経営者が自社ブランドを立ち上げる前に考えること⑤

西村進

西村進

テーマ:ブランディング

知らないことすら、知らない

そもそも売り方が違う

OEM受託企業が自社販売で陥る盲点
OEM受託企業が満を持して始めたオリジナル商品の販売がなかなか軌道に乗らない原因の一つに、営業組織、ひいては「売り方」の根本的な違いが挙げられます。長年OEM業務に特化してきた企業は、委託先企業の担当者との間に強固な信頼関係を築き上げ、きめ細やかな対応によってビジネスを拡大してきました。いわば、「顔の見える」関係性を重視した、見えないところにまで手が届く営業スタイルです。

しかし、いざ自社商品を消費者に直接届けようとする段階になると、これまで培ってきた営業ノウハウが通用しないことに気づきます。その理由の一つは、消費者への販売経験の不足です。また、大量生産による仕入れ価格の低減といった数字的な感覚に慣れているため、商品の持つ価値を創造し、そこから利益を生み出していくという考え方への転換に苦慮する傾向が見られます。これは、ものづくりに自信のある企業が陥りやすい落とし穴と言えるでしょう。

OEM先に対しては辣腕を振るう営業マンが、自社商品への自信から「売るのは簡単だろう」と安易に考え、販売店や卸業者への営業、そして消費者に向けての広報活動でことごとく空回りしてしまう、というケースは少なくありません。一方、一般的なメーカーには、マーケティングや広報を専門に担当する部署が存在し、潤沢な予算の中で緻密な戦略を立て、時間をかけてブランドを育成しています。このようなプロフェッショナル集団と同等に渡り合うことは容易ではなく、結果としてビジネスチャンスを掴めないまま時間だけが過ぎてしまうのです。


ブランド構築と売り方の同時デザイン
新しく自社ブランドを立ち上げる際に最も重要なことの一つは、ブランドそのものを構築していくと同時に、どのように売っていくのかという「売り方」を戦略的にデザインしていくことです。競合がひしめく市場で、既存のメーカーと同じような売り方をしても、埋没してしまう可能性が高いでしょう。もし自社に生産工場という強みがあるのであれば、なおさら他社が手を出さないような独自の視点を持った商品開発を探るべきです。自社で商品を「作れる」という能力は、他にはない最大の武器となるはずです。

既に確固たる市場を持つ既存のメーカーと同じような商品を作っても、成功する可能性は極めて低いと言わざるを得ません。なぜなら、既存メーカーは広報活動に投じる人員と予算が全く異なり、長年にわたって継続的に投資を行っているからです。また、これまでOEM専業で事業を進めてきた企業にとっては馴染みのない勘定項目、すなわち広告宣伝費が発生することも考慮しておく必要があります。

広報活動費の目安として、一般的なメーカーは売上の3~5%程度を広告宣伝費として使用していると言われています。例えば、売上高10億円の企業であれば、年間3,000万円から5,000万円程度の予算を広報活動に投じている計算になります。新商品の販売時には、さらにこの金額を増額することも珍しくありません。自社で販売することで、OEMに比べて利益率が向上する一方で、「売る」ための労力とそれに伴う支出が発生することを常に念頭に置いておく必要があるでしょう。



OEM受託企業のオリジナル商品自社販売は、必ず失敗する。

経営者が自社ブランドを立ち上げ前に考える10のこと
レンコンデザイン株式会社は、これまで数多くの新規事業プロジェクトに参画し、様々な知見を蓄積してまいりました。その経験に基づき、新ブランド立ち上げを成功に導くための実務パッケージ「ブランドランチャーズパッケージ」をご提供しています。

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西村進
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西村進(コンサルタント)

レンコンデザイン株式会社

デザインコンサルティング、ブランディング、広告企画制作などを手掛け、高付加価値ブランドのプロモーションに長く携わる。まだ世に知られていないブランドを、経営とデザインを結びつけた支援を得意とする。

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