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終活や相続対策で最初に何から始めようかと考えていらっしゃる方は多いと思いますが、今回は遺言書を作成するときに遺言者の想いを記す付言事項の必要性についてお伝えします。
遺言書は死後の財産や相続に関する取扱いなどを定める重要な書面であり、遺言の方式による遺言の種類やその種類ごとの要件などについては民法で定められていることからも遺言に法的効力を持たせるためには厳格にその要件を満たしたものを作成する必要があります。
しかしながら自筆で作成する遺言は、自分で簡単に作成できる反面、要件が満たされずに無効となるケースも多いのが実状です。
遺言書を作成して保管する方法としては、公証人が作成する公的な遺言書で、2名以上の証人の立会いのもとに証人が遺言内容を確認して署名捺印する公正証書遺言か遺言者が自分で遺言内容を手書きして作成する自筆証書遺言のどちらかが一般的です。
公正証書遺言は公証役場に保管されますので、相続発生後に遺言書を相続人へ確実に渡すことができますが、専門家への報酬が高くなるデメリットもあります。
自筆証書遺言は以前のコラムでお伝えしたとおり2020年の7月の民法改正により法務局で保管する制度が開始されていますので、利便性が良く費用をかけないで遺言書を作成したい方にはおすすめです。
最近では「自分も高齢になり亡き後の相続を心配した方から遺言書を遺したいけどどのように書いたら良いでしょうか」という主旨のご相談も増えていますが、このような場合は必ず遺言書の末尾に遺言者の想いを書き記す付言事項のご提案をさせていただきます。
なぜなら付言事項は単なるメッセージではなくお世話になった人や家族に感謝の気持ちや生前には言えなかった想いを伝えるもので、法的な効力はないとしてもメッセージ効果が大きいことは間違いないからです。
特に遺言者が付言事項で書き記したいケースは、相続財産に不動産等の財産が多く相続配分が偏っている場合や特定の相続人に生前贈与があるときは必須です。
遺言書の内容が相続人の間で相続配分が偏っている場合にその理由を説明したり、妻や同居家族に法定割合よりも多くの財産を相続させる場合で他の相続人の取り分が少ないときの不公平感がある場合でも付言事項でそのような相続配分の割合を決めた理由を説明できれば他の相続人の納得感を得ることができます。
その一方で付言事項の内容が相続人に悪い印象を与えると後々のトラブルに発展するかもしれませんので、以下の点には注意しましょう。
①特定の相続人に対しての批判や怒りを書くこと
遺言者の状況により特定の相続人に対する怒りや悲しみを書きたくなる気持ちがあっても、その内容を発端として相続人の間でトラブルになる可能性があるので、相続人への気遣いも怠らないようにすることです
②遺言書と異なる内容を書くこと
遺言書と異なる内容の記載があるときは相続人の間でトラブルになる可能性があります
付言事項の記載が多いときには知らず知らずのうちに遺言の内容と相反したことを書くことがあるので注意が必要です
③誤解を招く内容を書くこと
特定の相続人により多くの財産を相続させたい場合に他の相続人に納得させるための理由を書くのは良いことで、例えば同居の子供が生前に面倒をみてくれたから財産を多めに渡すということであれば問題ないと思います
ただし、特定の相続人に現金を生前贈与したような書き方は他の相続人とのトラブルに繋がる可能性があるので要注意です
上記のように付言事項は遺言者の想いを遺すことで相続争いを未然に防ぐ効果は計り知れないものですが、相続人を誹謗中傷したり遺留分を侵害するような付言事項は円満な相続とは逆効果となることから遺言者は細心の注意を払って想いを書くことが必要不可欠です。
遺言書の付言事項という言葉を初めて聞いたという方も多いと思いますが、付言事項は遺言書の最後に記すメッセージの大切さと相続争いを未然に防ぐ方法の一つであることを認識していただけると幸いです。
長い人生で遺言書を書く機会は少ないかもしれませんが、今後の遺言書作成や付言事項のご相談については、弊社までお気軽にお問い合わせください。