人手不足を補うミドル・シニア活用術

福山研一

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深刻化する人手不足の中で、若手採用だけに頼らず「ミドル・シニア世代の活用」に光を当てる企業が増えています。特に中小企業や地方企業においては、経験豊富な人材をいかに活かすかが、経営を左右する重要なテーマになっています。

実際、ミドル・シニア世代の強みは現場に直結するスキルや判断力です。例えば、建設業ではベテラン技術者が安全管理や後進指導を担う事例があります。体力仕事は若手に任せつつ、長年の経験を活かした「段取りの最適化」や「現場の目配り」で大きな価値を発揮しています。また製造業では、品質管理や不具合対応にベテラン社員を配置することで、不良率の低下や若手教育の充実につながった例もあります。

さらに小売業では、接客経験豊富なシニアが顧客対応や新人教育を担い、顧客満足度の向上に貢献しているケースがあります。福祉・介護分野でも、身体介助よりも生活相談や新人スタッフの育成を担う形で活躍が広がっています。これらの職種では、シニアならではの「安心感」や「人間関係づくり」が強みとなります。

一方で「勤続年数」に目を向けると、意外な事実があります。若手社員は転職市場が活発なこともあり、数年で離職してしまうケースも少なくありません。そのため、勤続年数の安定度という点では、ミドル・シニアと大きな差がないのです。むしろ、地域や家庭に根付いた生活基盤を持つシニアの方が腰を据えて働く傾向も見られます。採用コストを考えれば、年齢層にこだわらず「長く働いてくれる人材」を見極めることが、経営上のメリットとなるでしょう。

もちろん、デジタルスキルへの不安や体力的な制約もありますが、短時間勤務制度の導入や役割分担の明確化によって解決可能です。たとえば、ITに明るい若手がシステム面を支え、シニアは顧客や現場での関係構築を担うなど、世代間の補完関係を築くことができます。

また、シニア社員に対して「あなたの経験が必要だ」というメッセージを丁寧に伝えることも欠かせません。定年後の人材は「まだ役立てるのか」と迷うこともありますが、具体的に期待する役割を提示することでモチベーションが高まり、長期的な定着にもつながります。

人手不足は今後も続くと予測されます。その中で、経験豊富な人材を「補助的な存在」として扱うのではなく、「だからこそ必要な存在」と位置づけることが大切です。現場監督、品質管理、顧客フォロー、教育担当――こうした職種での成功事例が示すように、ミドル・シニアの活用は企業の競争力を高める具体的な解決策となるのです。

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