世界へ羽ばたく陸上選手を育てるコーチ
川口博正
Mybestpro Interview
世界へ羽ばたく陸上選手を育てるコーチ
川口博正
#chapter1
府中市民陸上競技場(東京都府中市)をホームグランドに活動しているKMC陸上クラブは、関東小学生陸上クラブ交流大会という関東大会で2010年から5連覇した強豪クラブです。2010年は全国小学生陸上競技交流大会男子80mハードル優勝、2011年は全日本中学校陸上競技選手権大会で100mハードル優勝、2012年は100mハードルの中学日本新記録樹立という好成績を収めてきました。
小学3年生から高校生まで140名近い子どもたちを指導しているのは、川口博正さん。スポーツトレーナーとしても活動し、陸上の指導技術はもちろんケガの予防やケアの専門知識まで備えた、頼もしい先生です。長身でがっちりとした体格はいかにもスポーツマンらしく、きっと子どもの頃から俊足だったのだろうなぁ、と想像していたのですが、事実はちょっと違うよう。「実は、小学生の時は、学年でビリから2番目くらいでした(笑)。それが悔しくて、どうしたら速くなれるか自分なりにあれこれ考え、こっそり練習したものです。その結果が出るようになってからですね、走ることの面白さを知ったのは」
やがてスポーツトレーナーを目指して人間の骨格や筋肉について学ぶようになると、その知識を陸上に応用し、独自の「KMC理論」を考案しました。「KMC理論とは、人間の身体の構造から理想の動きを考えた指導法です。塾通いに忙しく体を使って遊ばない現代の子どもたちは、走るための正しい体の動かし方を知りません。ですからストレッチや筋トレなどで動きを修正することから、無駄の少ない走動作を身につけていきます」
この独自の理論を実践するためにクラブを立ち上げた当初は、陸上界からの風当たりも強く、また部員も集まらず、辛かったそうです。そんな苦労も、2003年に初めてリレーで参加した大会(全国小学生陸上競技交流大会東京都代表選考会)でいきなり優勝し全国大会の切符を手にすると、一気に報われることに。結果を出したことで部員数は急増。2009年には、功績のあった指導者を表彰する「安藤百福記念章」が川口さんに授与されたこともあり、今では神奈川や埼玉から通ってくる子どもがいるほど、関東でも有数の陸上クラブとなりました。
#chapter2
水曜日の夕方から始まる「オプションクラス」を見学していると、子どもたちがみな、とても礼儀正しいことに気づきました。練習場に来た子はどの子も真っ先に川口さんのところにやって来て、「先生、こんにちは」ときちんと挨拶していきます。テーピングをしてもらう時も「○○が痛いので、テーピングをよろしくお願いします」と丁寧。そこに流れているのは、師弟関係独特の緊張感。今どきありがちな“友だちみたいなコーチ”という緩い雰囲気はまったくありません。
「礼儀やマナーを守る、準備や後片付けなど自分のことは自分でやる、道具を大切にする、自分で考えて行動するというのが、このクラブの基本です。こういう習慣は、子どもの頃から身につけた方がその子のためになると思うので、しっかり教えています。指導者としては厳しさも必要で、技術でも態度でも、ダメなことに対して怒ることはしょっちゅう。だから子どもたちは、私のことがかなり怖いみたいですよ(笑)」
#chapter3
怒られ慣れていない今の子どもが、それでも川口さんの指導を受けに来るのは、確かな指導力と子どもたちに対する深い愛情をきちんと理解しているからなのでしょう。KMC理論に基づく日々の練習に加え、春、夏、冬の合宿、さらにはスポーツトレーナーの立場から栄養学や医学的な知識も伝えて、トータルにアスリートを育てていくのがこのクラブの強み。厳しい練習を重ねる中でタイムが縮まっていくことで子どもたちは達成感を学び、そこから師弟間に強い信頼関係が生まれ、さらに高い目標を目指すようになっていきます。
「子どもたち一人一人の走力やモチベーションをきちんと見極め、その上で具体的な目標タイムを提示してあげることを心がけています。どんなに足の遅い子でも、繰り返し練習することでその目標が達成できる瞬間があり、しかも不思議なことに、お互いその瞬間がわかる時があるんです。その時の喜びといったら!! 何事にも代え難いものですよ!」
目を輝かせてそう語る川口さんに、今後の目標を伺うと「クラブとしては関東小学生陸上クラブ交流大会での連覇。指導者としては、世界レベルの選手を一から育てあげたいです」。熱い情熱と確かな指導法で、川口さんと子どもたちは大きな目標に向かって今日も元気に走ります。
(取材年月:2010年12月)
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Profile
世界へ羽ばたく陸上選手を育てるコーチ
川口博正プロ
陸上コーチ
KMC陸上クラブ
快適な生活環境に慣れ過ぎてしまい、本来持っていたはずの能力を使い切れていない現代人に対し、改めて効率の良い身体の使い方を学習させることで速く走る感覚を蘇らせます。陸上競技は動作と感覚の修正が大切です!
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