与える影響などについても触れています。

地域の生活者としての視点

地域住民との摩擦が生じている外国人集住地域の問題が報じられることが増え、外国人政策への関心を高めるきっかけにもなっていますが、その摩擦の有無や状況を早期に把握する方法について、外国人への日本語教育、日本人に対しても外国人との共生に向けた意識啓発のために取組むべき方策について検討することが考えられるとあります。

治安の観点

外国人による刑法犯の検挙件数や検挙人員は減少傾向にありますが、今後外国人比率が増加の一途をたどることが予想される上で、数字では表されない外国人集住地域または国民に与える不安感などを調査・検討することが考えられるとあります。

出入国及び在留管理の観点

従来の在留資格制度の趣旨・経緯を踏まえつつ今後も増加が見込まれる在留外国人数を考慮し、出入国及び在留管理の一部のビザ以外では受入れ上限数を設けないなどの基本的スタンスを維持すべきなのか?在留資格制度の在り方について検討することが考えられるとあります。
また、外国人の就労先である受入れ期間も一定の責任を負う必要があるとして、責任の内容や程度についても検討が考えられるとあります。

検討項目

出入国及び在留管理上の当面の課題

・2028年度中にJESTA(ジェスタ)の導入を目指す
こちらは短期滞在ビザが免除されている国・地域からの渡航者を対象に入国審査を事前に電子でおこなう制度案です。審査に問題があれば航空機への登場もできないため、不法滞在目的での日本への入国を防げます。
近年査免国からの日本での不法就労が問題となり、高まっていたビザ免除停止措置の声もこちらの導入で解決して欲しいです。

・「経営・管理」ビザの要件見直し(2025年10月施行)
こちらは資本金が500万円から3,000万円へ大きく増額されるなど、要件の厳格化が話題になっていますが、他のビザでも続々と見直しが予定されています。

・「技術・人文知識・国際業務」の在り方見直し
・「留学」ビザでアルバイトをするための「資格外活動許可」の在り方も見直し
こちらの2つに関しては具体的な内容は公表されていません。

出入国及び在留管理上の当面の課題

こちらは先ほどの「今後の外国人受入れに当たって考えられる視点」であった7つの視点を踏まえて、外国人の受入れの在り方を総合的に検討していくことが不可欠といった内容になっています。

最後に

外国人の受入れに関してネガディブな意見も多いですが、こちらでは政府による対策や多角的な視点からの意見が確認できます。本文ではもう少し詳しく有識者の方の発言や、発言の元となった数字も載っていますので、興味のある方はご覧になってみてください。

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萩台紘史
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萩台紘史(行政書士)

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企業・個人問わず、就労ビザ申請に特化しています。年間350件超の申請実績があり、複雑な案件でも豊富な経験を有します。特定技能外国人の登録支援機関としても認定され、ワンストップで外国人雇用をサポート。

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