「任意売却」とは?

山口剛平

山口剛平

テーマ:解説|任意売却に関して

正しく知ろう!不動産の「任意売却」

こんにちは。
任意売却Dr.の山口です。

不動産の「任意売却」とは具体的にどういうことなのか?
本日はこのテーマについて、専門家として詳しく解説したいと思います。

任意売却とは、不動産売却の種類の1つ

図1.不動産売却の種類(例)

不動産を売却する「理由」は様々ありますが、図1のように誰が主体となるか?によって、売却方法の種類が異なってきます。任意売却は、その中の1つです。

「一般売却(通常売却)」

例えば、結婚した、子供が増えた、子供が独立した、親と同居する、転勤する、離婚する、など家族構成の変化が理由で住み替え(買い換え)による売却や、複数所有の不動産の一部または全部を資産整理という理由で売却、相続で受けた不動産を現金化する為の売却など、売主が主体で売却価格を取り決め、不動産会社に依頼して売却するケースを、「一般売却」または「通常売却」と呼んだりします。

「不動産競売」

一方で、不動産競売、俗にいう「競売(ケイバイ/キョウバイ)」は、裁判所が主体となってオークション形式のような形で不動産を売却処分することです。
これは、不動産の所有者が、例えば住宅ローンを一定期間超過して滞納した場合や、マンション管理費や税金の長期間滞納してしまった場合、或いは、他のカードローンなどを一定期間超過して滞納してしまった場合などに、債権者(お金を貸した者・権利を有する者)が金銭を回収する為に、裁判所に「不動産競売でお金を回収させて下さい」と申立てを行い、裁判所がそれを認めて実行するものです。もちろん、落札されて裁判所に入ってきたお金は、申立てを行った債権者に渡ります。

「任意売却」

さて本題の任意売却ですが、こちらは図1の通り金融機関が主体となって不動産会社を通じて売却することです。こうなってしまう理由は実は様々あるのですが、一般的に多い理由は住宅ローンの滞納が一定期間超過した場合です。

住宅ローンの滞納が一定期間超過すると、何故あなたの家を、金融機関が主体となって任意売却するのか?

金融機関が主体となる任意売却

より具体的に知る為に、まずは以下2つについて学んでいきましょう。

  1. 「不動産登記簿」と「抵当権」という存在
  2. 「期限の利益」という言葉

1.「不動産登記簿」と「抵当権」という存在について

家を購入する時、多くの人は「現金」で購入するのではなく「住宅ローン」という銀行や住宅専用の金融機関(住宅金融支援機構など)から融資を受け、つまりお金を借りて購入します。これを住宅ローンと呼びます。

貸す側は、簡単に言うと、どこの誰かもわからない人に何十年という返済計画で数千万円や数億円といった多額のお金を貸すために、もしも万が一、返済が滞ったりした場合の担保として、不動産に対して抵当権という権利を付けます。
要するに、返済不能に陥った時に、勝手に不動産を売却されてしまわないように、法律上有効な権利を設定するわけです。それを表現したのが上記の図です。

2.「期限の利益」という言葉について

次に、住宅ローンに限らず全ての金融商品(ローン)というのは期限の利益が定められます。
例えば「5,000万円を、420回(35年)で返済する。」という契約の場合では、420回(35年)で返済するという「期限」を取り決めていることになります。

では「利益」とは?

例えばこんな事を想像したことありませんか?
きちんと約束通りに毎月返済をしているのに、例えば10年目、借入先の銀行から「420回払いと言ったけど、経営状況が厳しいので、残りを来月一括で返済してもらえませんか?」などと突然一方的に言われてしまう!?

そんな事を言われてしまっては、借りる側も「約束が違う!」と言って怒りますよね。

このような事が起こらないように、借りる側も約束通り、すなわち契約通りに返済期間を守られること、これを「利益」という言葉で表現しています。

貸す側も、借りる側も、金融商品を安心して契約できるように「期限の利益」という定めが存在するのです。

では逆に期限の利益を「失う=喪失する」ケースはあるのか!?

期限の利益喪失と任意売却の関係

期限の利益を「失う=喪失」するケース!?

