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『“総合型選抜”に学力は必要ない、は大きな間違い―生徒にテスト勉強をさせない部への大きな疑問』

井上昇哉

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テーマ:大学受験

こんにちは、与一の井上です。

「多様性」「少子化」「本質的な学び」…様々な理由はあるのでしょうが、大学入試において「総合型選抜」への移行が確実に進んでいます
特に話題になっているところで言えば、国内有数の大学である東北大学・筑波大学が将来的に入試を全て総合型選抜へ移行するという意向を示しました。

今回はこの総合型選抜について軽く触れるとともに、「入試の多様化が進む中で、それに学校現場が対応できているのか?」という観点から、近年感じている高校の部活動に関する疑問についてもお話したいと思います。

「総合型選抜」って何?

一般には以前までの「一般入試」「推薦入試」「AO入試」と呼ばれていた入試が、それぞれ「一般選抜」「学校推薦型選抜」「総合型選抜」呼ばれるようになった、そう説明されています。
そう聞くと、今の保護者世代では「なんだ総合型選抜ってあの“一芸入試か”」と思われる人がいます。
つまり学力は必要ではなく、部活動などの活動で目覚ましい成果を出した人が合格すると俗に言われていたあの入試方式です。
ですがここに大きな誤解があります。入試において変わったのは、決して呼称だけではないのです。

総合型選抜に学力は必要ない?

非常に大雑把に言えば、以前までの入試制度では
「一般選抜=センター試験+二次試験」
「推薦入試=評定+大学別試験」
「AO入試=調査書+プレゼンor面接or小論文」
というイメージがあったのではないでしょうか。
ここから“呼称”が変わっただけの「総合型選抜」でも同様に求められるものは同じ「調査書+プレゼンor面接or小論文」であるという誤解がいまだ広くなされているようです。
そもそも「AO入試→総合型選抜」への名称変更は、「AO入試には学力が必要ない」という誤った認識を改めてもらうため、とも言われています。
つまり「総合型選抜に学力は必要ない」という考えは全く正しくないのです。

むしろ総合型選抜では様々な面で「学力」が重視されます。
国公立大学では総合型選抜でも共通テストの受験を課す大学も少なくありません。
また評定/調査書で高校3年間の成績を重視する大学もあります。
またそのどちらも必要でなくても、面接や小論文では専門知識を問われる場合が非常に多くあります。
「学力」とは入試の点数だけを指すのではありません。むしろ総合型選抜は紙の上での点数だけではなく、様々な視点から生徒一人一人の「学力」を測る入試だと言えるのです。
結局のところしっかりと高校生活を通して「学び」の姿勢を持ち続け、多角的な知識と柔軟な思考力を付けることが要求されるのです。

少し調べたところ、一部の塾では「学力は不要」「事前対策で誰でも合格」といった誤解を招く宣伝も見られますが、実際には十分な学力と日々の積み重ねが不可欠なのです。

心の底から疑問に思っていること

なのに、です。近隣の高校には「テスト期間なのに部活動が休みではない」部があります
実際に生徒からも、面談の際に保護者の方からも「テスト期間中も部活動がある」という声を聞くことが少なくありません。大会が近いから、いつもより長く練習できるから、と正当化するための言葉を並べてさも当たり前のようにテスト期間どころかテスト中であっても部活動を行っているらしいのです。

残念ながらそうした「熱心な」部に在籍している生徒のほとんどは、「熱心な」部活動のせいで日常的に勉強をする習慣を持ち得ていません。決して好ましくはありませんが、そうした生徒はテスト期間中に今までの学習内容を急いで復習し、時には徹夜をしてでも頭に「詰め込む」以外に定期テストで良い点を取る方法はありません。

ではそのような普段からそもそも勉強時間が確保できていない生徒が、テスト前すら勉強の時間を与えられなければどうなるでしょうか?
当然満足な成績を上げることは望めず、「赤点じゃなかった」ことに安心するようなレベルに陥ってしまうことは当然の帰結と言えます。

またそうした部の中には、テストの成績が悪ければ何らかのペナルティを課す先生もいるようです。一体誰のせいでそのような点数を取ることになってしまったのか、わかって発言しているのでしょうか。そのような状況を生徒に強いておきながら、成績の低下を叱責するのは筋が通っているとは言えません。

このような部の顧問の先生達(監督・コーチである場合も多いようです)は、本人達は間違いなく否定するでしょうが、「全国大会に出る」「県で上位に入る」といったことしか考えていません。
言い方を変えれば、非常に失礼な物言いですが部を優秀な成績に導いたという自分の評価しか考えていないのです。

もしかしたらこうした先生の多くは「部活動で優秀な成績を収めたら、大学にはいけるから」と思われているのでしょうか。もしそうだとすれば、時代錯誤も甚だしいと言わざるを得ません。
先述の通り、どんな入試方式で受験をしたとしても、「学力」が不要な入試などほとんどありません。

部活動>勉強、は本当に臨んだ状況なのですか?

今中学生のお子さんをお持ちの方、高校で部活動を頑張る事自体は決して悪いことではありません。ですが事前に色々と情報を集め、「テスト前には部活動を休みにする」という“当たり前の”ことをしているかどうかを必ず確認してください
一度入部してしまえば、「その部では当たり前」と世間・高校生の常識とはかけ離れた“常識”を受け入れざるを得なくなってしまいます。そうなってしまってはもう遅いのです。

現在そのような部に入っている高校生のお子さんをお持ちの方、きっと心配されていることでしょう。ですがそれは「仕方ない」ことでは決してありません。言葉を選ばず言えば“異常”な状態を我慢するのも慣れてしまうのもあってはなりません。 部員何人かで、それが無理なら保護者の方何人かで、せめてテスト前にはきちんと取り決め通り休みをもらえるように声をあげましょう。

繰り返しとなりますが、大変残念ながらこうした部の顧問・監督・コーチは生徒の将来を本気で考えているとは全く思えません。気づいてから後悔してももう遅いのです。
本人達が「仕方ない」と受け入れざるを得ない状況で、子どもの将来を守れるのは保護者の方を始めとした周りの“良識ある”大人しかいません。「両立」というのであれば、せめてテスト前だけはしっかり勉強をする。この当然の権利を決して諦めず、要求していきませんか?

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井上昇哉
専門家

井上昇哉(塾講師)

学習塾「与一」/合同会社 あたまをたがやす

テストで点をとるための授業ではなく、自ら考え答えにたどり着く経験を重視した授業スタイルを確立。“「考える」を考える”ことを身につけることで、勉学、行動、思考すべてにおける人間的成長を促します。

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