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保護者のための成年年齢引き下げ講座2 ~18歳は自立した大人なのか?~

池見浩

池見浩

テーマ:消費者教育

こんにちは。消費者考動研究所代表 消費生活アドバイザーの池見です。

民法改正により、子どもたちは満18歳で成年になります。
成年になると、さまざまな法律行為を自分の意思・判断だけで行うことができるようになります。
その一方で、自分の法律行為の責任も自分で取ることが求められます。未成年者を保護する「未成年者取消」は使えません。契約トラブルにあった時は、その子が自分で状況を把握し、自ら相談機関に説明してアドバイスを受け、自分の価値判断で解決しなければなりません。

また、親権者の親権や法定代理権などは、18歳の誕生日を迎えた瞬間になくなります。
親が子どもの代理人として当然のように相手と交渉し解決することはできません。そうなると、子どもが18歳になる前に、社会の荒波の中を一人でしっかりと航海できるように準備する必要があります。

「未成年者取消」とはどういう制度?

契約は、契約当事者の一方の勧誘・申込みに対して、もう一方が「じゃあやりましょう」と合意する意思を表示したら成立します。法律的に言えば、「互いの意思の合致」です。一度契約が成立したら、お互いにその約束を果たす義務や権利が発生します。

でも、世の中には、契約する正しい意思決定自体が、能力的に不十分とされる方がいます。例えば、認知症で契約自体の理解が難しくなられた方、知識・経験が未熟な未成年者などが該当します。
これらの方々に、「契約をきちんと理解して実行しろ」というのは無理があります。民法では、こうした制限行為能力者が行って成立した契約を後から取り消すことができる保護ルールがあります。未成年者取消も、そのルールの一つです。

但し、親権者の承諾がない場合やおこづかいの範囲での契約や、「自分は18歳だ」などとうそをついて相手に信じ込ませた場合は対象外です。契約を取り消した後は、契約が無かった状態に戻す必要があります。商品を買ったのであれば、返品しなければなりません。但し、買った時の状態のものではなく、取り消した時点の現状のままOKです。

18歳になれば自立した大人になる?

ところで、今回の成年年齢引き下げの目的の一つに、若者の自立と社会参加の促進があります。
日本財団が全国の17歳から19歳の男女1000を対象に実施した意識調査によると、「あなた自身は、18歳の時点で、『成人』にふさわしい大人になったと思うか」との問いに対し、「子どものまま」が12.3%、「どちらかというと子どものまま」は39.8%と、自分自身を子どもと評価した人が半数以上でした。一方で、「大人になった」と回答したのはわずか12.1%でした。

*出典 日本財団「18歳意識調査」より


一般的に「自立」とは、社会的・経済的に他人に依存せず、自分自身で正しく価値判断し、責任を持って行動できる状態を指します。その状態は「大人」とも言えます。18歳の誕生日を迎えた瞬間に、急に「自立」することはまずありません。安心して社会の荒波に送り出すには、幼いころから「成年年齢」を見据えて、子どもの自立を育む対策が必要です。

小さい頃から「考動力」を身につける

例えば、子どもを叱る時、ついつい「だめでしょ!」と怒るだけで従わせること、ありませんか?(もちろん、そうせざるを得ない時もありますが。。)

一方的に怒られていると、「怒られるからやってはいけない」⇒「怒られなければやっても良い」と思うようになりがちです。相手の顔色を判断基準にするような価値判断が定着すると、「法律やルールを守らなくても、誰かにバレなければ良い」と考え方にも繋がってしまいます。

子どもでも大人でも、何か行動する時は理由があります。
何か注意する時、「どうしてやったの?」と子どもの説明に耳を傾けて、一緒に考えることはとても大事です。自分の考えや行動を説明し、相手から良いところは認めてもらい、またはやってはダメな理由を聞くことで、保護者と物事の価値判断基準を共有できます。その経験の積み重ねが、「きちんと考えて選択し、責任と自信を持って行動する」力=「考動力」の育成になります。

小さい頃から契約トラブルに遭いにくい成年になる準備を!

私たちは、毎日何時に起きて、誰とどんな話をし、何が良くて悪いのかなど、常に「選択」しながら生きています。それは契約も同じ。どの交通手段を使い、どのお店で何を買うのか。スマホでどのくらいのギガ数を使うか、どんな方法で支払うのかなど、選択する機会や数・種類は数え切れません。

契約トラブルは、消費者と事業者の知識・情報・交渉力の格差によって起きます。当然、一般的には事業者の方が勝っていて、契約相手の消費者に十分説明する義務があります。
しかし、それだけではトラブルは防げません。私たち消費者一人ひとりも、その契約をしてよいのか否か、その都度しっかりと情報を集めて、よく考えて正しく選択判断する必要があります。
その「情報を集めて正しく選択判断」できるようになること、これが即ち自己責任で自立して契約できるようになることです。

18歳にとたんに、その能力が身に付くことはあり得ません。小さい頃から、成年になるための準備が必要です。例えば、限られたお小遣いの中で、その欲しいものを買うべきかどうか。何かトラブルになった時、どうしたら良い解決ができるのかなど、子どもが考えて判断する機会を作ることをお勧めします。その都度の成功と失敗の体験を積み重ねが、「考動力」になり、18歳を迎えた時に「自立した大人」として、適切な選択判断でトラブルを回避し、自信を持てる人になることでしょう。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました

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池見浩
専門家

池見浩(消費生活アドバイザー)

消費者考動研究所

衣食住から法律、BtoCビジネスのコンプライアンス、消費者志向経営、エシカル消費、SDGsまで、幅広い専門知識で消費生活全般のトラブルに中立的に対応。教育現場や企業研修、メディアなどでの情報発信も行う

池見浩プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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