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「SAP」や「ERP」という言葉を知っていますか?SAPとは、ヨーロッパ最大級のソフトウェア開発会社の名称で、ERPは企業経営でベースとなる資源要素を適切に分配し、有効活用する計画や考え方を指します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)を遂行する上では非常に重要となる概念であるため、これから自社のDX化を進める方はメリット・デメリットを理解しておく必要があります。
そこで本投稿では、SAPとERPについて、構成する7つのモジュールを解説します。最後までご覧になることで、SAPとERPを詳しく理解できた上で、DXとの関係性が明確になるはずです。
SAPとは?
SAP(エスエーピー)とは、ヨーロッパ最大級のソフトウェア開発会社の名称であり、「Systemanalyse und Programmentwicklung」から会社名が来ています。
SAPはよく「サップ」と呼ばれますが、ドイツ語でネガティブな意味を持つため「エスエーピー」が正式な呼び方です。
一般的には提供されているソフトウェアを指すことが多いですが、正確には会社名を意味します。SAP社はさまざまなソフトウェアを開発しており、1973年には最初のERPとなった「R/1」を開発しました。
このソフトウェアがリリースされてから40年以上に渡り、SAPという企業は進化し続けています。ちなみに、ERPシステムは経営資源を一元管理するためのソフトウェアであり、多くの企業で導入されています。
ERPとは?
ERPとは、「Enterprise Resource Planning」の略語であり、企業経営でベースとなる資源要素「ヒト・モノ・カネ・情報」を適切に分配し、有効活用する計画や考え方のことです。
ERPは日本語で「イーアールピー」と呼ばれるのが一般的です。また、ERPは「企業資源計画」と言われることもありますが、現在では「基幹系情報システム」を表すことが多く、企業の情報戦略に欠かせない概念として活用されています。
SAPの歴史
続いて、SAPの歴史についてみていきましょう。SAPはもともと、「Systeme, Anwendungen und Produkte in der Datenverarbeitung」というドイツ語の名称でしたが、2005年からは「SAP」が正式名称となりました。
SAPは1972年にドイツで創業された企業です。当時はドイツのエンジニア5名で、「自分たちの理想とする新しいシステム開発」を目指して起業しました。
翌年には最初のERPとなる「R/1」が開発されますが、発想が画期的すぎて世間からは受け入れられませんでした。しかし、その後に発表された「R/2」は扱いやすいよう開発されたため、その年ERPは大ブレイクを果たします。
ドイツを始めとするヨーロッパにERPが急速に広がり、ヨーロッパでは有名なソフトウェアブランドになりました。また、1992年にはERPの「R/3」がリリースされ、その後は従業員数が約100,000名の大企業にまで成長しました。
SAPを構成する7つのモジュール
ここまで、SAPの基礎概要と歴史を解説しました。このSAPは7つのモジュールによって構成されています。モジュールを簡単に表すと、SAPを構成するパーツのことです。それぞれの機能性について詳しくみていきましょう。
財務会計(FI)
SAP FI「FInancial Accounting」は財務会計モジュールのことであり、ERPを活用するほとんどの企業がこのモジュールを扱います。ERPは会計システムから始まったこともあり、SAP FIはSAPの中心的な役割を果たします。
SAP FIの機能としては、社外向けの財務諸表を出すための機能が備わっています。具体的には以下のように分類されています。
- 総勘定元帳(FI-GL):企業の取引を記録するための機能
- 債権管理(FI-AR):得意先補助元帳を作成するための機能
- 債務管理(FI-AP):仕入先補助元帳を作成するための機能
- 固定資産会計(FI-AA):有型資産から無形資産まで固定資産として管理する
そのほか複数のSAP FIが存在しており、企業によってはさまざまなモジュールを活用しています。
管理会計(CO)
SAP CO(Controlling)は管理会計モジュールで、原価を管理する機能を有します。ERPでは購買・生産・販売のデータをもとに、標準原価計算をすることが可能です。
また、SAP COと連携させることで実際原価の計算を実施できます。一般的な企業はERPを用いた標準原価計算を行っていますが、実際原価の計算をすることは少ない傾向があります。
そこでSAP COモジュールを用いることで、実際原価の計算や原価管理を実施できます。なお、SAP COのサブモジュールとしては以下の3つがあげられます。
- 間接費管理(CO-OM):間接費を集計して各直接部門に配賦管理する
- 製品原価管理(CO-PC):標準原価や実際原価の計算をして原価差異の分析をする
- 収益性分析(CO-PA):多次元で収益性を分析する
