【日本理化学工業(株)大山社長】講演会
― 選挙前にあらためて考える「職場の安心」の正体 ―
衆議院選挙を控え、メディアでは連日、経済政策や社会保障、賃上げの是非などが取り上げられています。
このような時期になると、企業経営者や人事担当者の方から「社員は政治や景気の先行きをどう受け止めているのだろうか」「社内で特別な対応は必要なのか」といった声を耳にすることが増えます。
キャリアコンサルタントの立場から見ると、選挙そのものよりも、**選挙をきっかけに可視化される“将来不安”**こそが、社員の心理に大きな影響を与えていると感じます。
社員が抱える不安は、必ずしも「政治的な主張」ではありません。
・物価はこれからどうなるのか
・今の収入で生活を維持できるのか
・この会社で働き続けて大丈夫なのか
こうした問いが、ニュースやSNSを通じて日常的に刺激されることで、漠然とした不安として積み重なっていきます。
特に注意すべきなのは、不安は声にならないまま蓄積されやすいという点です。
多くの社員は、選挙や政治について職場で積極的に話すことを避けます。しかし、不安が解消されないまま続くと、「この会社は自分の将来を考えてくれているのだろうか」「環境が変わったときに守ってもらえるのだろうか」という、組織への信頼感に影を落とすことがあります。
ここで重要になるのが、賃金や制度を即座に変えることではありません。
社員が求めているのは、正解の提示よりも、説明と対話の姿勢です。
・会社として、今の環境をどう捉えているのか
・すぐに変えられないこと、変えられる可能性があること
・将来に向けて、どのような考え方で経営や人材を見ているのか
これらが言語化され、共有されているかどうかで、社員の受け止め方は大きく変わります。
不透明な時代における「安心」とは、安定が保証されている状態ではありません。
むしろ、「何が起きているのかを知ることができる」「不安を抱えたときに、聞く窓口がある」「一方的に切り捨てられないという信頼」がある状態だと言えるでしょう。
選挙前後は、社員の心の動きが表に出やすいタイミングです。
だからこそこの時期は、制度改定や数値目標だけでなく、自社がどのような姿勢で人と向き合っているのかを見直す好機でもあります。
人が不安を感じるのは、未来が見えないときです。
企業ができる最も現実的な対策は、「完璧な未来」を示すことではなく、一緒に考える姿勢を示し続けることなのかもしれません。



