「ビザ(査証)」と「在留資格」の違い

萩台紘史

萩台紘史

テーマ:就労ビザQ&A

外国人材の雇用においては、専門的な用語を把握しなければならない場合もあります。特に「ビザ」や「在留資格」という言葉を耳にする機会は多いかと思いますが、この二つの違いを明確に理解している方はまだまだ少ないようです。

「ビザ(査証)」とは何か?

まず「ビザ(査証)」についての法的な意味合いを説明します。

査証とは、日本へ入国を希望する外国籍の方のパスポート(旅券)が有効であり、かつ、その方がビザに記載された条件の下で日本に入国することに支障がない、ということを示す一種の「推薦状」です。

「査証」の管轄は外務省

査証は、海外に設置されている日本の大使館や総領事館といった在外公館が発行を担当していて、その管轄は外務省となります。

査証を持っていても日本への入国は保証されない

最終的な入国の許可判断は、日本の空港や港に到着した際に、法務省出入国在留管理庁の入国審査官によって行われます。
査証はあくまで、その入国審査を受けるための要件の一つに過ぎませんので、査証を持っていても必ず日本に入国できるわけではないのです。

※【原則】一度入国審査で使用されると、その査証の役割は完了します。(数次査証など例外あり)

「在留資格」とは何か?

次に、日本国内での活動を支える法的な基盤となる「在留資格」について説明します。
外国籍の方が日本に在留し、学び、働き、家族と暮らすためには、この在留資格が不可欠となります。
在留資格は日本で特定の活動を行うことを法的に許可する「許可証」です。

「在留資格」の管轄は法務省

査証が外務省の管轄であったのに対し、在留資格に関する手続きや管理は法務省、具体的にはその外局である出入国在留管理庁(通称:入管)が担当しています。

「在留カード」の交付

日本に3ヶ月を超えて滞在する外国人の方には、「在留カード」というICチップ付きのカードが交付されます。
在留カードは日本国内における公式な身分証明書であり、常に携帯する義務があります。外国人材を雇用する際には確認する必要があります。

在留カードを持っていないのはなぜ?

在留カードを持っていない外国人の方もいます。
在留カードを持っていないからといって、不法在留とは限りません。

1.在留期間が3か月以下の者
2.「短期滞在」の在留資格を有する者
3.「外交」又は「公用」の在留資格を有する者
4.「特定活動」の在留資格が決定された台北中日経済文化代表処もしくは駐日パレス チナ総代表部の職員又はその家族の方
5.特別永住者
7.在留資格を有しない人

ビザ(査証)と在留資格の決定的な違い

ビザ(査証)と在留資格の違いを表にまとめました。

比較項目ビザ(査証)在留資格
主な目的・機能日本への入国に関する推薦状の役割。入国前の事前審査。日本国内での滞在および活動の法的根拠。滞在許可証。
管轄官庁外務省(MOFA)法務省(MOJ) / 出入国在留管理庁(ISA)
申請・発給/交付場所原則として日本国外の日本大使館・総領事館原則として日本国内の地方出入国在留管理局(または出入国港での上陸審査時)
手続きのタイミング日本入国前日本入国時または入国後(変更・更新時)
主な証明書類旅券(パスポート)へのシール貼付またはスタンプ押印在留カード(中長期滞在者向け)
有効性の意味合い記載された期日までに日本へ入国(上陸申請)する必要がある期間許可された期間内、日本に滞在し活動することが認められる期間
主な役割の終了時点原則として、日本の上陸許可を受けた時点日本から出国する時点、または在留期間満了(更新されない場合)時点

ビザはあくまで日本への入口に関わる手続きであり、入国後の日本での生活や就労の根拠となるのは在留資格です。

混同されやすい?「就労ビザ」という言葉

「ビザ(査証)」と「在留資格」は目的も管轄も全く異なる制度ですが、これらの言葉は同じ意味合いで使われていることが非常に多いのが現状です。
こんなにも混同されるのはなぜでしょうか?

①日常会話や報道における慣用的な言葉遣い

あまりにも一般的にビザ=在留資格として使われているため、専門家である行政書士ですら、便宜上お客様への説明の分かりやすさを優先して、あえて「ビザ」という言葉を使うことがあります。

(誤)留学ビザから就労ビザへ切り替える →(正)留学の在留資格から就労可能な在留資格へ変更する
(誤)ビザを更新する →(正)在留期間を更新する

②手続き上の繋がり

特に、海外から中長期滞在目的で来日する場合、多くは日本国内で「在留資格認定証明書(COE)」の交付を受け、その後に海外の日本大使館等でCOEを提示して「ビザ(査証)」を申請するという流れを辿ります。
COEは在留資格の事前審査のようなものですから、この一連の手続きが「ビザ取得のプロセス」として一体的に認識されやすいのです。
パスポートに貼られるビザ(査証)のシールに、取得予定の在留資格名が記載されていることも、両者を同じものと捉えやすくさせています。

③「就労ビザ」という言葉

「就労ビザ」という言葉が、混同を助長する代表例です。
「就労ビザ」とは、「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「技能」など、日本で就労が認められている様々な「在留資格」の総称であり、「就労ビザ」という名称の在留資格は存在しません。

ビザ(査証)と在留資格の違いを理解し、適正な外国人雇用を

外国人材を雇用する際に理解が必要となる用語のなかでも、最も基本的な「ビザ(査証)」と「在留資格」の違いについて説明しました。
外国人材の雇用についてわからないこと、不安なことがある場合には行政書士になどに相談することをおすすめします。

就労ビザ専門 行政書士法人35
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萩台紘史
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萩台紘史(行政書士)

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企業・個人問わず、就労ビザ申請に特化しています。年間350件超の申請実績があり、複雑な案件でも豊富な経験を有します。特定技能外国人の登録支援機関としても認定され、ワンストップで外国人雇用をサポート。

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