経営者が自社ブランドを立ち上げる前に考えること⑥

西村進

西村進

テーマ:ブランディング

恩を仇で返せない

OEM受託企業独特の悩み

自社ブランド展開における取引先との微妙な関係
OEM業務を通じて長年クライアント企業に製品を供給してきた企業が、自社ブランドの開発・販売に乗り出す際には、消費者へのアプローチだけでなく、長年の取引関係にあるクライアント企業との関係性にも細心の注意を払う必要があります。良好な関係を維持できていればいるほど、自社の商品をクライアント企業の商品よりも安価に販売することは、倫理的な観点からも好ましくありません。場合によっては、契約上の問題に発展し、これまで築き上げてきたOEM業務の基盤を揺るがしかねないため、慎重な計画が求められます。

例えば、OEM委託先企業の商品よりも3割近く安価で、市場競争力のある自社商品を開発できたとしても、取引先との関係が良好であればあるほど、その商品にクライアントの商品よりも高い価格を設定せざるを得ないというジレンマが生じます。自社ブランドの認知度が低いにも関わらず、です。

このように、OEMという業態で製品を卸してきた企業が自社の新商品を展開する際には、単に消費者に向けたマーケティング戦略を練るだけでなく、既存のクライアント企業との関係性を考慮した周到な準備が必要となります。具体的には、クライアント企業の商品と競合しない商品カテゴリーを選択する、異なる販売チャネルを開拓する、あるいは全く異なるターゲット層を設定するなど、慎重な商品開発戦略が求められます。


失敗から学ぶ 予期されるリスクへの備え
自社ブランドへの強いこだわりを持つあまり、既存のOEM受注契約を一方的に打ち切ってしまい、結果として経営が立ち行かなくなるケースや、OEM委託企業と直接競合する商品を販売してしまい、長年の信頼関係を損なうケースも後を絶ちません。また、社長の指示に従って見切り発車で新商品を開発した結果、大量の在庫を抱え、倉庫代がかさんでしまうといった事態も起こり得ます。

これらの失敗事例に共通するのは、初めての自社ブランド展開において、「こんな問題が起こるとは知らなかった」という認識の甘さです。OEM受託企業が自社ブランドを立ち上げる際には、消費者へのアプローチ、クライアント企業との関係性、そして新たな販売体制の構築など、多岐にわたる課題に直面します。

あらかじめ起こりうる問題を具体的に予期し、それに対する対策を事前に講じておくことで、リスクを最小限に抑えることが可能です。市場調査の徹底、クライアント企業との丁寧なコミュニケーション、段階的な販売戦略の策定など、慎重な準備こそが、OEM受託企業が自社ブランド展開を成功させるための重要な鍵となるでしょう。



OEM受託企業のオリジナル商品自社販売は、必ず失敗する。

経営者が自社ブランドを立ち上げ前に考える10のこと
レンコンデザイン株式会社は、これまで数多くの新規事業プロジェクトに参画し、様々な知見を蓄積してまいりました。その経験に基づき、新ブランド立ち上げを成功に導くための実務パッケージ「ブランドランチャーズパッケージ」をご提供しています。

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西村進
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西村進(コンサルタント)

レンコンデザイン株式会社

デザインコンサルティング、ブランディング、広告企画制作などを手掛け、高付加価値ブランドのプロモーションに長く携わる。まだ世に知られていないブランドを、経営とデザインを結びつけた支援を得意とする。

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