Mybestpro Members

上村公彦プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

破壊的な発想を生み出す「SFプロトタイピング」とは?現代ビジネス・DXとの関係性

上村公彦

上村公彦

テーマ:DX

「SFプロトタイピング」という言葉をご存知ですか?SFプロトタイピングとは、サイエンス・フィクションの発想を持ち、未来に向けたビジョンを探求する手法のことです。

あまり聞き慣れない言葉ですが、現代のビジネスやDX(デジタルトランスフォーメーション)と非常に相性が良い手法の1つです。SFプロトタイピングを深く理解すれば、画期的なサービス・商品を生み出すきっかけにもなります。

そこで本投稿では、SFプロトタイピングの基礎概要やメリット、実行方法やDXとの関係性について解説します。「企業のDX推進を予定している」「いままでとは少し違った思考でビジネスを展開したい」という方はぜひ参考にしてみてください。

SFプロトタイピングとは?

SFプロトタイピングとは?
SFプロトタイピングとは、サイエンス・フィクションの発想を持ち、未来に向けたビジョンを探求する手法のことです。この手法は2010年頃、インテルの未来研究者である「ブライアン・デビッド・ジョンソン」氏によって導入されたメソッドです。

急激に進化する科学技術が未来に及ぼす未知の影響や結末など、まったく新しい可能性を考える目的でSFプロトタイピングは作られました。また、特定分野における未来予測シナリオからインスピレーションを得ることで、現在の物事や問題に対して活用することを得意としています。

上記のプロセスを通じて、「いま何をすべきか」「どんな未来を目指すべきか」というビジョンの策定に役立てることが可能です。そのため、このSFプロトタイピングはビジネスで有効活用できます。

SFプロトタイピングの重要ポイント

このSFプロトタイピングの重要なポイントとしては、現実の科学技術をもとにしながらSFの発想で未来シナリオを予測する点があげられます。

例えば、多くの方がイメージするであろう「SFのワープ技術」「宇宙船」などが突然登場するわけではありません。SFプロトタイピングでは、現実と虚構の両側面を考慮した未来予測を行っています。

つまり、架空の設定を採用して意味不明な論理を展開しているようにみえて、「実は筋がとおっている」ということが多い手法なのです。科学技術が未来に及ぼすインパクトを占う点が従来の手法と異なっています。

SFプロトタイピングを活用する主なメリット

SFプロトタイピングを活用する主なメリット
前項ではSFプロトタイピングの基礎概要を解説しました。続いて、SFプロトタイピングのメリットをみていきましょう。SFプロトタイピングが現代において有効である理由がわかるはずです。

SFプロトタイピングを活用する主なメリットは、未来のあるべき姿から逆算することにより、これまでになかった新たなエッセンスを生み出せることです。

具体的にビジネスの場面でSFプロトタイピングを考えてみましょう。ある企業は競合他社と同じようなサービス・商品を展開していたとします。同じようなサービス・商品を展開していることから、売上が爆発的に伸びることはありません。

しかし、SFプロトタイピングを活用することで現状は大きく変わります。SFプロトタイピングの活用によって、いままでになかった画期的な近未来的サービスを立案できます。それは既存顧客に新しい価値を生み出し、競合他社より経営を一歩リードできるでしょう。

このように、SFプロトタイピングを活用することで、これまでになかった画期的なエッセンスを生み出すことが可能です。

バックキャスティングとフォアキャスティング

SFプロトタイピングを有効活用するためには、「バックキャスティング」と「フォアキャスティング」を理解しておく必要があります。

バックキャスティングとは、現在から未来に向かって考えるのではなく、未来のあるべき姿から逆算する思考法のことです。SFプロトタイピングはこのバックキャスティング的な手法だといえます。

一方、フォアキャスティングという言葉は、バックキャスティングとは真逆の意味を持ちます。多くの企業が実践してきた思考法の1つであり、現状から「どう改善するか」「何をやるのか」を模索するため、高確率で結果の出る思考法だといえます。

しかし、フォアキャスティングの考え方では確実性のある結果しか望めません。新しいサービス・商品を生み出すには不向きな考え方なのです。

そこで、SFプロトタイピングのようなバックキャスティングの考え方が必要となります。先にSF的なビジョンを構築しておくことで、ほかのビジネスモデルにはないサービス・商品を生み出すことが可能です。

SFプロトタイピングは現代のビジネスに活用できる

SFプロトタイピングは現代のビジネスに活用できる
ここまで、SFプロトタイピングのメリットについてお話しました。前項のメリットを踏まえて考えると、SFプロトタイピングは現代のビジネスに活用できます。むしろ、いまの時代と相性がピッタリの手法ともいえるでしょう。

現代では情報が民主化していることもあり、VUCA(V=変動性、U=不確実性、C=複雑性、A=曖昧性)の時代といわれています。その時代においてさまざまな顧客ニーズに対応するためには、競合他社に差をつけて新たなビジネスモデルを展開する必要があります。

多くの企業は目の前の問題解決に注力しますが、それでは新しいサービス・商品は一向に生まれません。また、課題が存在しない場面で従来の考え方を用いてしまうと、いずれにせよ価値が生まれづらくなります。

一方、SFプロトタイピングは従来のビジネスの常識を覆し、未来に向けた問題提起を重要視します。このSFプロトタイピングを現代のビジネスに活用すれば、どんな空想的な考えでも許される空間を作り出せます。

