任意売却の後、残った住宅ローンはどうなるの??
金融機関(債権回収会社)の実務とは
住宅ローン滞納した方に対して、金融機関(債権回収会社)では、様々な実務処理を行います。
もっとも、当時私の1ヵ月の業務について、参考図に表してみました。
■新規債務者の勧奨・方針決定
■任意売却希望者の物件調査・不動産会社審査
■任意売却実施中案件の販売管理
■任意売却で買主が確定した案件の決済審査
■競売手続き
■残ったローン返済に対する審査
■その他、法処理・研修等
毎月、25件前後の新規債務者、同じく25件前後を任意売却または競売に。常時100~120件を管理し、約5年間で延べ1500件を担当しました。
住宅ローン滞納原因の主な内訳
特に「収入減」については、転職や年金生活というケースが多く、年齢も50代を超える方々が非常に多いです。また、多くはバブルの高騰時期に購入した物件で、現在の価値とは乖離が大きく、任意売却後も多額の借金が残るケースが目立ちました。
安易な購入が多額の債務を背負う結果に・・・
例えば「病気・ケガ」については、購入後に適切な保険加入をしていなかった事から、マイホームを守る事が出来ず、任意売却に至ってしまうというケースがほとんどです。
そして何よりも、バブル崩壊後に購入された方で、任意売却を行っても多額の住宅ローンが残る方、こうなる1番の理由は「購入時に頭金が少ない」事です。
本来、購入時には諸費用とは別に、売買代金の1割は最低でも頭金として準備する事が大切です。
例えば、4000万円の物件購入で、諸費用が200万円だった場合には、200万円+400万円=600万円を現金で支払い、残りを住宅ローン利用にすれば、万が一、任意売却になってしまっても、多額の債務が残るという事はありません。
ここには正直、購入時の不動産会社の説明責任もあると思いました。
「病気・ケガ」も同様ですが、多額の住宅ローンを背負う時に、万が一のリスクに対して適正な保険加入や、適正な頭金の説明をするべきなのですね。
売却スピードの差は明確・・・
任意売却を行った場合、依頼先の不動産会社のタイプで売却スピードの差は明確でした。
これは回収する側よりも、債務者にとって非常に致命的な事です・・・
例えば、住宅ローンの元金が2,000万円残っていた場合、延滞損害金の発生は・・・
2,000万円×14.5%÷365日=約7,945/1日
1ヵ月では約25万円も膨れてしまいます。
任意売却専門店は、私が当時依頼をしていた大手またはFC・地元系の一流営業マンに比べて、平均2か月以上は売却が遅かったので、上記の計算では単純に50万円以上は債務が膨れるという事です。
例えば「引越し代」をと言われても、債権回収側では、認めようと思う不動産会社と、認める事は出来ないと思う不動産会社の違いは、このような部分にも理由があるのです。
任意売却の年間取扱い比率
大手不動産会社やFC地元系不動産会社は、年間に扱う売買取引の中で、任意売却の売買を扱うケースは平均して1~2割程度です。
その為、複雑な利害関係者との調整や、手間のかかる書類作成にも知識が無く、また何よりも売買価格が平均的に低い為に仲介手数料が安く、積極的に取扱わないという事が本音です。
逆に、大手系の中で任意売却を積極的に取扱う担当者は、最初から高く売却するつもりは無く、出来るだけ安くで買取業者に繋げる事が目的で、これも借金が多く残ってしまいます。
「悪質業者」から身を守ろう!
金融機関の実務経験の中で、首都圏を中心に1,000人を超える不動産会社の営業担当者と折衝を経験すると、素晴らしい営業マンもいれば、悪質な営業マンも沢山いました。
これは私のコラムなので、出来るだけ露骨に辛口に書きますが、住宅ローン問題に悩まれる方々にとって、とにかく私の親族や、私が金融機関で見た債務者のように「悪質業者」から騙されて多額の債務を残してしまう結果にだけはなって頂きたくない。
皆様が、より良い再スタートが実現出来る事、悪質業者から身を守る事が出来る事、それが私の願いです。
参考コラム「悪質業者」から身を守ろう!