経営者が自社ブランドを立ち上げる前に考えること①

西村進

西村進

テーマ:ブランディング

今すぐ脱受託を叫ばない

業績好調な時こそ未来を憂う

OEM受託企業が自社ブランドを立ち上げる最適なタイミングとは
OEM受託企業として安定した経営を続ける中で、将来への不安を感じている経営者の方も少なくないのではないでしょうか。長年培ってきた技術やノウハウがあるにも関わらず、自社ブランドを持たないことへの焦燥感、委託先企業の業績に左右される不安定さ、そして社員の成長への懸念など、悩みは尽きないものです。

OEM経営における共通の悩み

OEM受託企業が抱える悩みは多岐にわたります。

◯自社ブランドの販売について
いつ、どのように自社ブランドを立ち上げれば良いのか、具体的な道筋が見えない。

◯独自技術の特異性が伝わらない
自社の強みである技術や品質管理のノウハウが、市場や顧客に十分に認識されていない。

◯忙しく稼働しているのに利益が上がらない
生産量は多いものの、価格決定権がないため、利益率が低く、経営が安定しない。

◯ルーティーン業務により社員が成長しない
指示された製品を製造するだけの業務が多く、社員の主体性やスキルアップの機会が少ない。

これらの悩みは、委託先企業の経営状況が自社の業績に直結するために、経済の変動に柔軟に対応しにくいという構造的な問題に根ざしています。また、委託先との力関係から、価格交渉が難航することも少なくありません。その結果、経営者は価格維持で生産量確保を優先し、現場のスタッフは疲弊していくという悪循環に陥りがちです。委託先企業もまた、厳しい競争環境の中でコスト削減や納期短縮をパートナー企業に要求するため、その圧力はサプライチェーン全体に波及していきます。このような状況下で、OEM受託企業が「脱受託」を模索するのは自然な流れと言えるでしょう。

OEM受託のメリットとデメリット

改めて、OEM受託によるメリットとデメリットを整理してみましょう。

メリット>
◯安定受注の確保
◯設備稼働率の向上
◯在庫リスクの軽減
◯製造技術・品質管理ノウハウの吸収

デメリット>
◯相手先の都合に左右される
◯自社ブランド価値の停滞
◯価格支配権を失いやすい
◯ノウハウ流出
◯納期と生産キャパに苦慮

オリジナル商品販売による現状打破の可能性

OEM受託によるデメリットを解消し、更なる成長を目指す上で、オリジナル商品の販売は魅力的な選択肢となり得ます。しかし、安易な自社ブランド立ち上げは、期待した成果を得られないばかりか、経営を悪化させる可能性も孕んでいます。
OEM事業で着実に成長してきた企業は、今後、事業規模を拡大して更なる受注を目指すか、長年培ってきた独自の技術を活かして新たな事業領域に挑戦するかという重要な岐路に立たされます。特に、取り扱っている製品や属する業界が成熟期に入っていたり、ターゲットとする顧客層が減少傾向にある場合は、早めの対応が不可欠です。

自社ブランド立ち上げの最適なタイミング

では、OEM受託企業が自社ブランドを立ち上げる最適なタイミングとはいつなのでしょうか。それは、以下の3つの要素が揃った時と言えるでしょう。

1.OEM事業で揺るぎない基盤を築き上げていること
まず、現在のOEM事業が安定しており、十分な収益とリソースを確保できていることが重要です。焦燥感から、まだ基盤が不安定な状態で自社ブランドに手を広げても、両方の事業が立ち行かなくなるリスクがあります。

2.市場と顧客への深い理解を得ていること
長年のOEM事業を通じて培ってきた市場の動向や顧客ニーズに関する深い理解は、自社ブランド戦略を策定する上で非常に valuable な財産となります。この知見を活かし、ターゲットとする市場や顧客層を明確にし、ニーズに応える製品開発を行うことが成功の鍵となります。

3.自社の強みを活かしたブランド戦略を練り上げていること
OEM事業で培ってきた独自の技術、品質管理のノウハウ、生産体制など、自社ならではの強みを明確にし、それを活かしたブランドコンセプトや製品開発を行うことが重要です。競合との差別化を図り、顧客に独自の価値を提供できるかが成否を分けます。

今すぐ具体的な行動を起こす必要はないかもしれませんが、10年、20年後の企業の存続と社員の成長を見据えるならば、今から将来の自社の姿を真剣に悩み抜き、種まきを始める覚悟が求められます。業績が良い時こそ、未来への危機感を持ち、着実に自社ブランド立ち上げへの準備を進めていくことが、持続的な成長への道筋となるでしょう。


OEM受託企業のオリジナル商品自社販売は、必ず失敗する。

経営者が自社ブランドを立ち上げ前に考える10のこと
レンコンデザイン株式会社は、これまで数多くの新規事業プロジェクトに参画し、様々な知見を蓄積してまいりました。その経験に基づき、新ブランド立ち上げを成功に導くための実務パッケージ「ブランドランチャーズパッケージ」をご提供しています。

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西村進
専門家

西村進(コンサルタント)

レンコンデザイン株式会社

デザインコンサルティング、ブランディング、広告企画制作などを手掛け、高付加価値ブランドのプロモーションに長く携わる。まだ世に知られていないブランドを、経営とデザインを結びつけた支援を得意とする。

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