2型糖尿病治療は変わった|自己責任という偏見をなくし患者が主役の時代へ

税所芳史

税所芳史


「糖尿病は自己責任」という誤解は、まず手放してください

「自分の不摂生のせいで、こんな病気になってしまった」

診察室で、そう肩を落とされる方に、私は多く出会ってきました。長く糖尿病の診療と研究に携わってきた医師として、まずお伝えしたいことがあります。2型糖尿病は、決して「だらしなさの結果」ではありません。

実は今、医療の世界では「糖尿病に対する偏見(スティグマ)をなくそう」という大きな動きが進んでいます。スティグマとは、ある特性を理由に不当な烙印を押され、社会から否定的に見られてしまうことを指します。糖尿病はまさに、この偏見にさらされてきた病気の代表でした。

こうした偏見は、患者さんを苦しめるだけではありません。「人に知られたくない」という思いから受診や治療をためらわせ、かえって病気を進めてしまう。私はそこに、長年もどかしさを感じてきました。

私は、父方も母方も祖父が開業医という家庭に育ち、人の役に立てる仕事として医師を志しました。数ある診療科のなかで糖尿病内科を選んだのは、病気だけでなく「人」を診る科だと感じたからです。

糖尿病の治療は、悪いところを切ったり処置したりするより、患者さんが自分の生活を整えながら復調を目指していく。その伴走役という仕事が、私にはとても合っていると思いました。だからこそ、患者さんが偏見でうつむいてしまう姿は、放っておけません。

治療の選択肢は、この数年で大きく広がりました

糖尿病になったら一生薬とインスリン漬け、と思い込んでいる方は意外と少なくありません。しかし、糖尿病の治療は昔とずいぶん変わりました。

私が大学病院やアメリカ留学で研究を重ねてきたのは、血糖値を調節するインスリンを分泌する、すい臓のβ細胞という細胞です。β細胞とは、血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンをつくり出す、すい臓の中の細胞のことです。

近年は、このβ細胞を守り、すい臓の働きそのものを良くする薬が年々充実してきています。血糖値をただ下げるだけでなく、体の負担をやわらげながら治療できる時代になってきたのです。

血糖測定の技術も進んでいます。これまでインスリン自己注射をしていない方は対象外でしたが、現在は、腕に小さなセンサーを着けて24時間血糖値の動きを把握できる持続血糖測定(CGM)が、選定療養という枠組みで使えるようになりました。

自分の血糖値が食事や運動でどう動くのかが「見える」ようになると、患者さんの表情が変わります。

当院では健康管理アプリも取り入れていて、血圧や血糖値、体重、食事の写真をスマートフォンで記録していただけます。記録が残ると、私たちも一人ひとりの生活に合わせたきめ細かいアドバイスができます。

漠然と不安だった状態が、「数字で自分の体と向き合える」状態へ。治療の選択肢が広がるとは、薬の種類が増えるということだけではなく、こうして患者さんが自分の体を理解できる手立てが増えることでもあるのです。

私が大切にしている「細胞の過労死」という考え方

なぜ、まじめに治療しているのに血糖値が下がらない方がいるのか?大学病院時代、私はずっとこの疑問を抱えていました。しかしその答えが、あるアメリカの論文で見つかったのです。「インスリンを分泌するβ細胞の量が、糖尿病の方では減っている」という内容でした。

肥満や食べ過ぎが続くと、β細胞は血糖値を下げようと必死にインスリンを出し続けます。やがて疲れ果てて機能が落ち、「もう十分に働けない」と判断した細胞は、体を守るために自ら死んでしまう。私はこれを「細胞の過労死」と呼んでいます。細胞の過労死とは、働きすぎたβ細胞が疲弊し、死滅してしまう現象のことです。

この悪循環を早く止めるカギが、糖質を抑えた食事と適度な運動で、すい臓の負担をやわらげることです。「なぜ食事や運動が大切なのか」という理由が腑に落ちると、続けるモチベーションが保ちやすくなります。私の診療では、この「理由を一緒に理解する」時間をとても大事にしています。

大量消費の時代のなかで、私たちは気づかないうちに体に負担をかけているのかもしれません。血糖値や中性脂肪、血圧に表れた体のサインを見逃さず、ご自分の生活を振り返る。食べ過ぎないこと、車を使わず歩くことは、実はフードロスの削減や車社会の見直しにもつながります。

体をいたわることが持続可能な社会(SDGs)にもつながる、私はそんな思いで日々の治療にあたっています。糖尿病を入り口に、暮らし全体を整えていく。それも、患者さんが主役だからこそできることだと感じています。

これからは「患者さんが主役」の糖尿病治療へ

スティグマが解消されていくことには、もう一つ大きな意味があります。それは、患者さん自身が治療の主役になれる、ということです。

糖尿病は、症状をコントロールしながら長く付き合っていく病気です。だからこそ、医師に「言われたとおりにやる」のではなく、ご自分の体のサインを知り、納得して取り組んでいただくことが何より大切だと、私は思っています。

さいしょ糖尿病クリニックでは、医師・看護師・栄養士・検査技師・医療事務がそれぞれの役割を果たし、患者さんが主役の治療をチームで支えています。

糖尿病とのお付き合いは年単位になることも多く、私はかかりつけ医の役割も果たしていると思っています。定期的に通っていただくなかで生活習慣全般を見直せますし、ほかの病気が早めに見つかることもあります。

糖尿病があることで、かえって健やかな毎日を送れる。私はそんな「一病息災」の形を、患者さんと一緒に目指したいと考えています。中野駅から徒歩3分という通いやすさや、待ち時間を抑える完全予約制にこだわっているのも、長く気持ちよく通っていただきたいからです。

こうした思いを一冊にまとめたのが、2026年2月に講談社から出版した書籍『ゼロからわかる糖尿病』です。研究と診療の経験から、糖尿病について知っていただきたいことを、ゼロから書きました。

<ゼロからわかる糖尿病>
https://amzn.asia/d/04gsbMXP

この本を読んでいただくと、糖尿病のとらえ方がきっと変わると思います。偏見から解放され、ご自分が主役となる治療へ。その一歩を、この本が後押しできればと願っています。

・健診で血糖値を指摘され、何から始めるか迷っている
・糖尿病と長く付き合うことに不安を感じている
・自分に合った治療を主体的に選びたい


このようなことでお困りの場合は、中野駅北口から徒歩3分のさいしょ糖尿病クリニックまで、お気軽にご相談ください。

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税所芳史
専門家

税所芳史(医師)

さいしょ糖尿病クリニック

糖尿病の悪化はインスリンを分泌するβ細胞の働きすぎに原因があるとの考えのもと、患者自身で症状をコントロールし健康を維持することを目指します。また来たいと思ってもらえるようスタッフ全員で治療を支えます。

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