介護保険といっても、なんでも無料になるわけではありません。
富士市富士宮市にて在宅医療に携わっている薬剤師の栗原です。
日々患者様の自宅にお伺いしておりますと、お薬のことだけでなく生活一般の事柄についてお話をしたりすることがしばしばあります。
1)患者様とのコミュニケーションは大事
患者様やご家族様から大切な情報を共有するための土台づくりとしてとても大切な機会と覚えています。
患者様の中には、お薬の飲み方や食事の事柄、例えばアルコール摂取について、処方医に十分な伝達をされていない場合が少なくありません。
ある患者様の元をお伺いした際には、寝室に大量のお薬が仕舞われていたことがありました。薬剤師としては、もし飲んでいないお薬などがある場合にはシンプルに「飲んでいない」とか「飲み忘れることが結構ある」とか申し出ていただきたいのです。その服用状況を処方医にお伝えしてこそ、次回からの処方内容に患者様の状態が反映される事となるからです。
そういった大切な情報が、患者様とのコミュニケーションの中から得られることが結構あるので、私はお薬に限らず、患者様との会話を楽しませて頂いてます。
会話は何がきっかけに弾むか予測はもちろんできません。今日はこれまで、思い出深かった患者様とのやりとりをいくつか紹介したいと思います。
2)黒柿(くろがき)の柱に込められた想い
いつも通わせていただいている患者様の部屋の柱に違和感を覚え目が留まりました。
家の作りについて専門家でもないので、これはもしかしたら火事の跡か何かかな?と一瞬思って触れないでいたのですが、だんだんと気になる度合いが増えてきてしまってとうとう「これは何ですか?」とご家族に質問してしまいました。
するとどうやらそれは、昔、患者様の実家の庭にあった大きな柿の木を削り出して備えた柱なのだということがわかりました。
よくよく私の方も調べてみましたら、これは黒柿(くろがき)という、大変珍しく、一万本に一本の希少木なのでそうです。黒檀(こくたん)は他の種類の樹木には見られることがあるようですが、柿の木には珍しく、日本古来、珍重されてきたものだとのことでした。
患者様はその黒柿の柱のある和室で余生を穏やかに過ごされています。
3)チベットで手に入れた仏法用具
在宅で余生を過ごされる患者様は、いろいろな思い出の詰まった自宅で最期を迎えたいとの思いを持たれている方が少なくありません。
こちらの写真は、患者様が中国で事業をされていた頃に手に入れた骨董品です。チベットに近い場所で勧められるままに購入したものとのことでした。おもちゃのようにクルクルと回すと、おそらくですが、ありがたいお経を唱えたりするのと同様のご利益があるような、そういうものだと理解してます(そういう物があるという話は聞いたことがあります)。
患者様は今は地元に戻り、自分が生まれ育った生家で余生をできるだけ過ごしたいと、ご家族から離れてお住まいになってます。そういう余生もありだなと教えられてます。
多分ですが、私なんかがよく分からないでおもちゃのように扱って良いものとは違うんだろうなーと思いながらでしたが、貴重な経験でした。
様々な政治的な事情から中国の古物が日本に持ち込まれ、テレビ番組などでも思わぬお宝が出てくることがありますね。高度成長期の日本は、そういう意味で、アジア地区の大変貴重な文化財を収集する文化的な役割も担っていたんだなと思わされています。
4)植木鉢の植樹
その他、患者様から庭のことについて学ぶ機会もあります。
私は庭の草木をいじるのがとても苦手で、いつも困っています。草木のことを思って肥料をあげて、肥料のやりすぎか何かで腐らせてしまうことが結構あります。
とても見事に庭で植木鉢を育成されていたので、どうしたものか色々と教えてもらいましたところ、マグワンプKという固形肥料を教えていただきました。
半年に一回、これをパラパラと植木にあげる、んでそうです・・。そんなに簡単なんですかね・・。やっぱり知識は大切ですね・・。
5)山本勘助の生誕碑
また、富士市にある岩本山の麓に、実は戦国武将として知られる山本勘助の生誕の地があります。
たまたま通りかかったのでしばし生誕記念碑を見ていたら、なんと山本勘助の直系の子孫の方が色々なことを教えてくださいました(写真掲載の了解をいただき掲載してます)。
私の世代では、ゲームの『信長の野望』で知られたあの山本勘助、ということになります・・
私は広島出身なのでなかなかこちらの地理、歴史に疎いのですが、なんとか知ろうと努めている次第です。
6)八十八夜の茶葉
また先日は、「八十八夜に取れる新茶の茎」の茶葉をいただきました。
八十八夜って、なんとなく聞いたことはあるのですが、それが茶葉と関係しているとまでは理解しておりませんでした。でもそのくせ『茶摘』の歌は、なんとか誦(そらん)じる事が出来ました。・・なるほど、確かに茶摘の歌に「八十八夜」て出てきますね・・。
茶摘 文部省唱歌
1.夏も近づく八十八夜
野にも山にも若葉が茂る
あれに見えるは茶摘ぢやないか
あかねだすきに菅(すげ)の笠
7)絵まで頂いてしまった
絵をいただいたこともあります。しかも写真でみるとお分かりの通り、軽自動車の幅ぐらいある絵でした。
初回で玄関を伺うなり幾つかの人物絵になんとも言えない魅了を感じて、その旨をお伝えしましたら、なんと倉庫からこの風景が出てきたのです。細かい描写で、とても丁寧に仕上げられた仕事でした。
私は自分が絵が描けないので、絵を描くことに情熱を持っているというだけでその人を尊敬してしまうくらいです。