PMが意見対立を整理するための5つの観点
先日、近所の馴染みの店に行ったところ、オーナーがこのようなことを話していました。曰く
飲みに行った店が1500円で3杯飲めるチケットを売っていた。通常営業時間前に1時間早めに開けて、チケットを買ってもらい、すぐに作れる3杯を提供している。お腹が空いた人には1杯分のチケットでちょっとしたおかずを選ぶことができる。これはいいな、と思った。自分の店にも導入したい。
ということで、これは新しい取り組みをやりたいと言うことなのだな、ということは分かりましたが、この取り組みをやることで何を改善したいのかが私には分かりませんでした。例えば、
- 自分の店になぜ客が来ないのか
- 自分の店はどの時間帯が空いているのか
- 自分の店に誰を呼び込みたいのか
- 自分の店でこの取り組みをやって利益は出るのか
などが考えられていないようでした。
皆様お気付きのことかと思いますが、「通常営業時間前に一時間早めに開けて、チケット制で3杯だけ提供する」目的は
- 土地や設備の稼働率向上
- 通常営業時間より早い時間から安く飲みたい見込み客へのアプローチ
- 粗利の向上
などが挙げられます。ひっくり返すことでどういう課題を解決しようとしているかが明確になります。
- 1日6時間の営業であれば、支払っている家賃のうち1/4しか売り上げに貢献していない。固定費が売り上げに占める割合が高すぎる。
- 早い時間に軽く飲みたい人にとって、今の営業時間や価格帯が合っていない。
- レギュラーメニューのフードは、原価が高く調理にも時間がかかる。粗利を圧迫するし、限られた時間で多くの顧客にフードを提供することができない。
つまり、1500円でチケットを3杯売ることは、飲み屋の経営者にとって課題ではなく解決策の一つに過ぎません。
私が専門にしているシステム開発のプロジェクトでも、同じようなことが起きます。
例えば、「AIコーディングを導入して開発を速くしたい」という話があります。もちろん、AIコーディング自体が悪いわけではありません。しかし、それはあくまで解決策の一つです。導入する前に、本当に開発速度を下げている課題が何なのかを見る必要があります。
特に確認すべき課題は、次の3つです。
1つ目は、要件が決まらないこと
要件が曖昧なままAIコーディングを導入しても、正しい成果物が速く作られるとは限りません。むしろ、正しいのか間違っているのか分からないものが、今までより速く大量に作られてしまう可能性があります。
2つ目は、意思決定が遅いこと
現場で判断できず、すべて上位レイヤーや経営層の承認が必要なプロジェクトでは、コードを書く速度よりも判断待ちの時間がボトルネックになります。AIで実装を速くしても、承認待ちで止まるなら、プロジェクト全体の速度は上がりません。
3つ目は、レビュー・テスト・ドキュメントが弱いこと
AIによってプルリクエストが増えても、レビューできる人が限られていれば、レビューは滞留します。テストやドキュメントが不足していれば、手戻りや保守コストも増えます。実装速度だけを上げても、リリース可能な状態になるまでの時間が短くなるとは限りません。
1500円で3杯飲めるチケットを売ることも、AIコーディングを導入することも、それ自体は悪い施策ではありません。問題は、それが何を解決するための施策なのかを見失うことです。プロジェクトを前に進めるために必要なのは、流行の解決策を持ち込むことではありません。まず、解くべき問題を正しく定義することです。
弊社ブログでは、AIコーディング導入を例に、プロジェクトマネージャーが見落としがちな「本当の課題」について考えます。ぜひご一読ください。
あなたが見るべきは解決策ではない | 合同会社 傾聴


