社員の「キャリアアンカー」を知るという視点

福山研一

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昨今の人材定着や育成の課題において、「社員の価値観や働く動機が見えにくい」という声をよく耳にします。優秀な人材を確保し、長期的に活躍してもらうためには、目の前のスキルや業務実績だけでなく、「その人がどんな価値観を持ち、何に仕事のやりがいを感じているのか」を把握することが重要です。

その手がかりとして注目されているのが、「キャリアアンカー」という概念です。

キャリアアンカーとは、米国の組織心理学者エドガー・シャイン氏が提唱した理論で、個人がキャリアを選択する上で「これだけは譲れない」と感じる中核的な価値観や欲求のことを指します。人は仕事を通じてスキルや経験を積むうちに、自分にとって本当に大切なことが見えてきます。これがキャリアアンカーであり、たとえば「専門性を追求したい」「安定した環境で働きたい」「人の役に立つことにやりがいを感じる」など、方向性は人それぞれです。

|| キャリアアンカーの8分類

キャリアアンカーは主に以下の8つに分類されます。
■専門・職能別能力(専門性追求)
■全般管理能力(マネジメント志向)
■自律・独立(自由と裁量重視)
■保障・安定(安定志向)
■起業家的創造性(新しい価値の創造)
■奉仕・社会貢献(人や社会への貢献)
■純粋な挑戦(困難な目標への挑戦)
■ライフスタイル(仕事と私生活の両立)

|| キャリアアンカー把握のメリット

社員のキャリアアンカーを把握することで、企業は次のようなメリットを得られます。
■適材適所の配置が可能になる
たとえば「専門性」を重視する人に総合職的な異動を繰り返させると、早期離職につながる恐れがあります。逆に、その価値観に合ったポジションに配置することで、モチベーションと成果の最大化が期待できます。

■離職リスクを事前に察知できる
価値観とのギャップが続くと、本人は内面で違和感を覚え、突然の退職につながることも。キャリアアンカーを知っておくことで、早めのフォローや職務の見直しが可能になります。

■キャリア面談や育成の質が高まる
単なる評価面談ではなく、「どんなキャリアを目指しているか」「何を大切にして働いているか」という本質的な対話が生まれ、社員との信頼関係構築にも寄与します。

■多様性を尊重した組織文化が育つ
価値観は多様であってよいもの。それぞれのキャリアアンカーを理解し合うことで、互いを尊重する風土が醸成されます。


キャリアアンカーは、外から見ただけでは分かりづらいため、定期的な1on1やキャリア面談の場で、本人の価値観や志向性に丁寧に耳を傾けることが重要です。また、キャリアアンカー診断ツールなどを活用することで、より客観的な把握も可能です。

最近では、適性診断ツールも様々ありますが、キャリアコンサルティングの自己理解の観点から考えると、価値観、興味、能力の3つの診断ポイントがあり、キャリアアンカーは特にこの価値観にあたるものです。

企業にとって、人材は「戦力」であると同時に「人生を背負った個人」でもあります。一人ひとりのキャリアアンカーに寄り添う姿勢が、持続可能な組織づくりへの第一歩です。

私もキャリアコンサルタントの立場で、ご支援出来ることもあるかと思います。
何かお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。

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株式会社アステート

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