企業のDX活用事例を業種別に5つ紹介!成功から学ぶ3つのポイントとは?
新型コロナウイルス感染症の影響や時代の変化に伴い、製造業のDXに注目が集まっています。この製造業のDXとは、デジタル技術を活用して収益モデルを変革し、付加価値の高い製品を市場に送り出すことです。製造業の「デンソー」はDX推進に対して非常に前向きであり、数々の変革を実現させています。
そこで本投稿では、デンソーにおけるDXの現状、デンソーが取り組むDX事例、製造業にDXを導入するための3ステップを解説します。デンソーにおけるDXを詳しく理解した上で、自社のDX推進にノウハウを取り入れましょう。
製造業のDXとは?
まずは、製造業におけるDXを明確にしておきましょう。製造業のDXとは、デジタル技術を活用して収益モデルを変革し、付加価値の高い製品を市場に送り出すことです。モノづくりの現場におけるノウハウや経験値をデジタル化し、社内全体に情報共有することで生産性の向上や品質アップを目指します。
単純にデジタル技術やITシステムを現場に取り入れるだけではなく、ノウハウをデジタル化するためのデータ収集を行い、それに関連する対策を少しずつ進めていきます。そのための取り組みとして、身の回りの仕組みを少しずつデジタル化し、製造プロセスから出荷後までを一元管理します。
なお、製造業におけるDXは以前の「製造業のDX推進事例とトレンドを解説!スマートファクトリーの実現方法とは?」で詳しく解説しています。
デンソーにおけるDXの現状
製造業のDXがわかったところで、デンソーにおけるDXの現状をみていきましょう。
新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、多くの企業はテレワークやビジネスモデルの移行が余儀なくされました。製造業も例外ではなく、全国各地の工場で働き方の見直しが実施されています。
そこでデンソーはこの変革をチャンスと捉え、DXの推進を積極的に取り組み続けました。その結果、現在のデンソーグループでは約300ものロボットを活用し、業務におけるさまざまなDXに成功しています。
具体的には、国内経費精算の自動化、交代勤務やパート社員の勤務登録の自動化、資材発注申請の自動化などがあげられます。また、稼働しているロボットの1/4が基幹システムにアクセスしています。
このように、デンソーグループは手作業で行っていた業務にデジタル技術を導入したことで、入力ミスの防止や手間の削減を実現しました。効果が大きいものに関しては、約700時間の創出につながっており、「この時間を新たな業務に役立てよう」という意気込みを感じます。
デンソーが取り組むDX事例
ここまで、デンソーにおけるDXの現状を解説しました。続いて、デンソーが取り組むDXを2つみていきましょう。デンソーが実現しているDXをより深く理解できるはずです。
製造現場のDX
デンソーは製造現場におけるDXを複数実現しています。デジタル技術を取り入れる際にはモノづくりの専門家を集め、「どういう姿が理想か」という議論を行い、コンセプトを構築してからDXを進めています。
DXを取り入れる流れとしては、まず現場の熟練技能者による改善活動はどういったプロセスで作業しているのかを解き明かしました。そして、優秀な技能者の技術やノウハウをデジタル化し、その知見を活かす形でシステムやアプリケーションの構築を進めています。それが製造現場のDXにつながり、さらなる改善活動の実現に成功したのです。
例えば、生産設備の自動化ラインは微妙にサイクルタイムが変化するため、出力が落ちるという事態は度々ありますが、モノの流れをすべて見える化したことにより、問題点を簡単に発見できるようになりました。こうした事例が何十、何百と生まれていることから、生産性向上に大きくつながっています。
なお、製造業にかかわる多くの企業が「スマート工場化」の成果に苦しんでいるものの、デンソーでは「現場で使うアプリをどう作るか」と「これらを支える基幹システム」の2つを重要ポイントとして押さえ、スマート工場化を推進させています。
エンジニアリングチェーン
デンソーが取り組んでいるものに「ダントツ工場」があります。この「ダントツ工場」とは、生産ラインの高速や高稼働化、コンパクトな独自設備の開発、物流や検査のスリム化などを実現することで、ダントツの原価でモノづくりを行えるという工場のことです。「ダントツ工場」を促進すれば、部分最適ではなく全体のリードタイムを削減できるでしょう。
工場を大幅に効率化させる「ダントツ工場」を実現する「Factory IoT」として、「3つのチェーンを連携させて改善していく」ことが重要であるとされています。この3つのチェーンは、エンジニアリングチェーン、サプライチェーン、工場内のファクトリーチェーンです。これら3つのチェーンの重要性について、デンソーの「加藤」氏は下記のように述べています。
「工場は生き物である。変化を捉えて、事後アクションをできるだけ早め、未然防止化を推進する。また同時にエンジニアリングチェーンによるコト情報を、より正確にモノに転写する仕組みを実現できるかということも重要だ」
