いま話題のモダナイゼーションとは?実行方法やDXとの関係性を解説

上村公彦

上村公彦

テーマ:DX

最近注目されている「モダナイゼーション」という言葉を知っていますか?モダナイゼーションは、「近代化」や「現代化」という意味を持ちます。ビジネスやIT分野においては、システムや設計の「置き換え」という意味で活用されています。

このモダナイゼーションはDX(デジタルトランスフォーメーション)との関係性も深く、ビジネスを手掛ける上では必要不可欠な概念の1つです。言葉の意味を深く理解しておくことで、自社のDX推進に役立てることができるでしょう。

そこで本投稿では、モダナイゼーションが注目されている理由、実行方法や成功させるためのポイントを解説します。最後までご覧になれば、自社のモダナイゼーションをうまく進められるはずです。

モダナイゼーションとは?

モダナイゼーションとは?
モダナイゼーション(modernization)は、「近代化」や「現代化」という意味を持ちます。ビジネスやIT分野においては、企業で稼働しているソフトウェアやハードウェアを、最新のシステムや設計に置き換えることを意味します。

モダナイゼーションはIT分野でよく使われる言葉であるため、「ITモダナイゼーション」とよく呼ばれます。最近ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が重要視されていることもあり、モダナイゼーションに注目が集まっています。

マイグレーションとの違い

モダナイゼーションとよく似た言葉で「マイグレーション(Migration)」があります。このマイグレーションは「移行」という意味を持ち、ビジネス・IT分野では既存システムを新しいシステムへ移行させることを指します。

モダナイゼーションは既存システムを移行するのではなく、まったく新しいシステムに置き換えてからデータを移します。一方、マイグレーションは既存システムのIT資産を移行した上で、新しいシステムを形成します。

なお、マイグレーションはモダナイゼーションよりも古い概念であり、2000年代によく使われていたとされます。

モダナイゼーションはなぜ注目されているのか

モダナイゼーションはなぜ注目されているのか
最近、モダナイゼーションが各業界で注目されています。なぜこれほどまでに注目され始めたのでしょうか?

注目される大きな要因となったのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進です。2018年に経済産業省は、「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」において、2025年に訪れる日本企業の問題点を提言しました。

その内容については、「日本企業は2025年までにデジタル技術を活用して既存システムの問題を解決し、DX化を実現できなければ日本国内で最大12兆円もの経済的損失が生じる」というものです。

このレポートで重要視されているDXは、デジタル技術を活用したサービス・ビジネスモデルの変革を指す言葉です。DXを実現させるためには、企業の既存ITシステムの改善や再編成が重要であるため、モダナイゼーションと深い関係性を持ちます。

また、企業のDX推進では既存のITシステムが問題になるケースが多く、この問題を解消して新しいシステムを構築する際にモダナイゼーションが用いられます。

つまり、経済産業省が推奨する企業のDX化を実現させるためには、モダナイゼーションの活用がかなり重要であり、DXと掛け合わせて今後さらに当たり前の概念として普及するでしょう。

モダナイゼーションを実行する5つの方法

モダナイゼーションを実行する5つの方法
ここまで、モダナイゼーションが注目されている理由を解説しました。続いて、このモダナイゼーションを実行する方法を5つに分けてみていきましょう。

方法1.リドキュメント

モダナイゼーションの実行方法1つ目は、システム情報を可視化する「リドキュメント」です。既存システムの情報やノウハウを共有したいときに重要となる方法であり、ITシステムの基本仕様などをドキュメントとして可視化します。

リドキュメントはあくまで情報を共有するだけなので、モダナイゼーションの中でも比較的に簡単な方法です。関係者間でITシステムの情報を共有することで、システムのブラックボックス化を防止できるほか、必要以上に情報が外部に流出することがありません。

また、ドキュメント化する際に既存システムの内容を整理できる利点もあります。「既存システムの整理に時間がかかりすぎる」というトラブルには注意しましょう。

方法2.リファクター

モダナイゼーションを実行する上では「リファクター」も重要です。リファクターは「リファクタリング」とも呼ばれ、システムの内部構造を現在の状況に対応できるように最適化します。

リファクターによって内部構造を対応させることで、無駄なコード読み込みをなくし、誰でもわかりやすいように改善します。しかし、あくまでリファクターは内部構造をシンプルにするだけなので、不具合の調整や機能追加などは行いません。

方法3.リプレース

モダナイゼーションを実行する方法として、既存システムから新しいソフトウェアに移行する「リプレース」があげられます。リプレースによって業務構造を根底から見直すことで、サービス・ビジネスモデルの変革に期待が持てます。

また、リプレースは業務構造の見直しで既存の業務プロセスが改善されるため、業務の効率化や生産性の向上が実現します。ただし、リプレースは多大なコストと労力を必要とするので注意しましょう。

