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親の介護費用を子世代が負担するのはNG!

河村修一

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おはようございます。行政書士 ファイナンシャルプランナーの河村修一です。
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親の介護費用は親の財産から

晩婚化で子世代が子供の教育費などの負担に加え、そのうえ、親の介護費用を負担し乗り切れたとしても、子世代自身の老後資金が心配になります。子世代の老後資金が不足すれば、その子どもたちの援助が必要となり負のスパイラルに陥ります。それを断ち切るためには「親の介護費用は親の財産から」が基本です。

介護費用はいくらかかるの

介護費用は一体どのくらいかかるのでしょうか。確かに、有料老人ホームなどに入って「何千万円かかった」などゾッとする金額を耳にすることがあります。ただし、介護は「いくらお金がかかったか」ということではなく、「いくらお金をかけられるか」ということになります。つまり、人によって異なります。現実的ではないのですが乱暴に例えるなら、現在、駅から徒歩1分のマンションに住んでおり、家賃10万円としましょう。ある日突然、大家さんから家賃20万円にするとの通知があれば、引っ越すか否かを考えると思います。その時に、お金が支払えると思えばそのまま家賃20万円で住み続けるでしょう。この場合は経済的負担の増加だけです。ただし、10万円超は支払えないと思えば、引越しをするしかありません。10万円の家賃のマンションを探してみると、駅から徒歩30分のところしか見つかりません。こちらに引っ越すと家賃は今までと変わりませんが、駅から遠くなり肉体的・精神的負担は増加します。介護も住まいと同じで、親が突然、介護状態になった場合、「有料老人ホーム等に入居や手厚い介護をすることによってお金をかける」、又は「子世代等自身が在宅で親を介護すること等によってお金をかけない」という選択肢があります。在宅で介護をした場合は、有料老人ホーム等に入居したときに比べ、経済的負担は軽減されますが、肉体的・精神的な負担は増加します。このようにどのように判断するかは介護者である子世代と親とで、経済的負担・肉体的負担・精神的負担のバランスをどう考えるかになります。介護費用総額の平均は494.1万円(内訳は、介護に要した費用のうち一時費用の平均は69万円、月々の費用の平均は7.8万円、介護期間は4年7ヵ月をもとに独自試算)が目安になります(出典 (公財)生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」速報版より)。

要介護になる原因の1位は認知症

65歳以上の要介護者等について、介護が必要になった主な原因は「認知症」が18.7%と最も多く、次いで、「脳血管疾患(脳卒中)」15.1%となっています。また、男女別に見ると、男性は「脳血管疾患(脳卒中)」が23.0%、女性は「認知症」が20.5%と特に多くなっています(参照:令和元年版高齢社会白書(全体版)図1-2-2-10)。ご参考までに、平成29年版では、介護になった主な原因の第1位は「脳血管疾患」17.2%で最も多く、次に「認知症」16.4%でしたが、平成30年版で認知症と脳血管疾患の順位が入れ替わりました。認知症の最大の危険因子は加齢であり、今後、平均寿命が延びれば認知症患者は必然的に増えていくと思われます。

認知症の親が定期預金を解約できるのか

要介護者のうち約5人に1人の方が認知症を原因として介護認定を受けていることになります。子世代は、親が認知症になった場合、親の定期預金を解約して介護費用に充てたいと考えていますが、定期預金を解約するには、親自身が銀行の窓口で解約手続きをする必要があります。親が認知症だからといってすぐに口座凍結するわけではなく、あくまで窓口の行員等と認知症の親との間で意思確認がとれるか否かで判断されます。私も認知症と診断された親の定期預金を解約したときは、一緒に銀行に行って解約した経験があります。そのときの親の状態は、物忘れが徐々にひどくなっており、お金を置いた場所を忘れたり、薬の管理が難しくなってきていました。アルツハイマー型認知症でしたので、徐々に進行しているような感じを受けていましたが、親自身の名前や生年月日、住所などの記入等については支障がなかったことを記憶しています。もし、銀行が親の意思確認などができない等、判断応力がないと判断されると、「法定後見制度」の利用を促されます。

法定後見制度の費用

認知症により判断能力がなくなった場合には、「法定後見制度」を利用する以外はありません。しかも、仮に後見人に専門家が選ばれた場合、ランニングコストとして、基本報酬2万円(毎月)、管理財産額が1000万 円を超え5000万円以下の場合には基本報酬額を月額3万円~4万円、管理財産額が5000万円を超える場合には基本報酬額を月額5万円~6万円となります(参照東京家庭裁判所 東京家庭裁判所立川支部)。例えば、85歳の母親が後見開始し毎月専門家への報酬が3万円と仮定すると年間36万円になります。85歳時の平均余命(平成30年簡易生命表)は11.91年、約12年で計算すると12年×36万円=432万円にもなります。このように無視できない金額になります。判断応力のなくなる前に対策を講じる必要があります。

親の元気なうちに財産管理の対策を




今までは、「元気な時」から「死亡」のときの対策を講じればよかったのですが、今後は「元気な時」から「認知症などの発症」へすすみ、その後「死亡」という段階を経ることになります。もし、親が認知症で判断能力がなくなると、いくら家族といえども親の定期預金を解約すること等ができなくなります。親の預金等を介護費用などに使いたい場合には、お元気なうちに、任意後見制度の利用や自宅を含めた資金使途の自由度の高い民事信託の活用などがあります。その他にも、信託銀行などが取り扱っている信託商品もあります。例えば、りそな銀行が取り扱っている信託商品のなかのひとつ「ハートトラスト 心の信託」です。仕組みは、親が「ハートトラスト 心の信託」商品に50万円以上500万円以内で預け入れます。信託期間中(親が亡くなるまで)は、親は資金使途を問わずに契約した支店にて届出印と信託通帳を持参して払い戻しができます。なお、契約時に親の法定相続人、例えば、お子様の一人に代理人を指定しておくと、信託期間中であれば、親の介護費や医療費については請求書や領収書の提出で代理人であるお子様もお金を引き出すことができます。このように、親の財産から介護費や医療費を捻出でき、もしも、親が認知症になったときでも親のお金が活用できます。ご参考までに、この信託をするために必要な費用(信託報酬)は、契約時に5万円(税別)、運用信託報酬として金銭信託の5年ものの運用収益から予定配当額等を差し引いた金額がかかります。その他には、三菱UFJ信託銀行のつかえて安心や三井住友信託銀行の人生100年応援信託などがありますが、基本的には、資金使途が限られています。これらの特性を考慮して自分に合った商品を選ぶことが重要です。なお、介護費用など全般的なことは「介護とお金に詳しいファイナンシャル・プランナー」、税務に関することは「介護とお金に詳しい税理士」や予防法務に関することは「介護とお金に詳しい行政書士」に相談してみてはいかがでしょうか。

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河村修一
専門家

河村修一(行政書士)

カワムラ行政書士事務所

<個人の方>には、「終活全般、介護費用・介護問題での親族間の合意書作成から遺言支援・任意後見契約支援、相続手続き」、ライフプランなどのマネー相談。<法人の方>には、「創業融資」等資金繰りのサポート。

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