これらを実現するにあたって、「生産準備IoT」と「工場管理IoT」が主に推進されます。
製造業にDXを導入するための3つのステップ
デンソーが取り組むDX事例については大まかに理解できたでしょうか?次に、製造業にDXを導入するための3ステップを解説します。
製造業におけるDXといっても意味合いは幅広く、デンソーが取り組んでいる大規模なものから、手作業で集計していた業務の自動化といった小さなものまであります。例えば、製造業におけるDXには下記のようなものが考えられます。
- 集計業務を自動化する
- サービス部門に集まるクレーム等を自動で分類する
- AIと製品・サービスを組み合わせて新しい顧客体験を実現する
- 顧客の求める製品を標準化・自動化された加工機を用いて効率的に提供する
- 工場をスマート工場化して生産性を向上させる
これからDXを導入する予定の方は、自社のレベルに合わせたDXを考えてみてください。
既存業務をデジタル化して生産性向上を目指す
製造業にDXを導入するにあたって、まずは既存業務をデジタル化して生産性向上を目指します。身の回りの仕組みをデジタル化することで、比較的簡単に効率化が図れるはずです。
具体的には、データ入力、受注作業、実績情報の収集、出荷実績の登録など、手作業で行っていた業務をRPA(ロボットによる業務自動化)することがDXの第一歩となります。
このように既存業務をデジタル化することで、作業にかかる時間が少しずつ削減され、既存製品のブラッシュアップやさらなるDX化に取り組むことができます。
市場ニーズを生産現場に即時反映させる
既存業務をデジタル化したあとは、市場ニーズを生産現場に即時反映させましょう。顧客からのご指摘やご意見などを収集し、データ化して生産現場に速やかに共有します。その共有された情報をもとに、商品やサービスに即時反映させて顧客満足度の向上を目指します。
これら一連の流れは決して容易ではなく、多くの部門を巻き込む大規模なプロジェクトになります。そのため、プロジェクトにかかわる経営部やDX部門などと協力して推進させましょう。
また、一連のプロジェクトが遂行できれば市場ニーズの反映だけでなく、原価管理や販売データ、顧客管理などの情報を一元管理できるようになり、さらなる効率化・最適化を目指していけるはずです。
複数事業の顧客基盤を連携させる
市場ニーズを即時反映できるシステムを整備したあとは、複数事業の顧客基盤を連携させましょう。自社に複数の事業があり、いくつかの商材を持っている場合は、顧客基盤を連携させて同じ顧客に対するアプローチの無駄を削減させます。顧客基盤を連携させるためにも、顧客データを一元管理・共有できる環境を整えておきましょう。
さらに、デジタル技術による支援を受けることで、複数の事業や商材を組み合わせたビジネスモデルの変革・創造が実現する可能性もあります。つまり、複数事業の顧客基盤を連携させることは、新たな収入源の獲得にも期待できるのです。
ただし、プロジェクトを進める上ではDXにかかわる人材を増やす必要があることから、必要以上にコストがかかってしまいます。また、大規模なプロジェクトであるため、企業全体で推進させなければなりません。そのほか、経営陣による積極的なコミットメントが求められる点にも注意しましょう。
DXが今後もたらす製造業の未来
ここまで、製造業にDXを導入するための3ステップを解説しました。最後に、DXが今後もたらす製造業の未来をお話します。
今後、DXが製造業にもたらす未来としては、数々のロボットシステムの構築による効率化や生産性向上に伴い、日本式モノづくりをノウハウも含めて輸出できるようになると予想されています。また、デンソーの「山崎」氏はDXの取り組みについて、下記のような考えを述べています。
「暗黙知や個別最適などデジタル技術と相性の悪いものもあるので、これらをどうデジタルの仕組みにのせ、アプリとして使いやすくするかが、世界に対する差別化や競争力につながると考えている。設計、生産準備、現場など、日本にはコンテンツを生み出す土壌が豊富にそろっており、これらに合う形でツールが進化すれば、必ず成功できる」
上記のように、日本の製造業における技術力の高さから、DXを取り進めていけば明るい未来が訪れると予想されています。
まとめ
本投稿では、デンソーにおけるDXの現状、デンソーが取り組むDX事例、製造業にDXを導入するための3ステップを解説しました。
製造業のDXとは、デジタル技術を活用して収益モデルを変革し、付加価値の高い製品を市場に送り出すことです。デンソーはこのDXを積極的に推進した結果、デンソーグループでは約300ものロボットを活用し、業務におけるいくつものDXを実現しています。
また、本投稿で紹介したデンソーが取り組むDX事例のほかにも、デンソーはさまざまな取り組みを実施しています。これから自社にDXを導入する予定の方は、本記事の内容やデンソーの導入事例を参考にしてみてください。
製造業のDXを深く知りたい方は「製造業のDX推進事例とトレンドを解説!スマートファクトリーの実現方法とは?」をぜひチェックしましょう。