外国人高度人材の課題

萩台紘史

萩台紘史

テーマ:ニュース

外国人の技能実習制度で、賃金の未払いやハラスメントが相次ぎ、政府は新制度の「育成就労」への見直しを進めています。(27年施行見込み)
一方、最近は専門性やスキルのある高度人材を巡るトラブルが目立っています。

ベトナム人労働者の実態

日本の在留外国人を国籍別にみると中国に次いで多いのがベトナムであり、「技能実習」ではベトナムからの受入れが最も多くなっています。(24年末時点)ベトナムの労働者の実態に詳しい神戸大学・斉藤准教授がこの件について解説をされています。

「技能実習」の人気低下

以前は技能実習が来日の主要ルートだった、ところが転籍(転職)制限や虐待などの問題がベトナム国内で報じられて人気が落ち17年施行の技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)により手続きも煩雑になった。
外国人の側も、日本語の勉強が不要で早く来日でき、収入も多いことから技人国(「技術・人文知識・国際業務」ビザ)を選ぶようになった。
※技人国ビザ取得の要件は主に学歴や実務経験のため、日本語能力は求められません。

「技人国」のサポートの薄さ

技能実習
・母国で数ヵ月にわたり日本を学ぶ。
・来日後は監理団体が実習生のサポートの義務を負い、外国人技能実習機構(法務省・厚労省)が相談窓口も設けている。
技人国
・上記の技能実習のような仕組みはない。
・勤務先に見放されると全く日本語ができない状態で孤立してしまう。
・入管当局に提出した内容とは異なる裏契約を来日後に勤務先と結んでいるケースが目立つが、表の契約内容は把握していない場合が多い。入管に届けた会社名も都道府県名も答えられない状況では転職の支援も難しい。

派遣会社により受入れトラブルも目立つ

技人国は本人が専門性をもつ分野でしか働けないはずだが、工場の流れ作業や飲食店の皿洗いといった単純作業に従事させる例が多い。
派遣切りされた技人国をそのまま解雇する例も後を絶たない。

制度の問題点に関して

続けて問題点についても解説されています。

・「特定技能」は日本語能力試験で下から2番目のN4が来日要件となっているが、日本で働き生活するなら最低限、この水準は必要。
・派遣会社の責任を重くする必要がある。仕事が手配できなくても給与を支払い続ける義務の履行を徹底させるべき。
・人材を受入れている企業も、一緒に働いている外国人の状況に注意を払ってほしい。派遣料を適正に支払っていても、派遣会社が本人にきちんと賃金を支払っていないこともある。同僚がどんな契約で来日したのか、困窮していないかなど関心を持ってほしい。

技能実習生による問題行動が多く報道される一方で、労働安全衛生法などの違反により技能実習計画の認定を取り消される企業も毎年多くあります。
技能実習生の間で日本の人気が落ちているという話は聞いていましたが(円安や言語の難しさなど)、受け入れる側が「人手不足のため仕方なく外国人を雇っている」「安く雇用できればいい」といった感覚では日本に来てくれる外国人労働者の質が下がるのも当然です。
今後も日本の外国人労働者数は増えることが予想されます。他人の生活について関心を持つことはハラスメントと言われてしまう時代ではありますが、斉藤准教授が仰るように身近な外国人に関心を持って接することはこれからの多文化共生社会に一番必要だと感じます。


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萩台紘史
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萩台紘史(行政書士)

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