その空間では批判や嘲笑される心配がないため、経営陣と従業員は本心でアイデアを出し合うことが可能です。そして、「そんなこと実現できるわけがない」という意見も許容されることから、これまで考えつかなかった画期的なアイデアが生まれやすくなるのです。

さらに、SFプロトタイピングによってコミュニケーションが取りやすくなるため、経営陣と従業員の団結につながることもあります。このように、SFプロトタイピングは現代ビジネスにおいて、さまざまなメリットを生み出します。

SFプロトタイピングを実行する方法:3つの手順

SFプロトタイピングを実行する方法:3つの手順
続いて、SFプロトタイピングを実行する方法をみていきましょう。以下3つの手順に沿って解説していきます。SFプロトタイピングを今日から取り入れることができるはずです。

手順1.データを収集して自分なりにまとめる

まずは各自データを収集して自分なりにまとめましょう。完全なるフィクションにしないためにも、科学技術に関する論文や研究資料などを参考にし、根拠となる情報をしっかり収集しておくことが重要です。

また、収集したデータを自分なりにまとめることで、ディスカッションをスムーズに進めることができます。SFプロトタイピングの考え方は情報が複雑になりやすいため、収集したデータは必ずまとめておきましょう。

手順2.まとめた情報をもとにディスカッションする

各自でまとめた情報もとに従業員数名でディスカッションを行います。この際、多種多様な人材を集めるためにも、同じ部署の人材が一緒にならないよう配慮しましょう。

さまざまな情報と意見で議論を進めることで、より画期的なアイデアを出しやすくなります。また、多角的に物事を解釈できるため、実現に必要な目標をより確実に立てることができるでしょう。

手順3.コンセプトを固めて具体化する

ディスカッションが終わったあとは、コンセプトを固めて具体化しましょう。この具体化を複数人で行うと時間が無駄にかかってしまうため、代表者1人で具体化することをおすすめします。

なお、具体化したあとはコンセプトをカタチにしていきます。プロダクトのプロトタイプ開発などを実施し、第三者に伝わるカタチをつくり上げましょう。

SFプロトタイピングはDXと相性が良い

SFプロトタイピングはDXと相性が良い
これまでに解説したSFプロトタイピングは、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に活かすことが可能です。DXとは、データやデジタル技術を用いたビジネスモデルの変革のことを意味します。

このDXを成し遂げるためには、新しい発想や行動に移すためのきっかけが重要となります。そこで、いままでの考え方とは少し異なるSFプロトタイピングが非常に有効です。

SFプロトタイピングによって画期的なアイデアを立案し、その破壊的な発想がDXを推進させる材料になります。また、SFプロトタイピングを社内で活用すれば、「どんな未来を目指すべきか」という未来を思い描くような機会が生まれます。

その結果、経営陣と従業員のディスカッションが定着化し、企業のDXを前向きに進められるようになるでしょう。

DXはそこまで簡単ではない

SFプロトタイピングを活用することで、企業のDXを推進できると解説しました。しかし、DXという大規模かつ複雑なプロジェクトはそう単純ではありません。

実現するまでのハードルが非常に高く、SFプロトタイピングを取り入れただけでは不十分です。実際にデータやデジタル技術を扱う人材や、DXを推進するための職場環境が必要となります。

さらに、DXを推進する上では経営陣のモチベーションが必要不可欠です。決定権を持った経営陣が従業員を巻き込み、DXに対してコミットメントしなければなりません。

以上のことを踏まえ、企業のDXを進めたい場合は自社の状況を的確に捉えた上で、SFプロトタイピングの活用を検討すべきです。また、DXという大規模なプロジェクトは「長期的に取り組む」ということも念頭に置いておきましょう。

まとめ

本投稿では、SFプロトタイピングの基礎概要やメリット、実行方法やDXとの関係性について解説しました。

SFプロトタイピングはサイエンス・フィクションの発想を持ち、未来に向けたビジョンを探求する手法です。これまでのフォアキャスティング的な考え方ではなく、破壊的な発想を生み出すバックキャスティング的な手法となります。

このSFプロトタイピングは現代のビジネスと相性が良く、社内全体で用いれば競合他社との差を一気に離すことができるでしょう。また、ビジネスモデルの変革にも期待できるため、企業のDXを推進する上で非常に有効だといえます。

SFプロトタイピングという言葉は複雑で聞き慣れない言葉であるため、ぜひ本投稿を何度も読んで理解を深めてください。自社のビジネスやDXに役立てることができるはずです。

なお、DXについては「世界的に注目されているDXとは?ビジネスで役立つ基礎知識をわかりやすく解説」をご参考ください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

上村公彦
専門家

上村公彦(システムコンサルタント)

株式会社クラボード

新規事業のためのシステムコンサルティングおよびシステム・アプリ開発で豊富な実績。ベンチャー企業での事業開発経験で培われた「提案力」を発揮し、ニーズに対応。経営者目線でIT戦略を導きます。

上村公彦プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

新規事業のシステム・アプリ開発に強いコンサルタント

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京のビジネス
  4. 東京のシステム開発・業務システム
  5. 上村公彦
  6. コラム一覧
  7. 破壊的な発想を生み出す「SFプロトタイピング」とは?現代ビジネス・DXとの関係性

上村公彦プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