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箸の専門店として日本各地の品をそろえ、伝統をつむぐために尽力

生活を彩る箸や和食器、伝統工芸品の専門家

佐藤俊樹

佐藤俊樹 さとうとしき
佐藤俊樹 さとうとしき

#chapter1

銀座本店をはじめ都内や京都に店舗を構え、箸のほか和食器や子ども用のラインアップも充実

 「世界中で約3~4割の人が食事で箸を使うと言われていますが、『一番長いのはお父さん』など、各自の箸が決まっているのは日本ならではなんです。自分のものとして日々の食卓に用い、長く愛用していただきたいですね」

 そう話すのは、銀座本店をはじめ、都内や京都に箸の専門店を構える「銀座夏野」の専務取締役・佐藤俊樹さん。一大産地として知られる福井県の若狭塗など日本各地の品をそろえ、和食器も含め約3000点を展開しています。

 「箸は縁起物で、結婚や記念日のお祝いにぴったりです。軽くてかさばらないため、旅行で訪れた方がお土産にまとめて購入されたり、企業さまのノベルティーとしてご注文いただいたりしています。また、他店と差別化を図りたい飲食店さんから、テーブルまわりも含めたコーディネートのご依頼もいただきます」

 手にした人が、その使い心地の良さから同じものを自分用に買い求めたり、周囲へのギフトとして選んだりすることも多いとのこと。リピーターや遠方に住んでいる人に便利なオンラインショップも充実しています。さらに、子ども向けの箸や椀、カップなどのラインアップも豊富。佐藤さんは、子どものときから、品質を備えた本物を使ってほしいと言います。

 「以前、親戚の子に漆塗りの器を贈ったことがあります。とても気に入っていたのですが、乱暴に扱ったことが原因で壊れてしまいました。これからは大切に使うから直してほしいと頼まれ、器を作った方に修理をお願いしました。子どもでも愛着の湧く丁寧に作られた物を得ることで、物を大事にする心を育むと実感しました」

#chapter2

箸の奥深さに目覚め、西陣織や清水焼といった京都の伝統工芸とコラボレーション

 佐藤さんは大学卒業後、学習塾に入社。就職活動中に進路に迷い、かつて通っていた塾を訪ねたところ、恩師でもある塾長から声を掛けられたことがきっかけでした。
 「恩師は、過熱し、低年齢化していく受験にかねてから疑問を感じていました。日本の文化をテーマにした新事業を立ち上げたいとのことで、私も一緒に新会社の設立に携わり、和食店も開業しました」

 飲食店で経営の実務を重ねた佐藤さん。「銀座夏野」が京都に出店する際に現地に移り住み、箸について本格的に学び始めてすぐに、その奥深さにのめり込みます。

 「『はし』には、つなぐものという意味があります。川の両岸をつなぐのは橋ですし、上と下をつなぐのがはしごです。そして箸は、料理を口に運ぶ箸先の反対側にある『天』に神様が宿っていると考えられてきました。神様と自分をつなぐもので、命をつなぐ食事をするのです。地域によって、材料や作り方に違いがあることも興味深かったですね」

 店頭で接客をするうちに、もっと京都らしい品を販売できないかと考えた佐藤さん。西陣織の職人に頼み込み、模様付けの工程で使われる箔を、手を添える持ち代にあしらい華やかに仕上げました。また、清水焼の陶工と作った箸は、持ち手部分の陶器を空洞にして重心がくずれないよう配慮。漆塗りに螺鈿や玉虫の細工が施された箸は、海外でも作品展を開催する漆芸工房によるものです。こうした京都の伝統工芸を取り入れた品々は、旅行客などから人気を集めています。

佐藤俊樹 さとうとしき

#chapter3

日本の箸文化を守るために、箸づくりの技術を継承する取り組みも開始

 佐藤さんは、柔軟な発想で数々のデザインを生み出してきた一方で、「家業や屋号を継いでくれる人がいない」という現実にもたびたび遭遇してきました。
 「東京にも木箸づくりの職人さんが多くいらっしゃったのですが、年々減少し、今は数軒しか残っていません」

 いま対策を打たないと手遅れになると危機感を抱き、代々続く技法を継承していくためのサポートにも力を入れます。
 「技を習いたい人や他分野で腕を磨いてきた職人と、後継者のいない箸職人をマッチングしています。さらに、箸づくりに興味を持っていた当店の元スタッフを再雇用し、匠の元で修行を積んでいます。皆さまに良い商品を届けられるよう体制を整えていきたいですね」

 実際に制作現場を見たり作者に話を聞いたりしてみると、一膳一膳に、たくさんの手間がかかっていることが分かると佐藤さんは語ります。

 「お客さまに作り手の思いや技術の高さを伝えながら、お客さまが何を欲しているのかを作り手にも伝えるという、両者を仲立ちすることが私どもの役割だと考えています。ご要望をかなえるお手伝いをしますので、箸のことやテーブルまわりのこと、何でも私やスタッフに気軽に聞いてほしいですね。販路を広げたい、新しい商品づくりに取り組みたいという作り手からのご相談も歓迎しています」

 毎日の生活を彩る道具でもあり、日本の文化に根付く伝統工芸品でもある箸。自分のために、あるいは大切な人のために、こだわって選んでみませんか。

(取材年月:2023年5月)

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佐藤俊樹

生活を彩る箸や和食器、伝統工芸品の専門家

佐藤俊樹プロ

箸・和食器販売

銀座夏野

箸や和食器を約3000点そろえる専門店を展開。日本の文化に根付く伝統工芸品でもあり、毎日のように使う道具でもある箸は、贈り物やノベルティーにもぴったりです。要望や疑問など何でもご相談ください。

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