方法4.リライト

「リライト」はITシステムの古い開発言語を新しいものに書き換える方法です。コード変換ソフトなどを用いて、レガシーシステムにおける既存機能はそのままで、より使いやすい開発言語に移行します。

リライトすることによって、リプレースにかかるコストを抑えられるほか、新しいデジタル技術にも対応できます。また、セキュリティ性の向上が見込めるなど、さまざまなメリットに期待が持てます。

しかし、リライトによって開発言語を書き換えたとしても、基本構造はそのままなので最適化されるとは限りません。さらに、リライトを実行するにあたっては、専門スキルを持ったデジタル人材が必要になります。

方法5.リホスト

モダナイゼーションを実行する方法5つ目は、サーバーやOSなどITインフラを刷新する「リホスト」です。リホストではアプリケーションやデータといった要素を別環境へ移行します。

既存システムを移行するという点から、リホストをするにあたってはあまり手がかからないため、コストを抑えて素早く実行できるメリットがあります。

ただし、レガシーシステム自体をリプレース・リライトするわけではないため、新しいデジタル技術を活用しづらく、業務効率化が限定的になるリスクも考えられます。

モダナイゼーションを成功させるための3つのポイント

モダナイゼーションを成功させるための3つのポイント
モダナイゼーションの実行方法については理解できたと思います。しかし、うまく実行できるイメージが湧かないのではないでしょうか?

それもそのはず、モダナイゼーションを実行するにあたっては高度な技術が必要であり、同時に成功させるためのポイントがあります。そこで本項では、モダナイゼーションを成功させるためのポイントを3つみていきましょう。

ポイント1.初期段階の体制構築に注力する

モダナイゼーションを成功に導くためには、初期段階の体制構築に注力しましょう。モダナイゼーションを進めるにあたっては、最初の体制構築が最も重要であるためです。

例えば、実行にどれくらいの予算をかけるのか、デジタル人材は何人確保するのか、どの方法から始めるべきなのか、といったことがあげられます。

これら体制構築を慎重に決めておかないと、プロジェクトを進行する過程で何かしらの問題が発生し、スケジュールの遅延や運用コストの増幅につながりかねません。トラブルを避けてスムーズに実行するためにも、初期段階の体制構築に注力しましょう。

ポイント2.既存システムを理解した上で進める

モダナイゼーションを実行する際には、既存システムを理解した上で進めることも大切です。既存システムがよくわからない状態で進めてしまうと、業務やシステムのブラックボックス化に発展する恐れがあるためです。

多くの企業は既存業務を理解しているようにみえて、実はほとんどの業務を把握できていないことがあります。これは、普段からシステムや業務内容をうまく共有できていないことが原因です。

特に帳票系やデータ連携系は、独自のプログラムが設定されている可能性があるため、モダナイゼーションを実行した段階でトラブルが生じるリスクがあります。トラブルを避けて安全に実行するためにも、社内全体で既存システムを理解しておきましょう。

ポイント3.実行する対象を決めておく

モダナイゼーションを取り進める前に、実行する対象をあらかじめ決めておきましょう。モダナイゼーションと一言で言っても、実行する対象はさまざまです。定まっていない状態で実行してしまうと、既存システムの構造化に時間がかかり、プロジェクトが途中で破綻するリスクがあります。

なお、モダナイゼーションの実行が初めてで技術的にも自信がない場合は、既存システムの一部だけを刷新するなど、できることから始めるスモールスタートをおすすめします。対象が広ければ広いほど得られる効果は大きくなりますが、その分実行する際に多大なコストと労力が必要になります。

まずは実行する対象をしっかり定めておき、できることから少しずつモダナイゼーションを始めていきましょう。

まとめ

本投稿では、モダナイゼーションが注目されている理由、実行方法や成功させるためのポイントを解説しました。

モダナイゼーションとは、ソフトウェアやハードウェアを最新のシステムや設計に置き換えることを意味します。マイグレーションとよく似ている言葉ですが、システムへのアプローチが大きく異なります。

モダナイゼーションを実行する方法は大きく分けて5つありますが、それぞれ難易度や必要コストが違うため注意しましょう。これから実行する方は、ぜひ本記事で解説した成功するためのポイントを参考にし、慎重にモダナイゼーションを進めていきましょう。

なお、モダナイゼーションと関係性の高いDXについては「世界的に注目されているDXとは?ビジネスで役立つ基礎知識をわかりやすく解説」をご参考ください。

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上村公彦
専門家

上村公彦(システムコンサルタント)

株式会社クラボード

新規事業のためのシステムコンサルティングおよびシステム・アプリ開発で豊富な実績。ベンチャー企業での事業開発経験で培われた「提案力」を発揮し、ニーズに対応。経営者目線でIT戦略を導きます。

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