ピアノが上達しない!?お家での練習方法
ピアノ教材といえば「バイエル」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
現在もバイエルを使用する先生は一定数いますが、現在のピアノ教材は多様に増えており、講師の先生によって使用教材は差があると言えます。
同じ教材でもイラストがカラーで可愛いかったり、キャラクターとコラボしている教材も増えており、子供によっては教材の可愛さが直接やる気につながる場合もあります。
どんな教材を、どんな目的で使っているのか、それによって練習の仕方も変わってきます。
私のお教室が使用してる教本とそれぞれの教本が持つ特徴をお伝えします。
①導入教材
初学者は音符・休符の長さや、音の高さ、リズム、覚えることが沢山あります。導入で扱う教材はこれらを覚え、定着させるための教材を選ぶ必要があります。
現在はミドルCポジション(右手:真ん中からドレミファソ、左手:真ん中からドシラソファ)から始める教材が主流となっています。改訂前のバイエルなどは右手も左手もト音記号しか出てこず、ヘ音記号に対して苦手意識が強くなるのではと考えられます。私のお教室で幼児が入会した場合は、まず導入教材を1冊終わらせてからメイン教材に移っています。
- 音楽之友社:ピアノランド・・・ 1曲目は右手も左手もミドルCと4分音符しか出てこず、 1曲ごとに使用する音と音符が増えていきます。最初のうちは4拍子がメインですが、途中から3拍子やスラーも出てきて、弾きにくさや曲の変化に気がつく子が多いです。最後の3曲は突然8分の6拍子などが出てきますが、細かいことはまだ教えず音楽に乗って演奏させています。伴奏もとても綺麗なものが多いです。1は交互奏(右手と左手を交互に使ってメロディーを演奏する)がメインで、両手は最後の方の曲に2小節ほどしか出てきません。
- ヤマハ:オルガンピアノの本・・・私が小さい頃に使用していましたが2015年に改訂され、デザインも内容もより親しみやすくなりました。ピアノランドとは異なり両手やポジション変化も沢山出てきます。最初の頃は進度がゆっくりのように感じられますが、1巻の後半あたりからは少し難しくなって行きます。小学生から始めた場合の導入教材に最適だと思っています。個人的には1巻しか使用していません。途中から並行してメイン教材を始めることもあります。
- ドレミ楽譜出版社:しってるきょくでどんどんひける ピアノひけるよ!ジュニア・・・タイトルの通り子供たちも知っている曲が沢山出てくるため、とてもやる気に繋がる教材です。上の2冊に比べると曲数はやや少なく、ほぼ交互奏になります。進度もそれなりに早いので小学生から始めた子やすぐにメイン教材へ移れそうな子に使用しています。導入教材として使用するのは1巻のみです。2巻以降は副教材(曲)として使用します。
②メイン教材
導入教材で覚えた内容に加えメインで使用する教材では、スタッカートなどより音楽的に演奏するための奏法やテクニックを身につけていきます。また一人で読譜するための訓練も同時に行い、導入教材で忘れてしまった内容をもう一度復習して着実に身につける練習をしています。メイン教材が終了すると副教材で使用する3種類をメインとして使用していきます。ソルフェージュ教材や楽典教材を用いて、さらに専門的な知識や理解を深めていきます。
- 東音企画:バスティン ピアノベーシックス(ピアノのおけいこ)・・・初期段階では一曲一曲が短く、片手→ユニゾン(両手が同じ)→両手奏法と順を追って進んでいきます。アメリカ系の教材のため英語名やコードネームなども出てきます。私のお教室では導入教材が1冊終了した時点でほとんどの生徒さんが進めていきます。
- ヤマハ:グローバーピアノ教本・・・バスティンと同じくアメリカ系の教材になっており、こちらも英語名やコードネームなども出てきます。バスティンはポップス系やロック系の曲が多かったのに比べ、グローバーはクラシカルな曲が多くなっています。フレーズを大切にする曲が多く、細かいニュアンスが多いためアコースティックのピアノを持っている生徒におすすめです。
③副教材
メイン教材と同時に副教材を進めていきます。副教材の中でもジャンル分けができ、作品として曲を仕上げるためのもの、テクニックを身につけるためのもの、ポリフォニーを身につけるものなど、その子の進度や必要性によって教材を選ぶようにしています。
- 作品として曲を仕上げるためのもの・・・メイン教材では拍の長さや強弱などを厳格に見ていき、曲はどちらかというと楽しく弾けるように仕上げていきます。作品として仕上げる中でテクニックや強弱は曲によって解釈を変えたり、生徒と一緒に考えて変化させて弾くこともあります。伸び伸びと演奏することを目的としています。導入教材の続きを使用したり、ブルグミュラーや4期のピアノ名曲集、バスティンピアノ名曲集などを使用し、ソナチネ、ソナタへ移ります。
- テクニックを身につけるもの・・・ハノンやバーナムなどテクニックを向上させるための教材を行うことがあります。電子ピアノの子は体力がない子が多いためハノンを、アコースティックピアノの子はより繊細な表現が行えるようにバーナムを行うことが多いです。
- ポリフォニーを身につけるもの・・・将来プレ・インベンションやバッハなどを弾くときに頭が混乱しないよう、小さい頃からポリフォニー(右手と左手がメロディーと伴奏の関係ではなくて、独立したメロディーが重なっているような音楽)の練習をしておくとバロック音楽やポリフォニーの作品にスムーズに入ることができます。バイエル程度であればたのしいポリフォニーを、ブルグミュラー程度であればバロックをひこうなどの教材を用いています。現在は4期のピアノ名曲集など、バロック・古典・ロマン・近現代全ての曲が入っている教材も増えているため、そういった教本で補うこともできます。
最適な教材を選ぼう
どの教材もピアノを習う上でとても大切な教材になりますが、レッスン時間やお家でのピアノの練習時間は有限です。親御さんも本人も「絶対にピアニストになるんだ!!!」というのであれば話は別ですが、大抵の子はそうではありません。私の場合は導入教材1冊を進める中でその子のやる気を見て、性格や生活リズムをよく知り、今後の進度などを見極めてその後の教材を決定しています。他の先生方と比較すると少し長期的かもしれません。しかし本人と親御さんが望むものは家庭により異なり、練習に対するモチベーションも家庭により様々です。また私たち講師が生徒に求めるレベルも異なります。お互いの意思を尊重させながら、効率の良い練習が出来るように適切なピアノ教材を選んでいきましょう。