LOGOS年2月末世界市場レビュー2024
3年5月13日
LOGOS Blog#30 日本株投資の現状
年初来日経225平均株価は好調に推移しています。4月末の引値は28,856.44で昨年末比較10.6%上昇し、米S&P500種指数の8.6%上昇を上回り、代表的なNYダウ平均のプラス2.9%との比較では際立っています。俄かの注目にいくつか要因が挙げられます。
その一つは4月に投資の神様と崇められるウォーレン・バフェット氏が訪日し、日本株に対する関心が大きく報じられました。バフェット氏はバリュー株式投資家として商社に着目し、既に3年前から買い始めた大手商社株の買い増しを表明。大手5商社株それぞれ発行株数の10%程度まで引き上げることが期待されています。
もう一つは、東京証券取引所が上場銘柄で株価自己資本比率(PBR)1を割っている企業に改善措置を勧告しました。PBRが1を割ると言うことは、会社を清算する実態価値の方が株価総額を上回ることを意味します。実態価値がそのように低く評価されるとは、今後企業価値を高めることが出来なければ、その企業に対する将来は期待できないことです。換言すれば、ゾンビ企業として存続し、資本市場に何ら寄与できません。是正措置として最も望まれるのは、事業改革により企業の体質と成長力を高めることです。近年においてそれに対する株式価値の最も重要な尺度はROEの向上。即ち企業の自己資本に対して利益率向上を計ることです。例えばROE10%であれば、自己資本に対して10%の純利益を計上することです。ROEを改善させるには今まで以上の企業戦略構築や実践を要します。ですので、資金の潤沢な企業にとり、手短かな選択肢は増配並びに自社株買いが検討され、株主に直接的に利益を還元することです。しかも自社株買いとは市場に流通する株式を減らすので、分母となる株数の減少に伴い自動的にROEの向上を計れる手段です。現在東証には約3,300銘柄がプライムかスタンダード市場に上場されており、過半数がPBR1割れとなっています。これらの企業が東証の勧告に従い奮起すれば当然株価を押し上げる効果をもたらすでしょう。増配や自社株買いは株価向上の特効薬となり大いに注目されています。
更に4月には日本銀行の植田新総裁が着任し、金融の超緩和策が継続される見通しとなり市場は安堵しています。金融量的緩和とゼロ金利政策続行は、少なくとも今後の景気対策として必要な措置と判断され、同時に金利格差に振り回される為替市場に対しても当面の円高回避要因となります。米FRB実施のドルの政策金利は5%台に引き上げられ、ドル金利が下降に転じるまで円対米ドルは当面安定的に推移する観測となっています。
堅調な米国経済は今後軟着陸予想と金利も年内には下げ始める見通しが主流となっています。しかし、インフレの鎮静化が進まず金融引締め継続及び景気後退が濃厚になれば、相場の一層の下落懸念が高まるでしょう。その中、日本経済は少なくとも緩やかな改善が期待され、日本株の割安感が注目され、海外投資家から資金流入が高まっています。
このように日本の株式市場は当面最も安定した市場との期待から人気を喚起しているように見受けられます。ヨーロッパは高インフレが収まる見通しは全く立たず、ヨーロッパ中央銀行(ECB)による継続的な金利引上げが予想され、米国は金利頭打ち観測で景気も今後の軟着陸予想に対して景気後退説も根強く、相場対する警戒感が拭えていません。比較上日本は一時資金の逃避市場となっています。米国市場の展望が改善すれば、日本株は再び遅行する可能性が高まるでしょう。
1980年代日本市場は世界を席巻し、米国からはジャパンバッシングが横行し、バブル崩壊後の1990年代はジャパンパッシングとなり中国が注目を浴び、その後はジャパンミッシングとなり日本の存在感すら薄れてしまいました。2013年安倍政権樹立後のアベノミクス政策により短期的に日本経済は復活し注目されたものの持続性に欠け、1990年代以降の失われた30年が継続しています。
東証がPBR一倍未満の上場企業に発信した改善措置警告は、換言すれば日本企業の停滞を物語っています。世界株式市場時価総額は2022年には124.4兆ドルとなり、30年前比較14倍に拡大し、そのなか米国は47.7兆ドルで同様に14倍となり、30年前はほぼ存在しなかった中国の時価総額が12.4兆ドルで、世界市場を牽引しました。日本の時価総額は5.6兆ドルの4倍止まりで最も遅行した市場となっています。1980年代の半ばには世界時価総額トップ50銘柄のうち32社が日本企業でした。その中IBM、GE、エクソン、ATT等の錚々たる企業群を擁しながらも米国企業数は15社にとどまっていました。2023年現在ではトップ50銘柄のうち逆に32社が米国企業であり、中国企業が5社含まれますが、日本は0で、トップのトヨタでさえその仲間に含まれていません。残念ながら今後日本市場に対す202
る期待が大きく高まることは期待薄と考えています。