デジタルガバナンス・コードとは?DX認定制度を構成する4つの柱を解説

上村公彦

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テーマ:DX

「デジタルガバナンス・コード」という言葉をご存知ですか?デジタルガバナンス・コードとは、DX認定制度のために設けられた認定基準のことです。

この認定基準は大企業や中小企業だけでなく、個人事業主などの一般事業者も対象です。企業DXを推進する上で重要な概念であるため、これからDX化を目指す方は理解しておくことをおすすめします。

本投稿では、デジタルガバナンス・コードの重要ポイント、構成する4つの柱を解説します。最後までご覧になることで、デジタルガバナンス・コードを深く理解できた上で、DX推進において重要なポイントがわかるはずです。

デジタルガバナンス・コードとは?

デジタルガバナンス・コードとは?
デジタルガバナンス・コードとは、DX認定制度のために設けられた認定基準のことです。

経済産業省による新たな社会構想「Society5.0」を目指す上で重要な概念であり、「企業経営におけるデジタル技術による社会変化への対応を捉え、ステークホルダーとの対話を基盤として、経営者に求められる企業価値向上に向けて実践すべき原則」と提言しています。

デジタルガバナンス・コードの基本事項は、国が定めた「情報処理促進法」に対応しており、経営者が企業価値を高めるために実践すべき内容がまとめられています。

この認定基準の対象となるのは大企業や中小企業だけでなく、個人事業主などの一般事業者も対象です。国はデジタルガバナンス・コードによって、各事業者へ自主的なDX推進を促そうとしています。

デジタルガバナンス・コードにおける重要なポイント

デジタルガバナンス・コードにおける重要なポイント
デジタルガバナンス・コードは、2020年11月に経済産業省が公表した「デジタルガバナンス・コード」において、以下3つのポイントが重要だと提言されています。

  1. ITシステムとビジネスを一体的に捉え、新たな価値創造に向けた戦略を描いていくこと
  2. ビジネスの持続性確保のため、IT システムについて技術的負債となることを防ぎ、計画的なパフォーマンス向上を図っていくこと
  3. 必要な変革を行うため、IT 部門、DX 部門、事業部門、経営企画部門など組織横断的に取り組むこと

特に企業全体の組織構造や文化の改革、中長期的な投資を行う観点から、経営者の積極的なコミットメントが必要不可欠だとされています。

それに対し、国内企業の多くはDX推進に遅れを取っており、ほぼすべての業界がデジタル化の課題を抱えています。海外と比べるとその遅れは顕著であるため、国はさらなるDX推進を目指してデジタルガバナンス・コードを掲げているのです。

なお、企業のDX推進における政府の考え方を詳しく知りたい方は「DX推進における政府政策に対する4つの考え方とは?政府の方向性を見定めよう!」をご参考ください。

デジタルガバナンス・コードを構成する4つの柱

デジタルガバナンス・コードを構成する4つの柱
デジタルガバナンス・コードの重要ポイントは理解できたでしょうか?続いて、認定基準を構成する4つの柱を説明します。デジタルトランスフォーメーションをより詳しく理解できるはずです。

柱1.ビジョン・ビジネスモデル

デジタルガバナンス・コードを構成する柱1つ目は、「ビジョンやビジネスモデル」です。この柱について、経済産業省は以下の考えを提示しています。

「企業は、ビジネスとITシステムを一体的に捉え、デジタル技術による社会および競争環境の変化が自社にもたらす影響(リスク・機会)を踏まえた、経営ビジョンの策定および経営ビジョンの実現に向けたビジネスモデルの設計を行い、価値創造ストーリーとして、ステークホルダーに示していくべきである。」

つまり、経営ビジョンの策定とビジネスモデルの構築を推進し、価値創造ストーリーをステークホルダーに発信すべきだとされています。

また、この柱では「デジタル技術による社会および競争環境の変化の影響を踏まえた経営ビジョンおよびビジネスモデルの方向性を公表している。」という認定基準になっています。

柱2.戦略

デジタルガバナンス・コードの柱2つ目は「戦略」であり、先程のビジネスモデルを実現するための方法を意味しています。経済産業省の考えは以下のとおりです。

「企業は、社会および競争環境の変化を踏まえて目指すビジネスモデルを実現するための方策としてデジタル技術を活用する戦略を策定し、ステークホルダーに示していくべきである。」

つまり、DXを推進する企業は貴重な経営資産である情報を活用し、その上で戦略の策定が望ましいとされています。

また、戦略の柱としての認定基準は「デジタル技術による社会および競争環境の変化の影響を踏まえて設計したビジネスモデルを実現するための方策として、デジタル技術を活用する戦略を公表している。」です。

