最低賃金引き上げ時代における“非金銭的魅力”の打ち出し方

福山研一

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最低賃金の引き上げが続くなか、企業にとって「給与水準だけでの差別化」はますます難しくなっています。特に地方の中小企業は、都市部の大手企業との給与差だけでなく、同じ地域内の中小企業同士でも似た条件の求人が並ぶ状況に直面しています。こうした環境下では「非金銭的魅力」をいかに打ち出すかが、採用と定着を左右する決定的なポイントになります。

1. 都市部大手との比較では「生活の安定感」を強調

都市部の大手企業は給与や福利厚生で優位に立ちます。しかし、地方企業には「転勤がない」「地元で長く働ける」「地域のインフラを支える事業」といった、生活基盤の安定感をアピールできる強みがあります。特にUターン・Iターン人材や子育て世代にとって、住み慣れた地域で腰を据えられることは収入以上の価値を持ちます。

2. 地方の中小企業同士の比較では「働き続けやすさ」で差別化

同じ地域にある中小企業の求人票は、時給や月給が似通いがちです。そのため求職者が次に重視するのは「働き続けやすさ」です。
例えば「残業は月10時間以下」「持ち帰り仕事なし」「繁忙期以外は土日休み」など、生活と両立できる環境を数字や事例で示すことが重要です。同じ給与水準でも、勤務時間や休暇の取りやすさを具体的に伝えることで「ここなら続けられる」と思わせることができます。

3. 人間関係・社風を“見える化”する

給与条件で横並びになると、最後の決め手は「どんな人と働けるか」です。地方の中小企業は組織が小さい分、社風や人間関係の良さを打ち出しやすい特徴があります。
「新人には必ず教育担当がつく」「社長が現場にも顔を出す」「社員旅行や地域イベントに家族も参加できる」といった具体例は、求職者に安心感を与えます。中小企業同士の採用競争では、この“見える人間関係”が決定打になることも少なくありません。

4. 成長機会と役割の幅広さ

都市部大手と比較するとキャリアパスの形式は限られますが、中小企業には「若いうちから幅広い役割を任される」強みがあります。
「入社3年目でチームリーダー」「営業だけでなく企画や採用にも関わる」「資格取得費用を会社が負担」など、個々の成長機会を具体的に示すことで、求職者は「給与以上のやりがい」を感じやすくなります。

まとめ

最低賃金が上がる今、都市部大手との競争に加え、地域内の中小企業同士の採用競争も激しさを増しています。だからこそ「給与以外の価値」を言語化し、明確に伝えることが欠かせません。
地方中小企業には「地元での生活の安定感」「働き続けやすい環境」「人間関係の安心感」「成長機会の広さ」という、大手や同業他社には真似しにくい切り口や強みがあるはずです。これらを求人票やホームページで積極的に発信する企業こそ、人材確保と定着を実現できるのです。

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