自分が自身の人生の主役となるための支援をするカウンセラー
前川あさ美
Mybestpro Interview
自分が自身の人生の主役となるための支援をするカウンセラー
前川あさ美
#chapter1
下北沢駅から徒歩約5分、閑静な住宅街にある「BONDS東京カウンセリングサービス」。代表であり、公認心理師・臨床心理士の前川あさ美さんは「ここは、多様な課題を抱えるクライアントとカウンセラーをつなげる(BONDS)場です」と、優しい笑顔で話します。
2022年7月、代表に就任。東京女子大学で臨床心理学を教えるかたわら、BONDSで多くのカウンセラーたちと臨床を行います。
前川さんのもとには、国籍や文化、年齢、経歴など、さまざまな背景を持つカウンセラーが12人所属しています(2023年2月現在)。
英語、韓国語、ドイツ語にも対応可能で、バイリンガルも在籍。訪れる人の約半分は日本以外の出身者だそうです。カップルカウンセリングを専門とするバイリンガルのカウンセラーも所属しており、国際結婚の夫婦や国籍の異なる恋人間の問題にも対応しています。
「LGBTQも発達に偏りがある人も、障害と診断された人も、生きにくいのは、彼ら当事者だけの責任であるかのように見なされ、当事者が子どもの場合は、親が変わらないといけないといったプレッシャーを与えられ苦しんでいる人がいます。理解と変化が必要なのは、個人だけではないのです」
その人が生きていくうえで必要となる物語を大切にし、個人を時間や空間、文化といった文脈の中で広く理解していきたい、と前川さん。
「人は一人一人違います。『違い』は『間違い』ではなく、自分のありのままの一部として生きていけるお手伝いをしたいです」
#chapter2
「昔から、答えが分からないものについて考えるのが好きだった」という前川さん。大学で心理学を専攻し、精神病院にボランティアに行き、大学院在籍中にはアメリカに留学して、「異なる文化」にすすんで飛び込んでいきました。
専門分野は、心に傷を負った人への理解と支援。医療機関の精神科や小児科などに勤務し、虐待やいじめを受けた子どもや、大切な家族を亡くした人に対するカウンセリングのほか、震災の際には現地に赴き、被災者の心のケアに尽力しました。この過程で出会った多くの発達に偏りのある人々から、「理解を急がない」、「なんだろうと問いつづける」観点の大切さを教わったそうです。
1990年から東京女子大学に勤務し、2005年に同大学の教授に就任。大学でも、臨床心理学の講義や心理職の育成に携わっています。
前川さんのカウンセリングの基盤には、パーソンセンタード・アプローチ(来談者中心療法)という理論があります。
「この理論について『傾聴』『受容』『共感的理解』というキーワードをだされますが、実行するのはとてもむずかしいんです。『傾聴』とは、目も耳も心も使って、見えないものを観て、聞こえない言葉にも耳を傾けるんです。『受容』しようなどと簡単に言う方がいますが、自分とは異なる人のことを受け入れるのは容易ではない。また『共感的理解』をするには、理解できたことよりも、理解できていないことを分かってることのほうが大切。そのほうが支援につながるんです」
#chapter3
「生きるうえでの正解はひとつとは限らない。答えを与えられるのではなく、問いを一緒に考え続ける場を大切にしたい」と、前川さん。
カウンセリングのゴールは、クライエントが自立して自分の人生の主人公として生きていくことだと前川さんは言います。悩みがなくなることでも、何でもひとりで解決できることでもありません。かつて、約1年間カウンセリングを受けてきた相談者から、こんなことを言われたそうです。
「ここに来ても悩みはなくならなかった。ただ、先生がいて安心して悩むことができた」と。
「悩みを持つことは確かに命を脅かすことがあります。でも、信頼できる人がいたら、助けを求められるようになったり、安心できる場があることで、逃げずにチャレンジすることもできるようになります。悩みは生きる力を強くするんです」
カウンセリングは、やがてクライエントが自分との対話、信頼してもいいと思える人との対話ができるように、まずカウンセラーとの心の交流を体験する場です。少しずつ他の人との絆を確かなものにし、自分を肯定できるようになっていくと、前川さんは長年のカウンセリングで確信しています。
「自分にとってベストな答えは、自分の中から出てくるんですよ」
多様な文化で生きているカウンセラーが集まる「BONDS東京カウンセリングサービス」。今後は、それぞれの専門分野を生かした、気軽に参加できるラーニンググループの開催や、心理職を対象とした学びとしてスーパービジョンや研修にも力を入れていきたいとのこと。
「高い専門性を持ったカウンセラーと、そのスキルを必要とする方をつなぐ場づくりにこれからも励んでいきます」
(取材年月:2023年2月)
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Profile
自分が自身の人生の主役となるための支援をするカウンセラー
前川あさ美プロ
心理職
株式会社BONDS東京カウンセリングサービス
国籍や年齢、経歴など、多様な背景を持つカウンセラーが所属し、相談内容に合わせてカウンセラーをご紹介。英語、韓国語、ドイツ語、中国語にも対応可能。カウンセラーの専門分野を生かした勉強会も開催。
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