販売管理(SD)
販売管理モジュールはSAP SD(Sales and Distribution)で表され、受注・出荷・請求のプロセスを実行します。また、特殊な販売プロセスにも対応しているため、さまざまなケースで柔軟に活用可能です。
さらに、SAP SDでは受注・出荷・請求のいずれでも請求書を発行できるため、販売業務の改善にも期待が持てます。
購買管理/在庫管理(MM)
SAP MM(Material Management)は購買管理/在庫管理モジュールであり、発注依頼・購買発注・入庫・請求書照合の順番に実施します。
在庫管理の機能もあるため、社内の保管場所にどれくらいの在庫があるのか、在庫資産はいくらなのかなどを把握できます。
物流管理(LE)
SAP LE(Logistics Execution)は物流管理モジュールを指します。SAP SDの出荷プロセスの詳細化と倉庫管理をするモジュールです。
例えば、出荷管理では輸送日程計画や輸送経路決定、倉庫管理ではプラント間の転送指示や在庫転送を行います。SAP LEによって得意先や自社の物流在庫の最適化を図れます。
生産計画/管理(PP)
SAP PP(Production Planning and Control)は、生産計画/管理モジュールを意味します。生産計画・製造指図・製造実績などのプロセスを実施します。SAP PPを用いることで、正確な生産計画や在庫管理を行えます。
品質管理(QM)
品質管理はSAP QM(Quality Management)で表します。品質計画・品質検査・使用決定の順番にプロセスを実施します。SAP QMを使用することで、高度な在庫管理を実現できます。
SAP ERPを導入するメリット・デメリット
続いて、SAP ERPを導入するメリット・デメリットを解説します。今後SAPを導入するべきかどうかの適性判断ができるでしょう。
メリット
SAP ERPを導入する最大のメリットは、社内のデータをリアルタイムで一元管理できることです。一元管理ができることで経営の合理化が可能であり、同時に企業経営をスムーズに進められます。
企業経営を効率的に進めるためには、経営陣の判断力を早めることがキーポイントとなります。SAP ERPを用いれば情報管理が容易になるため、経営陣の判断材料を素早く用意できるのです。
また、SAP ERPは担当する従業員に対しても利点があります。社内の情報管理はSAP ERP1つ管理すればすべて事足りるため、システムやデータの管理がスマートになり、夜間パッチ処理なども不要になります。
そのことから、システム担当者の労働負担が軽減し、生産性の向上につながるメリットも見込めます。
デメリット
SAP ERPのデメリットは扱いが容易ではない点です。SAP ERPはインストールしてもすぐに稼働できるわけではなく、導入プロセス前の要件定義が必要です。
また、業務プロセスに合わせる作業が必要になるため、専門知識や扱うためのスキルが求められます。さらに、一般的なソフトウェアに比べて総合的なコストが高額になりやすく、本稼働までに時間を要してしまいます。
そのほか、SAPのプログラムをユーザー側で変更するとサポートを受けられないなど、いくつかのデメリットが考えられます。
CRM・SFA・DXとの違い
最後に、似たような言葉であるCRM・SFA・DXそれぞれの違いを解説します。SAP ERPの理解がさらに深まるはずです。
CRM
CRMとは「Customer Relationship Management」の略語で、顧客情報を管理するシステムのことです。
CRMはフロントオフィス業務を管理する一方、SAP ERPはバックオフィスをメインに管理します。フロントオフィス業務はERPに含まれる場合もありますが、CRMではより詳細な情報を管理できます。
SFA
SFAとは「Sales Automation」の略称であり、組織的な営業などを実現するソリューションのことを指します。SFAの機能もERPに含まれる場合があるものの、営業などの実現をメインに扱っているSFAとは専門性が大きく異なります。
DX
DXは「Digital Transformation」の略称で、デジタル技術を活用したサービス・ビジネスモデルの変革を意味します。ERPはDXを実現するためのソリューションの1つに過ぎないため、この場合は概念の粒度が異なります。
まとめ
本投稿では、SAPとERPについて、構成する7つのモジュールを解説しました。
SAPはソフトウェアそのものを指すことが多いですが、正確には会社名を意味します。最初のERPとして「R/1」を開発したものの、当時はあまりヒットしませんでした。しかし、大衆受けするシステムとして「R/2」が市場に投入され、ERPは大ブレイクを果たしました。
SAPと一言でいっても7つのモジュールで構成されており、それぞれ役割が大きく異なります。いま話題のDXとも関連性が深い言葉であるため、自社のDXを推進する予定がある方は、SAPとERPについて理解しておきましょう。
なお、DXに関して詳しく知りたい方は「社内DXを推進する具体的な5つの方法!導入する目的と課題点を解説」をご参考ください。