長い年月の中で、何らかの事情によって「期限の利益を喪失」してしまう場合もあります。
つまり、約束を果たせなくなってしまうケースです。

先ほどもご説明しましたが、任意売却に陥ってしまう一般的に多い理由は住宅ローンの滞納が一定期間超過した場合などです。

そうなってしまうと、銀行は融資したお金を回収する為に「債権回収会社」や「保証会社」という回収専門の金融機関に債権(権利)を移行して、「債権回収会社」や「保証会社」が銀行に代わって住宅ローンの残金を回収いたします。

この時「債権回収会社」や「保証会社」は、抵当権を行使して「競売」による貸付金(住宅ローン)の回収が法律上可能なのです。

しかし、実は競売では、一般売却(通常売却)に比べて安く叩き売られてしまうというリスクも伴います。ちなみに競売が一般売却よりも安くなる理由については、私の先日記載したコラム「任意売却は安い!?」の中で詳しく説明しておりますので、こちらも是非ご覧ください。
→「任意売却は安い!?」

本来回収できるはずの金額よりも低い金額しか回収できなければ、ご契約者の方は更に不足分の返済を迫られますし、「債権回収会社」や「保証会社」も不足分を別の形で再び回収行為を行わなければなりませんので、競売は双方ともに損する可能性が否めません。

そこで、債務者つまり住宅ローン契約者と金融機関との間で「任意売却」という選択肢が生まれたのです。
金融機関が主体となりますが、不動産会社を通じて一般的な中古不動産として売却し、貸付金(住宅ローン)の返済に充ててもらうという方法です。

期限の利益を喪失すると、家を手放して住宅ローンの返済に充てなければならなくなってしまいます。その時に、競売によって安価で叩き売られてしまうよりも、任意売却によって適正な不動産価値で売却する方が、双方にとって望ましい形なのです。

何回分の滞納で「期限の利益」を喪失してしまうの!?

これは決まりがあります。
住宅ローン滞納による期限の利益喪失は「6回分/6か月分」を超えた時点で、期限の利益を喪失いたします。

厳密に言えば「6回分/6か月分」の滞納を超え、「債権回収会社」や「保証会社」に移行された時、概ね2か月以内に「任意売却」の申し出を行わなければ、粛々と「競売」の手続きが始まってしまいます。

なぜ、任意売却は金融機関が主体なのか?

本来であれば、抵当権を行使して競売による住宅ローン回収も可能です。
任意売却では、そもそもの目的は期限の利益を喪失してしまったご契約者の方の住宅ローン残金を回収することにあります。

しかし実は金融機関の立場では、任意売却をご決断された契約者に対して不利益になってしまわないように、より良い再スタートが実現できるように、という考え方が大前提としてあります。

また逆に任意売却によって契約者または介入する不動産会社が不正行為を行わないように抑制しなければならないという側面もあります。
例えば、二重契約などで金融機関側を騙して売却代金を詐取する、といった行為が実際にある為です。

適正な不動産売却を実施することで、回収の最大化を図り、ご契約者・金融機関共に最大限の利益を確保する。この為に、任意売却では金融機関側が主体となって売却までの全てを取り決めるのです。

では実際、金融機関は任意売却でどのような事を決めるのでしょうか?

販売価格の取り決め

金融機関ですから、全国の膨大な不動産データを蓄積しております。
まさか競売のように安価で販売してしまわないように、また、高過ぎて売れないといった事が起こらないように、金融機関側では対象不動産の時価相場を徹底的に調査した上で、販売価格を決定いたします。

売買代金の配分内容を決める

任意売却によって、必ずしも住宅ローンが全額返済できるとは限りません。例えば、住宅ローン残金は4,000万円に対して、不動産の時価相場は3,500万円だった場合、不動産売却の際には必ず諸費用などが発生いたしますので、3,500万円の中から、何をいくらまで控除承諾するのかを審議いたします。

具体的な内容(例)

  • 不動産会社の仲介手数料
  • 司法書士の登記手続き関連費用
  • 管理費等の滞納に関する費用
  • 税金等の差押解除に対する費用
  • 後順位抵当権者に対するハンコ代
  • 財団組入れに関する費用
  • 引越しに関する費用


このような費用に関して、具体的にいくらまで控除承諾するかを取り決めるのですが、間違っても「交渉」することによって金額が増減することはありません!