なお、この戦略の柱は2つの方策に分けられており、具体的な考え方と認定基準が記載されています。それぞれの詳細については下記をご覧ください。

戦略①:組織づくり・人材・企業文化に関する方策

【柱となる考え方】

「企業は、デジタル技術を活用する戦略の推進に必要な体制を構築するとともに、組織設計・運営の在り方について、ステークホルダーに示していくべきである。その際、人材の確保・育成や外部組織との関係構築・協業も、重要な要素として捉えるべきである。」

【認定基準】

「デジタル技術を活用する戦略において、特に、戦略の推進に必要な体制・組織に関する事項を示している。」

戦略②:ITシステム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策

【柱となる考え方】

「企業は、デジタル技術を活用する戦略の推進に必要な IT システム・デジタル技術活用環境の整備に向けたプロジェクトやマネジメント方策、利用する技術・標準・アーキテクチャ、運用、投資計画などを明確化し、ステークホルダーに示していくべきである。」

【認定基準】

「デジタル技術を活用する戦略において、特に、IT システム・デジタル技術活用環境の整備に向けた方策を示している。」

柱3.成果と重要な成果指標

デジタルガバナンス・コード3つ目の柱として、「​​成果と重要な成果指標」があげられます。この柱では戦略の達成度を測定するような指標が定められており、外部に公表されているかどうかが認定基準になります。経済産業省の考えは以下のとおりです。

「企業は、デジタル技術を活用する戦略の達成度を測る指標を定め、ステークホルダーに対し、指標に基づく成果についての自己評価を示すべきである。」

成果と重要な成果指標は具体的に、KPIが最終的に財務的な成果につながることが大切だとされます。認定基準としては、「デジタル技術を活用する戦略の達成度を測る指標について公表してい ること。」です。

柱4.ガバナンスシステム

最後に紹介するデジタルガバナンス・コードの柱は「ガバナンスシステム」です。このガバナンスシステムは、経営者または取締役会のリーダーシップやコミットメントを表しています。なお、経済産業省の考えは以下をご参考ください。

「経営者は、デジタル技術を活用する戦略の実施に当たり、ステークホルダーへの情報発信を含め、リーダーシップを発揮するべきである。」

「経営者は、事業部門(担当)や IT システム部門(担当)等とも協力し、デジタル技術に係る動向や自社のITシステムの現状を踏まえた課題を把握・分析し、戦略の見直しに反映していくべきである。また、経営者は、事業実施の前提となるサイバーセキュリティリスク等に対しても適切に対応を行うべきである。」

【取締役会設置会社の場合】

「取締役会は、経営ビジョンやデジタル技術を活用する戦略の方向性等を示すにあたり、その役割・責務を適切に果たし、また、これらの実現に向けた経営者の取組を適切に監督するべきである。」

認定基準は「経営ビジョンやデジタル技術を活用する戦略について、経営者が自ら対外的にメッセージの発信を行っていること。」と定められています。

デジタルガバナンス・コードの認定を受けるメリット・審査

デジタルガバナンス・コードの認定を受けるメリット・審査
最後に、デジタルガバナンス・コードの認定を受けるメリットと審査を解説します。デジタルガバナンス・コードの内容は、DX推進する企業によっては必要なものばかりです。

DX推進をして認定制度を受けることで、国から「DX推進を積極的に取り組んでいる事業者」というお墨付きがもらえます。ホームページで企業名が公開されるため、企業としての信用性に大きく影響するはずです。

さらに、デジタルガバナンス・コードの認定を受けているということは、企業のDX推進が実現しているということなので、結果的に経営規模の拡大につながるでしょう。

審査の流れ

DX認定制度はインターネットを使ってWEBから申請します。ただし、事前に行政サービスのログインに必要な「GビズID(gBizID)」を取得し、「DX推進ポータル」にログインできるようにしておく必要があります。

なお、デジタルガバナンス・コードの申請書類は、IPAのホームページからダウンロードできます。また、申請書一式をDX推進ポータルから提出した場合は、基本的に60日程度で審査結果が通知されます。

まとめ

本投稿では、デジタルガバナンス・コードの重要ポイント、構成する4つの柱を解説しました。

デジタルガバナンス・コードはDX認定制度のために設けられた認定基準であり、DX推進に必要な内容がまとめられています。この認定基準を構成するのは4つの柱で、それぞれに経済産業省の考えが記載されています。

これからDX推進を目指す方は、ぜひ本記事で解説したデジタルガバナンス・コードを理解し、計画的にDX化を進めていきましょう。

なお、企業DXの進め方を詳しく知りたい場合は「社内DXを推進する具体的な5つの方法!導入する目的と課題点を解説」をご覧ください。DX推進の手順については「既存企業にDXを導入する手順!5つのステップでわかりやすく解説」を確認しましょう。

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上村公彦
専門家

上村公彦(システムコンサルタント)

株式会社クラボード

新規事業のためのシステムコンサルティングおよびシステム・アプリ開発で豊富な実績。ベンチャー企業での事業開発経験で培われた「提案力」を発揮し、ニーズに対応。経営者目線でIT戦略を導きます。

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