日本株投資の現状
LOGOS 7月末世界市場レビュー2023
2023年7月末主要指数
2023年7月末 / 2023年6月末
ダウ工業平均/35,559.53 (+3.3%)/ 34,407.60
S&P500指数 / 4,588.96 (+3.1%) / 4,450.38
NASDAQ指数 /14,346.02 (+4.0%) / 13,787.92
日経225平均/ 33,172.22 (-0.0%)/ 33,189.04
米ドル対円/142.32/ 144.33
ポンド / 182.67/ 183.40
ユーロ /156.52/157.56
金/2,003.70 (+3.9%)/ 1,927.80
米10年国債/3.95%/ 3.84%
7月の世界市場はほぼ全面高となりました。4月以降急騰を遂げた日本市場のみは一服となりほぼ変わらずで引けました。日本株は6月迄の3カ月間世界をリードしました。さすがに7月に入ると息切れとなり、それに加え月末にかけて日本銀行による政策転換は市場を驚かせました。10年国債利回りを0.5%以下に止めるYCC政策の変更により日本の金利も正常化方向に転じています。そろそろ円安に対する見解も変化を来たすでしょう。
代表的米国株S&P500種指数は年初来19%の上昇を記録しましたが、主要IT銘柄で構成する時価総額トップ10銘柄が指数の33%を構成し、残りの490銘柄の平均株価はほぼ横ばいに推移してきました。NYダウ平均も上昇幅は小幅に留まっていました。ところが7月には米国景気は堅調で、且つインフレ率が予想以上に低減し、米国株は全面高模様となっています。米第二四半期GDPは予想を上回るプラス2.4%となり、それに反し主要インフレ指標となる個人消費指数(PCE)の上昇率は3%に留まりインフレ率も確実に低下している観測が支配的となっています。第二四半期企業収益は小幅の減益となりましたが、生成AI開発等を中心に技術革新ブームの再来となっています。マイクロソフトによる金額750憶ドルのアクティビジョン買収劇は独禁法抵触を理由に米連邦取引委員会による提訴は否定され、巨大IT企業に対する市場期待は更に高まるに至っています。米失業率は歴史的に低い3%半ばで推移し、景気に対する見通としては景気後退は回避できる軟着陸予想が高まり、株式市場はブルマーケットに突入した気分に浮かれています。景気の実態は大方の予想を上回り深刻な不況を予測するアナリストはごく少数となっています。それに対し米FRBは大方の予想通り7月に政策金利を0.25%引上げ、5.25~5.50%となり、年内もう一度の引上げを示唆しています。その背景に米FRBはインフレ率が長期目標の2%に低減するまでインフレ退治優先を公言しています。事実消費者物価指数も9%台の上昇から確実に低下基調ですがようやく5%台を下回る水準となり、賃金上昇基調もサービス業を中心にインフレ率を上回っているのが現状です。
米国を除いても、世界経済展望は改善方向に向かい、IMFの直近2023年世界GDP予測は上方修正の3%成長となりました。唯一遅行しているのが中国経済で、発表された第2四半期GDPも0.8%成長に止まっています。
昨年来インフレ指標として米10年国債金利を注目してきました。株式市場に関し4%は危険水準と指摘してきました。数か月来10年国債金利はじわじわと上昇を遂げ、現在3.95%の水準となっています。換言すれば、債券市場は今後のインフレ低減に逆行を示唆しています。金利水準に起因するファンダメンタルズに基づいた株価は明らかに危険シグナルを発信しています。リスクのない10年国債利回りに対し株式のリスクプレミアムは1.1パーセントとなり2002年来の低い水準に到達しています。金利上昇にも拘わらず潤沢な流動性に支えられている相場に対し、敢えて慎重な姿勢を訴えるべきでしょう。
LOGOSキャピタルパートナーズ
伊藤 武