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河村修一

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河村修一(かわむらしゅういち) / 行政書士

カワムラ行政書士事務所

コラム

親は住民税非課税なのに介護保険施設の「食費・居住費」は、なぜ基準費用額なの?

2020年5月1日 公開 / 2021年2月9日更新

コラムカテゴリ:くらし

おはようございます。行政書士 ファイナンシャルプランナーの河村修一です。
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79歳の父親が76歳の母親を介護していたのですが、最近、母親の物忘れがひどくなっています。今後は、高齢である父親が母親を介護する在宅介護は難しくなりそうなので、特別養護老人ホーム(以下「特養」という)に入所することを考えています。父親はサラリーマンだったので厚生年金を受給しており住民税課税です。一方、母親の収入は年金のみで年間80万円以下です(住民税非課税)。

住民税非課税なのになぜ基準費用額?

低所得の方が介護保険施設利用が困難とならないように、申請により「食費・居住費」の一定額以上は保険給付され、低所得の方は所得に応じた負担限度額まで自己負担し、残りの基準費用額との差額分は介護保険から給付されます。つまり、低所得の方は「食費・居住費」の自己負担額が軽減されます。
仮に、76歳の母親(介護保険の自己負担は1割)が要介護5で特養のユニット型個室に入所した場合、「食費」の負担限度額は1日あたり1,380円、「居住費」は1,970円の基準費用額が適用となり、1ヶ月(30日)の合計はサービス費用(27,300円)+食費(41,400円)+居住費(59,100円)+日常生活費(10,000円)で137,800円となります。母親は住民税非課税(低所得)であるのになぜ「食費・居住費」の自己負担の軽減がないのでしょうか。住民税非課税であれば、「食費」の負担限度額は1日あたり390円、「居住費」は820円となり、1ヶ月(30日)の合計は、サービス費用(27,300円)+食費(11,700円)+居住費(24,600円)+日常生活費(10,000円)で73,600円になるはずです。

介護保険施設を利用した場合の食費・居住費の負担限度額の要件

負担限度額認定の対象になるのは、次の①と②の要件すべて該当する方です。
①所得要件・・住民税非課税の方、ただし、住民税課税世帯や別の世帯の配偶者が住民税課税の場合は対象外
②資産要件・・「預貯金等」単身(配偶者がいない場合)で1,000万円以下、夫婦で2,000万円以下の方、つまり、預貯金額等が1,000万円超(夫婦の場合は2,000万円超)になる場合は対象外です。今回のご夫婦の場合は、預貯金額等が不明であり②の資産要件はわかりませんが、①の所得要件において但し書き以下の別世帯の配偶者が住民税課税の場合は対象外となっています。母親は住民税非課税で負担限度額認定の対象となるかと思われますが、夫が住民税課税であるため、対象外となり、「食費・居住費」は基準費用額となります。
次に、例えば、父親がその後亡くなり、母親だけとなり預金を1,600万円持っていたと仮定します。上記の負担限度額の要件において、①の所得要件については母親は住民税非課税のため対象となります。②の資産要件については、預金が1,600万円と1,000万円超あるため対象外になります。よって、母親は夫が生存していたときと同じ負担になります。※参照厚労省HP

2021年度介護保険法改正における補足給付負担増の見通し

2021年度介護保険法改正に伴い、介護保険施設を利用した場合の「食費・居住費」の負担限度額の資産要件が厳しくなる見通しです。年金収入等が80万円以下の単身の場合、現状であれば預貯金等残高が1,000万円以下の方は対象となっていましたが、2021年度からは預貯金残高が650万円以下でなければ対象者になりません。その他、現在(1~4までの4段階あり、1~3が住民税非課税世帯、4段階は住民税課税世帯)の3段階が細分化され、年金収入などが80万円超120万円以下の場合には預貯金等残高が550万円以下、年金収入が120万円超の場合には預貯金等残高が500万円以下でなければ対象になりません。このような方向性で進んでいます。

親が元気なうちに生前贈与で預貯金を減らすことも

さて、親が認知症になっても判断能力があれば、生前贈与も可能です。親が子供に生前贈与することにより親の財産を減らすことができます。相続税対策だけではなく、一人暮らしの親が介護保険施設に入所する場合には預貯金等を1,000万円以下(現在の資産要件)にすることで、①の所得要件を満たしていれば、「食費・居住費」の軽減の対象になります。贈与することにより、子供の経済的な援助にもなり、子供たちの喜んだ顔を見ることもできます。ただし、贈与しずぎて自分自身の介護費用等がなくならないように慎重に行いましょう。また、生前贈与する場合、相続時精算課税制度や一括贈与非課税制度の活用など含めて検討することをおすすめします。全般的なことは「介護とお金に詳しいファイナンシャル・プランナーやケアマネジャー」、税務に関することは「介護とお金に詳しい税理士」、予防法務に関することは「介護とお金に詳しい行政書士」等に相談するのもひとつです。

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