たまに、任意売却に関する専門業者さんのサイトなどを見ていると「交渉に強い」や「引越し代を確保します」といった嘘の記述を目にしますが、金融機関側では任意売却に関する控除費用はマニュアルで完全に取り決められている為に、交渉されたからと言って金額が増減することは一切ありません。所謂、おとり広告には騙されないように注意してください。

任意売却を依頼する不動産会社の選び方

さて、実際に任意売却を依頼する不動産会社は、どのように選べば良いのでしょうか?

まず大前提として任意売却の成功=不動産が売れるということです。

すなわち、優先順位として1番大切なのは買ってくれる方(買主)が信頼できそうな不動産会社ということであり、任意売却に詳しいかどうかは最優先ではないことを覚えておきましょう。

任意売却は売れて初めて成功です。

購入者側に立って考えると、怪しい感じの不動産会社では当然売れるまでに時間がかかりますので、あなたの延滞損害金は膨大に増え続け、どんどん損失が膨らんでしまいます。

また、売れないことをすぐに販売価格のせいにして、安易に販売価格ダウンを要求されると、これもまた損失が増えてしまいます。

ついでに余談ですが、任意売却に関する民間資格も要注意です。私も興味本位でいくつかテキストを拝見いたしましたが、問題そのものが間違っているなど、およそ正しい知識を証明できる資格とは思えませんでした。

何度も言いますが、任意売却は金融機関が主体となって取り決めるものです。すなわち、例えば私のように実際に金融機関側で任意売却や競売の審査・手続きに関する業務に長年従事していた者、では無い素人が監修したり作成した資格であれば、それは例えて言うならば、銀行で職員として融資等の審査や手続き経験のない者が、銀行ローンに関するアドバイス資格を作っているようなものであり、要注意が必要です。

買主側の立場に立ってチェックしよう!

  • 会社ホームページ
  • 店舗・事務所
  • 販売図面
  • SNS
  • スタッフの雰囲気

また、その会社が他に取り扱っている物件について、大手3大サイト(suumo、HOME'S、athome)全てに掲載しているかも必ずチェックし、掲載内容では「写真のセンス」「キャッチコピーのセンス」も要チェックです。

特に反響が1番多いのは「suumo」ですが、広告掲載料が1番高いのも「suumo」なのです。
大手や地元不動産会社では「suumo」に掲載することはもはや当たり前というのが不動産売買の市場です。もし「suumo」に掲載していない会社であれば、それは??少し疑った方が良いかもしれませんね。

任意売却Dr.では

手前味噌ではございますが、私たち任意売却Dr.では全ての要素を持ち合わせて万全な体制を整えております。
本コラムは、あくまでも「任意売却とは」についてご説明する場でございますので、細かく自己PRすることは控えさせて頂きますが、是非、弊社のホームページ等をご覧になって見て下さい。

まとめ

さて、不動産の任意売却についていかがだったでしょうか。
任意売却というのは、一般売却や競売とは異なり、金融機関主体の中で不動産会社を通じて実施する不動産売却である、ということをご理解頂けたかと思います。
また、住宅ローンに纏わる抵当権の仕組みや、金融機関側が取り決める内容とその理由についても知ってもらえたかと思います。

任意売却は、金融機関が主体となって取り決めて行う不動産売却です。
そして任意売却は、売れて初めて成功です。

本当は任意売却にならないことが良いのですが、もしも万が一、何らかの事情で任意売却をせざるを得ない場合で、何かのきっかけでこのコラムをご覧になられた方は、落ち着いて正しい知識を持って、より良い再スタートに向けて尽力してくれる不動産会社を選びましょう。

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山口剛平
専門家

山口剛平(住宅ローン返済・滞納に関するコンサルタント)

株式会社クラフトレジデンス

親族の住宅ローン返済・滞納に伴う任意売却、任意売却専門業者および大手債権回収会社での勤務という、任意売却に関わる3者の立場を全て経験。豊富な知識とノウハウを元に、最適なソリューションを提供する。

山口剛平プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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