【日本理化学工業(株)大山社長】講演会
採用難が叫ばれる中、地方の中小企業にとって「人を集める」ことと「人を辞めさせない」ことは、どちらも重要な課題です。しかし、両者は似て非なるものです。求人広告を出せば応募はあるのに、定着せずにすぐ退職されてしまう…。あるいは逆に、長年働いてくれる社員はいるものの、新しい人材がなかなか採用できない…。そんな悩みを抱えている企業は少なくありません。では、「人が集まる会社」と「人が辞めない会社」は、何がどう違うのでしょうか。
1. 人が集まる会社の特徴
人が集まる会社は、まず「入り口」での魅力発信が強い傾向があります。求人票やホームページにおいて、求職者が知りたい情報を具体的に提示しています。
・給与水準や休日数が明確に書かれている(かつ好条件)
・残業時間や働き方のルールが数字で示されている
・先輩社員の声や働く姿の写真が載っている
つまり、応募前の不安を解消し「ここなら安心して応募できそう」と思わせる工夫がなされています。また、SNSや地域イベントを通じて会社の存在感を高めているケースも多く、外向けの広報力が強いのが特徴です。
2. 人が辞めない会社の特徴
一方で「辞めない会社」は、入社後の環境づくりに力を入れています。新人が孤立しないような教育体制やフォローアップ制度、上司や同僚との風通しの良い人間関係など、日常の中に安心感があります。
・入社3か月以内に定期的な面談を行い、悩みを早期に把握する
・ベテラン社員が自然にフォローする文化を持つ
・育児や介護などライフイベントへの柔軟な対応ができる
給与や待遇が同じでも、こうした仕組みがあるかどうかで定着率は大きく変わります。「働き続けやすさ」が具体的に備わっているかどうかがポイントです。
3. 双方を両立させるには
採用に成功しても離職が多ければ採用コストは無駄になりますし、定着率が高くても人が集まらなければ事業の拡大は難しくなります。重要なのは「集める仕組み」と「辞めない仕組み」を両輪で回すことです。
例えば、求人票では「残業月10時間以内」「有給取得率70%」といった数字を明確に伝える。そして実際にその環境を社内で守り続ける。この一貫性が、求職者の信頼を得て、入社後の満足度にもつながります。
まとめ
「人が集まる会社」は外に対して自社の魅力を伝える力が強く、「辞めない会社」は中に対して安心して働ける環境を整えています。地方の中小企業にとって大切なのは、この二つを同時に実現することです。華やかな広報や立派な制度でなくても構いません。大切なのは「言ったことを守る」「社員を大切にする姿勢を行動で示す」こと。これができる企業こそ、採用と定着の両面で強い会社へと成長していくと考えます。



