孫に贈与、ただ介護費用も心配
こんにちは。行政書士 ファイナンシャルプランナーの河村修一です。
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親の介護費用を捻出するには
2025年には、認知症患者数が700万人にも達すると推計されています。万一、親が認知症などになり、判断能力がなくなると自宅などの不動産や預貯金などの財産管理や売却ができなくなります。このように親の財産が使えない状況下で、「子世代(40歳~50歳代)」は、残業代も減り、昇給も少なく、晩婚化等で、まだまだ子供にもお金がかかります。子世代の経済状況は、「親の介護費用負担」と「子供の教育費」などで「親と子」に挟まれたサンドイッチ状態と非常に厳しい状況になります。「親の介護費用」は、原則、親自身の財産から捻出する必要があります。そのためにも、まだ親が、認知症等で判断能力がなくなる前の元気なうちに介護費用などの捻出の対策を講じる必要があります。「任意後見契約」や「民事(家族)信託」などを上手に活用してはどうでしょうか。
民事(家族)信託とは
民事(家族)信託とは、「親が信頼している子供に、ご自身の財産を託して親のために管理・処分をしてもらう手続き」です。具体的には、財産の所有者である「親(委託者)」が元気なうちにその財産の名義だけを「子ども(受託者)」に変更し、その権利は今まで通り「親(受益者)」が受け取ります。これにより親が認知症になった後も変わらず適切な財産管理ができます。例えば、親が「委託者兼受益者」となり、子どもを「受託者」として、自宅と金銭を信託します。親は今まで通り自宅に住み生活を続けます。将来、万一、認知症が発症し、判断能力が低下した時に、有料老人ホームへの入居資金として、受託者である子どもが自宅を売却し、その売却代金を親の入居費用(介護費用)に充当することができます。
※信託の仕組み(一般社団法人信託協会HPより)
民事(家族)信託の特徴
「委託者・受益者」が親で子供が「受託者」の場合
・親が選んだ人(子供)へ名義を変えて財産の管理・運用・処分を任せることができます。
・子供に名義を変えても、財産は親のものなので、親ご自身のために使えます。
・親が認知症になり判断能力が低下したあとでも、既に名義は変えているので信託財産は凍結しません。
・親が遺言では不可能な「次の次の代」まで承継先を今決めておくことができます。
民事(家族)信託は、相続税や贈与税に関しては、今と変わりません。不動産を親から子どもへ名義変更することによって、不動産取得税、譲渡所得税や贈与税は課税されません(かかるのは登録免許税み)。
民事(家族)信託の留意点
「委託者・受益者」が親で子供が「受託者」の場合
・親が認知症などで判断能力がなくなった後では(法律行為ができない)、民事(家族)信託は利用できません。
・税金対策にはなりません。
・信託口座に対応できる銀行は増えてきているが手数料等が発生したり、開設に時間がかかる場合等があります。
・不動産の名義が親から子どもにかわります。
・導入時にまとまった費用がかかります。
・子供(受託者)には善管注意義務・公平義務・忠実義務・信託事務等の負担が発生します。
・全ての財産を含めることはできません。
・身上監護などはできません(介護施設の入所契約など)。
・受託者の公的に監視監督する制度がありません。
・他の財産と損益通算ができない等
まとめ
民事(家族)信託は、親(委託者・受益者)が判断能力が低下した(認知症など)あとでも、子世代(受託者)が引き続き財産の処分・管理ができるため、親の介護費用を捻出することが可能です。その他、一例として、亡くなった後の財産の承継先を連続して指定できます。親がまだ元気なうちに「子世代の方」が、親にさりげなく老後の財産管理についての情報提供してみてはどうでしょうか。